8-10
「スカウト?」
俺とセレナとクラリーチェが首を傾げていたそのときであった。
「ルンちゃーん。そこにいたのね」
女性プレイヤーがルンの名前を呼びながらこちらに駆け寄ってきたのは。
この人どこかで見たことがあるな……。
あっ、思い出した。
以前、ルンに『ハルベリア・デュエル』を挑んできた人だ。
名前は確か――
「アサギさん、でしたっけ」
「ええ、そうよ。あなたはトキヤくんだったわね」
アサギさんは腰のベルトに『ハルベリア・デュエル』のデッキケースを吊り下げていた。
「ルンちゃん。メインクエストはクリアできたのかしら」
「はい。トキヤどのとセレナどのとクラリーチェどののおかげでクリアできたでありますっ」
「それじゃあ、例の件、受けてくれるわよね?」
「はいっ。よろしくお願いしますでありますっ」
「ちょっ、ちょっと。『例の件』ってなによ」
話の流れがつかめない俺たちはアサギさんとルンの会話をただただ聞いているだけだったが、セレナがそこに割り込んできた。
するとルンはこう言ったのだった。
「実はジブン、アサギさんのギルドに勧誘されたのであります」
そしてアサギさんが説明を引き継ぐ。
「ウチのギルド、『ハルベリア・デュエル』の強いプレイヤーを集めてるの。ルンちゃんとっても強いから、この前の対戦のあとに勧誘したのよ。ウチのギルドに入らないか、って。そうしたらルンちゃん、今はあなたたちとパーティーを組んでクエストを攻略してるって言うから、それが終わるまで返事を待ってたのよ」
そういうことだったのか……。
タブレットを開いてアサギさんのギルドの詳細を見てみると、ギルドメンバーは総勢15人というそこそこの規模のギルドだった。ギルド紹介のところには 『カードゲーム【ハルベリア・デュエル】にハマってる人たちのギルドです。ギルドメンバー募集中!』と書かれてあった。
「ギルドにスカウトされるなんて、ルンちゃんすっごーい!」
「ルンちゃん、ギルマスの私よりずっと強いのよ。ウチのギルドに入れば間違いなくギルド最強のエースになれるわ」
「えへへ、であります」
アサギさんの話によると、『ハルベリア・デュエル』にハマっているプレイヤーは多く、ジブンもメインクエスト攻略そっちのけでカードの収集と対戦にのめり込んでいるとのこと。『ハルベリア・デュエル』のマニアたちはギルドを組んで、メンバー同士で対戦したりカードを交換したりしていて、プレイヤー主催でギルド対抗の対戦会も定期的に開かれているらしい。
「ふーん。アタシたちとは無縁の世界ね」
セレナが興味なさげに言った。
「でもルン、よかったわね。自分の才能を認めてくれる人と出会えて」
「はいっ、であります!」
ルンは満面の笑みでうなずいた。
出会いがあれば別れもある。
俺たちはまた幼馴染三人パーティーに戻ったのであった。
「ところで、トキヤどのたちは仲がよろしいのに――」
「うん?」
「結婚はしないのでありますか?」
【あとがき】
『小説家になろう』の機能『ブックマークに追加』および、画面下部の★で評価していただければうれしいです。
執筆活動の励みになります。




