4-10
「幻獣よ、俺に力を貸してくれ!」
俺が叫ぶ。
すると、俺のかたわらにブロック型幻獣が転移してきた。
――……。
頭に響くノイズ。
頭の中がぐわんぐわんと揺れる……。
正直しんどいが、気合で耐える。
――……。
幻獣は「承知した」と言っているのだろう。
その証拠に、ブロック型幻獣の全身が発光している。
『エンチャント』はいつでもできる。
敵の布陣はギルドマスターが先頭で、その後ろにメンバーが適当に集まっている。
相手は完全に俺をナメている。
これなら『一撃』だ。
5、4、3……。
「幻獣! エンチャントだ!」
俺の言葉に呼応して、ブロック型幻獣は光の球体へと変化し、俺の槍に宿った。
幻獣が『エンチャント』された俺の槍が激しい光の渦をまとう。
「なっ、なんだあのスキルは!?」
ギルドマスターがうろたえだした。
だが、もう遅い!
2、1……0!
「ひっさああああああつっ!」
PvPが開始されたと同時に俺は槍を振りかぶり――
「『通常攻撃』いいいいいいいッ!」
『通常攻撃』を振り下ろした――攻撃力10010もの!
光の渦をまとった俺の槍が地面にぶつかる。
刹那、光の渦が前方に濁流となって放出される。
光の渦はうねる凶暴なヘビのごとくギルドマスターを呑み込み、そしてその余波で後ろにいたギルドメンバーをもまとめて吹き飛ばした。
すさまじい光の爆発。
激しく舞い上がる浜辺の砂。
それにまぎれて天高く吹っ飛んでいくギルドのメンバーたち。
空に放り投げられて地面に激突したギルドの連中は一人残らずHPバーが真っ赤になっていた。
「ぐほっ」
最後にギルドマスターが頭から浜辺に落っこちてきた。
俺は『通常攻撃』で総勢20名のギルドを全滅させたのであった。
相手のメンバー全員のHPが1(PvPではHPが0にならず1で留まる)になったため、PvPが終了する。
俺の勝利。
賭けに設定した相手ギルドの全財産が俺のストレージに移される。
「チ、チートだ……」
砂浜に埋まっていた頭をぼこっと出したギルドマスターが歯ぎしりしながら言った。
「お前、チートしてるな! 運営に通報してやる!」
「勝手にしろ。ま、そうなったら、お前たちギルドの占領行為もバレてお上の沙汰が下されるかもしれないけどな」
「ぐっ……」
狩場や採集場所の占領行為はマナー違反として立派な通報対象である。
こいつらの占領行為が今回がはじめてだとは考え難い。これまでも数にものを言わせて狩場や採集場所を占領してきたのだろう。この規模ならまとめて即座に垢BANもあり得る。スネにキズがあるのはあちらのほうなのだ。
「おぼえてろよー!」
ギルドマスターはメンバーもろとも『ワープクリスタル』で転移して逃げていった。
「やったね、トキヤくんっ」
クラリーチェが俺に抱きついてきた。
彼女のやわらかな肌が密着してくる。
そして漂ってくる心地よい香り。
「ちょっ、クラリーチェ!」
セレナがセレナの肩をつかんで俺から引きはがす。
俺の夢見心地は一瞬にして終わった。
「あんたってばそう無防備に抱きつかないの!」
「トキヤくんにだけだよ」
「それもダメ! ダメダメったらダメ!」
「えー、どうして?」
……なにはともあれ、俺たちの金策は一日で終了した。
『桃色貝殻』のクエストを反復で受けて得たお金と、いけ好かないギルドから巻き上げた全財産のおかげで当分はお金には困らないだろう。
そして後日、俺たちは『青色貝殻のイヤリング』制作のため、街の職人街へと足を運んだ。
【あとがき】
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