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「あっ!」
セレナが声を上げる。
「そういえばルンの目的聞いてなかった! アタシたちはレベル15のメインクエストを進めてるところなの。ルンはどうしてここにいたの? 魔物討伐とかアイテム採集なら先に済ませてあげるけど」
「偶然でありますね。自分もレベル15のメインクエストを進めていたのであります」
ということは薬草を先に取りにいったというプレイヤーはルンのことだったのか。
ちょうどよかった。
俺たちがパーティーを組んだことでクエストも自動的に共有できた。
あとはこのまま『ラテリアの丘』へ行って薬草を取り、職人街で薬師に頼んで薬をつくってもらい、貧困層居住区の女の子に渡せば全員クエスト達成となる。
「自分は『ラテリアの丘』の近くまで進めましたので、恐縮ながら案内するであります」
「さっきのハンターウルフの群れはそこから連れてきちゃったんだね」
「よろしく頼むわね、ルン」
もっとも、この草原から小高い丘である『ラテリアの丘』はよく見えるので迷うことはないのだが、それを言ったところでルンの厚意を無下にするだけだ。俺も「案内よろしくな」とセレナに続けて言った。
「おまかせください、でありますっ」
ルンは意気揚々と先頭に立って俺たちを案内してくれた。
曲がりくねった道を俺とセレナ、クラリーチェ、ルンは歩いていく。途中で分かれ道にさしかかるとルンが「こっちであります」と指をさしてそちらへと進む。
空は晴天。
緑色の原っぱが視界いっぱいに広がっている。
のどかな風景で、ピクニック気分だった。
「セレナどのたちは野良パーティーでありますか?」
クエストホームや酒場でその場限りのパーティーを組むのを野良パーティーと呼んでいる。
「んーん。アタシたちはいつもパーティー組んでるの」
「わたしたち、幼馴染なんだよ」
「そうでありましたか。仲の良いパーティーに水を差してしまって申し訳ないであります」
「だからそんなの気にしなくていいって」
「ルンは野良パーティーを組んでゲームをプレイしてきたってさっき言ってたな。リアルの友人とかはいないのか?」
俺が体験したかぎり『ハルベリア・オンライン』は圧倒的に男性プレイヤーが多い。NPCは男女均等にいるため、普通にプレイしていてはそんなに違和感はないのだが、女性プレイヤーで、しかも基本ソロプレイをしているとなるとかなり珍しいタイプだろう。
「ジブン、現実世界でも結構ゲーマーでありまして、仮想世界に入れるゲームと聞いてこの『ハルベリア・オンライン』に一人で飛び込んできたのであります。うむむ、それがまさか、ログアウト不可になってしまうとは……。父上も母上もきっと心配しているであります」
「お父さん、お母さんか……」
「学校も1か月以上行ってないからヤバいわよね」
「俺たちの扱いって、現実世界だとどうなってるんだろうな」
『ハルベリア・オンライン』にログインした何万人もの人間が一日にして行方不明になるなんて、とんでもない大事件だろう。
なのに運営から俺たちに対してはなんの通知もなく、外の世界がどうなっているかなどの説明も俺たちには一切されていない。そしてゲームのプレイ停止なども特にされているようすも無く、俺たちは自由にこの世界を冒険できてしまっている。
「謎でありますねぇ……」
ゲームの中に閉じ込められてしまっては、知るすべはなかった。




