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「あっ、トキヤくん見て」
クラリーチェが遠くを指さす。
小さな物体が浜辺を浮遊しながら移動している。
魔物かと思い武器を構える。
しかし、タブレットのマップを開いてみてそうではなかった。
浮遊する物体は緑色アイコンで示されていた――幻獣だ。
幻獣は多角形の無機質な形状をしており、目も口もついていない。一見しただけでは生物には見えない。それがふわふわ低空で浮きながら浜辺をさまよっている。
セレナが俺の脇腹をつつく。
「仲良くなっときなさいよ。いざというとき『エンチャント』が使えないとあんた足手まといなんだから」
「言葉が通じる手合いなのかあれは……」
「心と心で通じ合うんだよ、トキヤくん」
幻獣は海岸にある消波ブロックような見た目であった。
あれと心を通じ合えるのだろうか……。
俺はブロック型幻獣に近づく。
「幻獣。よかったら俺の力になってくれないか」
――……。
「……?」
なにか聞こえたような……。
――……。
「って、うっわああああっ」
頭の中にラジオの雑音みたいな、頭をかき乱すノイズが突如流れ込んできた。
頭がぐわんぐわん揺れる……。
耳の奥がキーンと鳴る。
今のがもしかしてブロック型幻獣の声なのか……?
完全に人間の言語ではない。
それなら試さなければならないことがある。
「幻獣。俺の言葉が理解できてるならジャンプしてみてくれ」
――……。
幻獣がぴょんと飛び跳ねる。
なるほど。意思疎通が一歩通行のタイプか。
俺が幻獣の言葉が理解できないとなると、交渉は難しい。『エンチャント』をしてくれる代償として相手の望むことをしてやろうにも、相手がなにを望んでいるのかわからない。
「……」
諦めようと思ったが俺は、念のため『例のアレ』を交渉材料に出してみることにした。
「干し肉食べるか?」
ストレージから出した干し肉をブロック型幻獣の前に差し出す。
するとブロック型幻獣は俺の手の上に乗って干し肉に覆いかぶさった。
ブロック型幻獣がその場で回転する。
ぐるぐるぐる……。
ちょっとくすぐったい。
ぐるぐるぐる……。
ぴたっ。
回転が止まる。
幻獣が俺の手から離れると、干し肉は跡形もなく消滅していた。
これがブロック型幻獣の食事なのだろうか……。
――……。
再びノイズが頭の中で響く。
それからブロック型幻獣は俺のそばから離れて遠くへ行ってしまった。
交渉成立。
……であってほしい。
頭の中でまだキーンと音がしていた。
「トキヤくーん」
「ちょっとこれ見てよー」
クラリーチェとセレナが俺のほうへ駆け寄ってきた。
「これ見てー」
クラリーチェが手を開く。
彼女の手のひらの上には青色の貝殻があった。
俺は驚きのあまり「なにっ!?」と声を上げてしまった。
「めずらしいでしょー」
「トキヤ、これも採集アイテムなの?」
「これは『青色貝殻』だ!」




