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9-1

「結婚!?」


 俺とセレナとクラリーチェがほぼ同時にすっとんきょうな声を上げて、ルンに「やはり仲がよろしいでありますな」と言われてしまった。


「な、なんでいきなり結婚の話題になるのよ……」

「おかしいでありますか?」

「おかしいでしょ。アタシたちまだ高校生よ。っていうか、このゲームの世界に閉じ込められてる現状で結婚の話になるのが意味わかんないしっ。っていうかっていうか、仮にできてもトキヤとなんてゴメンよっ」


 ひどいなオイ……。

 セレナの剣幕に目をしばたたかせていたルンであったが、やがて合点がいったのか「あー、なるほどであります」と両手をポンと合わせた。


「みなさまは『結婚システム』をご存じないのでありますな」

「結婚システム?」

「ルンちゃん、なにそれ?」


 そういうことか。

 セレナとクラリーチェは初耳のようだったが、俺は『ハルベリア・オンライン』に結婚システムがあることは一応耳にしていた。ゲーム内で男女が結婚できるということくらいしか知らないが。


「なんと、この『ハルベリア・オンライン』では仲の良いプレイヤーは結婚ができるのでありますっ」

「そうなの!?」

「しかも、ただ結婚するだけではなく、教会で盛大な結婚式を行えるのであります。男性はタキシードを、女性はドレスを着られるのであります」

「わぁ、ステキ……」

「ちなみに、グローバルな社会に対応してか、同性同士でも結婚ができるのであります」


 結婚システムは単に二人のペアが伴侶になるだけではなく、ゲームプレイに有利な恩恵も得られる。具体的には伴侶のいる地点に即座に転移できたり、伴侶が得た経験値の一部を得ることができたり、夫婦専用の高報酬クエストを受けられるようになったり……など。

 ――と、ルンが説明してくれた。


「実は私、結婚してるのよ」


 アサギさんが照れくさげに左手薬指にはめられた指輪を見せてくれた。

 きらりと輝くプラチナのリング。

 それをクラリーチェがうらやましげに見つめている。至近距離まで近づいて。


「どういういきさつで結婚したんですか? わたし、興味ありますっ」

「いきさつ、っていっても、単に『ハルベリア・デュエル』で毎日対戦していくうちに仲良くなって……ってだけよ」


 照れ臭くなったのかアサギさんは「あはは」とほっぺたを指でかく。


「ゲーム内で知り合ったのね」

「共通の趣味がきっかけで結婚……。あこがれちゃうなぁ」


 祈るように両手を握って青空を仰ぐクラリーチェ。

 彼女はすっかり夢見る乙女になっていた。


「子供はつくれるの?」


 セレナが至極フツーにそんな疑問を口にして、俺たちをぎょっとさせた。

 セレナ、お前ってばホント……。


「こ、子供はつくれないわよ。ほら、ね……?」


 アサギさんはとても困ったようすで言葉を濁しながら言った。セレナは平然としながら「ふーん、そういうシステムは実装されてないのね」と納得していた。

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