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そして翌日、俺たちはメインクエストの攻略を再開した。
俺とセレナ、クラリーチェ、そしてルンの四人で『ラテリアの丘』を登る。
最初こそ俺たちはピクニック気分だったが、絶妙な角度の傾斜が音もなく疲労を蓄積させてきて、30分後には皆、口数が少なくなっていた。
「薬草、どこにあるのかしらね」
タブレット片手に周囲を見回すセレナ。
クエストで依頼されたアイテムはマップ上では黄色のアイコンで表示されるのだが、未だ発見していない。
「メタな話で悪いが、こういうクエストアイテムってたいていダンジョンの最後――今回の場合なら頂上にあるんだと思うぞ」
「あー、なるほど。RPGあるあるであります」
「そうなの? アタシはゲームとかやんないし、そういうお約束ってよくわかんないわ」
セレナは首をかしげていたが、ゲーマーのルンはしきりにうなずいていた。
「あとどのくらいで頂上かしら。丘っていうか山よねこれ」
額の汗をぬぐうセレナ。
「えいっ、ヒーリング」
うんざりした表情のセレナの顔に光のシャワーが降り注ぐ。
「もー、やめてよクラリーチェ」
「えへへー。やってみたかっただけ」
魔法でHPは回復できても疲労まではどうにもならないのである。
「みなさんは仲良しさんでありますな」
二人のじゃれあいを見たルンが言った。
「まー、ダテに幼稚園の頃から幼馴染やっていないからね」
「うらやましいであります」
「トキヤならあげちゃってもいいわよ」
「おいおい……」
「ジョーダンよっ」
セレナが俺にウィンクした。
クラリーチェが「そうだっ」と手を合わせる。
「ルンちゃんも幼馴染にしちゃおうよ。わたしたち四人で幼馴染っ」
「意味わかんないしっ」
「幼馴染とは、小さいころからの友だちという意味でありますよ」
「意味よりも、そうであることのほうが大事だよ」
なるほど。
クラリーチェらしい言い分だった。
「なら、恐縮ですが……いえ」
ルンが言葉の途中で首を横に振る。
「やはりジブンは幼馴染は辞退するであります」
「えっ、どうして?」
「遠慮することないわよ。減るもんじゃないし」
「トキヤどのとセレナどのとクラリーチェどの――三人だけで幼馴染であるからこそ、幼馴染は意味をなすのだとジブンは思うのであります」
セレナは「ふーん」とよくわからなそうに水筒を傾けて水を飲んでいた。
クラリーチェは「そっかぁ」と残念がっていた。
ルンはおそらく知っていたのだろう。第三者だからこそわかる、俺たちが知らない『幼馴染』の大事さを。
それから俺たちは険しい丘をどうにかこうにか登り、頂上へとたどり着いた。
丘の頂上から緑の原っぱを見下ろす。
心が洗われる。
風になびく草原を俺たちはしばし眺め、心と身体を癒していた。
「ここに薬草があるのよね」
俺たちはタブレットのマップに目をやる。
イベントアイテムを示す黄色のアイコンがマップの端に表示されている。
「あそこかぁ……。取れるのかなぁ」
「かなり危険な場所に生えているのであります」
薬草とおぼしき草は、山肌があらわになった崖の急斜面に生えていた。
足を滑らせれば崖下までまっさかさまの危険な勾配だ。




