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55:二人の関係は

いろいろ言いたいことはあるのだが、ここでニコがゼルに全部言い返してしまったら、事情を知らない騎士二人がいる手前、不敬罪に問われかねない。どう転んでも面倒くさい奴と関わってしまったと、ニコはちょっとだけ己の自業自得を悔いた。

ゼルはというとすこぶるご機嫌のようである。そのニヤついた顔面に一発キメてやりたい、と物騒なことを思いつつ、何とかこの場をやり過ごすより他ない。


「あの、騎士団長……この者をご存知なのですか?」


ニコとゼルの間に漂う妙な空気を目のあたりにして、騎士の一人が恐る恐る口を開いて尋ねてきた。ゼルは満面の笑みで頷いて見せた。


「もちろん。彼は中央広場の近くにある四葉珈琲店の現店主だよ。俺はその店のお客さんなんだ」


「はぁ」


嬉々として告げるゼルに、騎士二人は気の抜けた返事を寄越した。突然の真相究明についていけてないのだろう。まさか王国騎士団長が中流階級居住区のカフェに通っているとは思うまい。とは言っても、ゼルが四葉珈琲店にやってきたのは最初の一回きりだが。


「親切にも、わざわざ自ら忘れ物を届けに来てくれたみたいなんだ。接客業従事者の鑑だね!だから君たちも、早く拘束を解いて貰えるかな?」


後半に進むに連れて、妙に有無を言わせない圧を察した騎士二人は、指輪をゼルに返却し、慌ててニコの手を離すと再び敬礼をした。


「仰せのままに!」


「うん、ご苦労さま。持ち場に戻ってくれていいよ」


「ハッ!」


騎士二人が踵を返して去っていった。

ニコとゼルが取り残される。しれっと騎士二人の後を追ってこの場所から離れるべきだった。ゼルと二人きりなんて、嫌な予感しかしない。


「さてと……会えて嬉しいよ、ニコ」


じりじりと距離を詰められて、ニコは後ずさった。


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