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街の職人街は、各種ショップや宿屋が立ち並ぶ目抜き通りに負けずプレイヤーたちの往来で活気づいていた。
職人街にはアイテムの加工を専門とする生産職のプレイヤーたちがいて、俺やセレナ、クラリーチェのような戦闘職が必要とするアイテムを加工してくれる。加工という手間がかかる分、どのアイテムもショップで売られているものよりもはるかに性能がいい。高難易度のダンジョンに挑むプレイヤーは生産職のプレイヤーの協力が必要不可欠なのだ。
バグによりログアウト不可になったこのVRMMO『ハルベリア・オンライン』。
ラスボスの撃破によってログアウト可能になるというウワサ。
プレイヤーの多くはログアウトを求め、ラスボス目指してゲームを進めている。
だが、最前線で戦わず、この職人街で後方支援をしているプレイヤーも少なからずいるのである。戦いに向いていないとさとった者、もとから生産職が好きであった者、いろんな理由で彼らは日々、アイテムをつくって他のプレイヤーに販売したり、加工を請け負ったりしている。
「さっそく『青色貝殻』をイヤリングにしてもらおうよっ」
クラリーチェは職人街に来てからそればっかり言っていた。
「ほら、トキヤくん、セレナちゃん。あの看板、アクセサリー加工のお店だよっ」
「ちょっと待ちなさいよクラリーチェ。せっかく加工してもらうなら腕のいい職人に頼んだほうがいいでしょ。加工って失敗することもあるのよ」
「じゃあ、セレナちゃん。腕のいい職人さんのところに連れてって」
急かされるセレナは困ったようす。
「うーん、自分で言っておきながら実はアタシ、武器や防具の加工は頼んだことがあるんだけど、ステータスに関係ないアクセサリーの加工は一度も頼んだことがないのよね」
「俺もだ」
三人とも、アクセサリー加工に関しては全く情報を持っていなかった。
「アクセサリー加工が得意な職人が誰なのか、とりあえず、このへんを歩いてるプレイヤーに尋ねてみましょ」
俺とセレナとクラリーチェは、通りすがったプレイヤーを適当につかまえて、アクセサリー加工で評判のいい職人がいないか尋ねて回った。
――それならマルガレーテの店かな。
――マルガレーテさんならばっちり加工してくれると思うよ。
――わたし、マルガレーテさんに指輪をつくってもらったの。
マルガレーテ。
多くのプレイヤーたちの口からその名前が出てきた。
「どうやらマルガレーテって人が評判いいみたいだな」
「じゃー、マルガレーテさんのお店にいこーっ」
タブレットの職人街マップを開き、先ほど教えてもらったマルガレーテさんの店の座標に目印をセットする。
そうして俺たちはタブレットのマップを見つつマルガレーテさんの店を目指した。
石畳の道を歩く。
クラリーチェは軽やかなスキップで俺たちの前を行く。あまりに浮かれっぷりに親友かつ幼馴染のセレナも苦笑していた。
マルガレーテさんの店は五分も歩けば到着した。
表通りに面した明るい場所にその店はあった。
さすが評判の店。立地も良い場所にある。
「じゃあ、ドア開けるよ。……ドキドキするね」
「クラリーチェだけよ。そんなはしゃいでるの」
「そっ、そうだったの!?」
先頭に立つクラリーチェが店のドアをゆっくりと開いた。
チリンチリン……。
ドアベルを鳴らしながら俺たちは店内に入った。
「はーい、いらっしゃーい」




