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俺は思わずそれを二度見してしまった。
『青色貝殻』はこのダンジョン限定で出現するといわれているレア採集アイテムだ。それもめったに採集できない類のものであり、レアの二文字ではその希少さを表現しきれていない、超が三つも四つもつくレア採集アイテムなのである。
それが今、クラリーチェの手のひらの上にある。
「これもクエストアイテムなの?」
「いや、これ自体は今回の『桃色貝殻』採集クエストの対象じゃない。けれどこれはプレイヤー間で高値で取引されているんだ」
「どれくらい?」
俺がその値段をおしえると、セレナもクラリーチェも目を丸くした。
「そっ、そんなにするの!? これ一個で!?」
「需要に対して供給が追い付いてないアイテムはだいたいそうなるんだ」
ただの希少なアイテムならアイテム図鑑を埋めたいコレクターが買い取るだけなので、苦労に見合わないそこそこの値段で止まり、ヘタをすれば買い取り手が見つからないことすらある。しかしこの『青色貝殻』は武器や衣装の色を変える染料の素材であるため、消費され続ける。だからこの『青色貝殻』は常に高額で取引されているのだ。
このアイテムで染色されたメタリックブルーの武具を持っていれば、他のプレイヤーにドヤ顔できるというわけだ。
「どうする? もう採集クエストはやめて街に戻るか?」
「そうねっ。さっそくフリーマーケットで『青色貝殻』を売っちゃうわよ! ふっふっふっ。アタシたちこれで大金持ちね」
「……」
「どうしたの? クラリーチェ」
興奮するセレナとは裏腹に、クラリーチェは黙ったまま手のひらの上の『青色貝殻』をじっと見つめたままだった。
それから、俺たちの顔色をうかがうような口調で言った。
「……このアイテム、売りたくないの」
「へ?」
「どっ、どういうこと!?」
俺とセレナは思いもよらぬ発言にあ然とした。
俺たちの反応を予想していたらしいクラリーチェは「ごめんね」と言いたげな苦笑いを浮かべていた。
「だって、この貝殻、透き通る海みたいに青くてきれいなんだもん」
そうだった。
クラリーチェはそういう女の子だった。
アイテムを効果より見た目で選ぶ女の子だったのだ。
「それにこれ、わたしたち幼馴染の三人で貝殻拾いをした思い出として取っておきたいの。ダメ……かな?」
上目づかいで俺を見つめてくる。
クラス――いや、学校一の美少女にそんな目でうったえられてNOをつきつけられる男子がいようか。
「そうね。それもまたゲームの楽しみかたよね」
俺の言葉をセレナが代弁してくれた。「困った幼馴染ね」と言いたげな口ぶりであったが。
そして俺はクラリーチェに提案した。
「そのアイテム、イヤリングに加工して装備できるんだけど、やってみるか?」
「えっ、ホント!? うんっ、イヤリングにしたいっ」
クラリーチェは飛び跳ねるくらいに喜んでくれた。
これで俺たちのやることは二つになった。
一つは、ありったけ拾った『桃色貝殻』をクエストホームに持ち込んで、クエスト報告をすること。
もう一つは生産職のプレイヤーに頼んで『青色貝殻』をイヤリングに加工してもらうこと。
……と思いきや、やるべきことがどうやらもう一つ増えたようだ。
「あいつら……!」




