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9-8

 セレナは視線をひざに落とした。


「トキヤとクラリーチェが結婚したら、アタシはのけ者になっちゃうもん。クラリーチェが動揺していた理由、今やっとわかったわ」

「のけ者になんかならないだろ。結婚したって、俺たちが幼馴染であるのには変わらないじゃないか」

「変わらないわけないじゃない」


 セレナが顔を上げ、俺と目線を交わらせる。


「アタシ、トキヤ、クラリーチェ。三人はこれまで幼馴染っていう関係で平等だった。それがこれから二人だけが夫婦になってバランスを崩しちゃうのよ。たとえゲームのシステム上の結婚だったとしても――」

「俺たちは変わってしまう……?」

「そうよ」

「どんなふうに変わるんだ?」

「どう変わるかまではアタシにもわからない」


 セレナはかぶりを振り「でも」と続ける。


「これからは『幼馴染の三人』じゃなくなるわ。アタシとトキヤだけが、と、特別になるんだからっ」


 特別。

 その言葉はセレナにとっても照れくさいものだったのだろう。自分から言っておきながら、セレナは頬を染めてぷいと顔をそむけてしまった。俺も正面を再び向き、交わっていた目線は外れてしまった。


「アタシ、トキヤと結婚できてよかったわ。で、でも勘違いしないでよねっ。調子に乗ってカレシ、っていうかダンナ面しないでよねっ。はい、もう休憩終わりっ」


 まくしたてるような早口でセレナは言い、立ち上がった。


「まだ3分くらいしか休憩してないぞ」

「終わりったら終わりっ」


 セレナは俺に背を向けてしまった。

 短い休憩は終わり、俺とセレナは再びダンジョン攻略に乗り出した。

 噴水の広場には黒い鉄扉で閉ざされた道があり、どうやらこの先がダンジョンの奥らしかった。

 鉄扉をつかんで押したり引いたりしてみる。

 びくともしない。

 かんぬきらしきものもなく、カギも見当たらない。


「どうする? よじ登る?」


 セレナが力技を提案するも、鉄扉の上は槍のように尖った意匠をしており登れそうにない。というかそもそも、明らかになにかしら仕掛けのある扉を強行突破するのはクエスト的に間違っている気がする……。


 ――愛を誓いし二人よ。


「扉がしゃべった!?」


 鉄扉から声がして、セレナが鉄扉から手を放して後ずさる。


 ――そなたらの愛がまことであるのを証明せよ。


「証明ってなによ! き、きききききキスでもすればいいのかしら!?」

「落ち着けセレナ」


 状態異常攻撃を受けていないにもかかわらず、セレナは混乱状態に陥っていた。


 ――二人で扉を同時に開けよ。二人の愛がまことであれば扉は開かれよう。


 鉄扉には左右どちらにもノブがついている。

 これを俺とセレナでそれぞれで握って開ければいいわけか。

 おそらくこれはあっさり開いてくれるはず。愛なんてステータスはゲーム上に無いから、単なる結婚クエストを盛り上げるイベントの一つなのだろうと俺は楽観視していた。


「ぴ、ピンチよトキヤ! アタシたち、別にあ、愛とかそういうのを誓ってないし!? 単なるゲーム攻略でクエスト進めてるだけだからこの扉ぜったい開かないわよっ。1ミリだって動くはずないんだからっ。そうよね!?」


 混乱状態のセレナを落ち着かせるほうが難易度高そうだ。

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