9-6
「この数はさすがに相手しきれないわ……」
「一点突破してダンジョンの奥に逃げ込むのはどうだ?」
「わかったわ。トキヤ、アタシの後ろについてきなさいっ」
俺とセレナは正面に向かって走り出した。
「ツインスラッシュ!」
正面にいたローズクリーチャーをセレナが倒して道をつくる。そしてそのまま俺たちはダンジョンの奥へと走り抜けた。
ダンジョンの奥は生垣の迷路になっていた。
魔物の群れからは逃げられたものの、俺たちは分かれ道を選んで進んでは袋小路につきあたって引き返すのを繰り返していた。タブレットのマップはアイテムや魔物といったオブジェクトの大まかな位置しか表示されないため、迷路を抜ける役には立たなかった。
生垣の壁は分厚く背も高い。剣で斬って強行突破は難しい。よしんばそれができたとしても、想定された道順から外れてしまって余計に迷子になりかねない。つまるところ、地道に正解の分かれ道をさがして歩くしかないのだ。
「これ、ホントにカンで正解の道を見つけるしかないのかしら」
何度目かの袋小路につきあたったとき、セレナが言った。
「そうよ! これって結婚する二人の試練でしょ? ならきっとヒントがあるはずだわ」
「分かれ道になにか目印があるのかもしれないな」
袋小路から引き返した俺たちは分かれ道に戻ると、それぞれの道に正解を表す目印がないかさがした。
生垣にはところどころにバラの花が咲いている。
袋小路に続くほうの生垣には黄色のバラ。
おそらく正解であろろう道のほうには赤いバラ。
「これ、赤いバラが咲いている道が正解なんじゃないかしら」
セレナの言葉に従って赤いバラが咲いているほうの道を選んでいく。
分かれ道に三回ほどさしかかり、そのたびに赤いバラが咲いているほうの道を選んでみたが、セレナの予想どおり、いずれも正解の道だった。
「ふふっ。どう? アタシってば冴えてるでしょ」
「気付いてしまえばかんたんなヒントだけど、迷路にヒントがあるの自体に気付くなんてさすがだな」
「まぁね。クイズ番組とか毎日テレビで見てたし」
オンラインゲームのダンジョンに謎解きのギミックがあるなんて珍しい。ゲームに疎いセレナにはそういった先入観がなかったから見つけられたのだろう。
うーん、それにしても、レベル1相当のステータスで戦いの役に立たないうえに、ダンジョンのギミック攻略までもセレナ任せになってしまうとは立つ瀬がない……。
「トキヤ。もしかしてあんた今、自分がなんの役にも立ってないって落ち込んでたでしょ」
見透かされてしまった。
「そりゃあ落ち込むだろ。このダンジョンに入ってからセレナの後ろを歩くだけだったんだから」
「別にそれでいいじゃん。アタシの後ろについてきなさいよ」
自分にまかせろ、とセレナは胸を張る。
「トキヤだって『エンチャント』で何度もアタシを助けてくれたんだから。っていうか、結婚して夫婦になったらさ、そういう遠慮はナシでしょ。お互い助け合ってこそ夫婦なんだから」
それからセレナはいきなり顔を赤くしてかぶりを振る。
「あ、あくまでもゲームでの話だからねっ。夫婦ってのは! そこんとこ勘違いしないでよねっ」




