19-13
「ふっふーん。すごいでしょ?」
セレナがウィンクしながら胸を張った。
俺たちはフロストドラゴンを撃破したことにより『フロストドラゴンスレイヤー』の称号を手に入れた。セレナはさっそくその称号に付け替えていて自慢していた。
ちなみにミカさんは『ビヒモススレイヤー』という称号をつけている。ビヒモスという巨大な獣の魔物を倒して得た称号だという。ビヒモスのレベルは35で「さすがにソロで相手する魔物じゃなかったよ」とミカさんは苦労を語った。
「それにしても、アタシたちいつになったらレベルアップできるのかしら」
「ずっと長い間レベル15だもんねー」
「ウロボロスに負けたとき、ごっそり経験値を持ってかれたからな……」
次のレベルアップまでに必要な経験値はちょうど折り返し地点に来てところ。俺たちがレベル16になるのは当分先である。さすがMMORPG。レベルを1上げるだけでもとんでもなく苦労させられる。
「私も長い間レベル30のままだよ。ここまでくるとレベルアップに必要な経験値が尋常ではなくてね。高レベルのプレイヤーは皆、デスペナに怯えながら魔物と戦っているよ」
ミカさんの話によると、ヒーラーが回復を怠ったせいで全滅し、デスペナで大量の経験値を失って言い争いが起きて解散してしまうパーティーやギルドも珍しくないとのこと。いわゆる『爆発』だ。
「も、もしかしてわたし、すっごい責任があるの?」
クラリーチェはきょとんとしながら自分を指さす。
「そうだね、クラリーチェちゃん」
ネトゲではヒーラーはパーティーの要だ。モンスターの行動をしっかり把握してパーティーのHPを管理しないといけない、かなりのプレイングを要求される。そしてたいていのMMORPGではヒーラーの人口は少なく、いつもひっぱりだこ。とにかく苦労の多いクラスである。
「はわわわわ……」
クラリーチェの目がぐるぐる回っている……。
めまいを起こしてイスから落ちそうになったのを「ちょっとクラリーチェ!?」とセレナに支えられた。
「クラリーチェは立派にヒーラーやってるわよ」
「ううう……。失敗したらゴメンね……」
タブレットの通知音が鳴る。
俺たち四人は同時に自分のタブレットを取り出す。
――メール着信1件。
通知を鳴らしたのは俺のタブレットだった。
――街に帰ってきたんですよね。この後、会えますか?
道具屋のココからのメールだ。
「ココからのメール? 珍しいわね」
首を伸ばして俺のタブレットを覗き込んでくるセレナ。
俺は「いいぞ」と返信した。
「というわけで、俺はココの店に行ってくるよ」
「アタシたちも行くわ」
「……いや、俺一人にしてくれないか」
「へ? どうして?」
「い、いろいろあるんだ」
「『いろいろ』? 妙ね……」
セレナがジト目で俺を見ている……。
「幼馴染とはいえ、彼にもいろいろと事情があるのさ。察してあげたまえ」
ミカさんが助け舟を出してくれた。
「そう……。ならアタシとクラリーチェは先に宿屋に行くからね」
セレナはなおも怪しんでいるようだったが引き下がってくれた。
「おやすみなさーい。トキヤくん、ミカさん」
「おやすみ」
「ああ、おやすみ。いい夢を」
そういうわけでセレナ、クラリーチェと別行動となった俺はココの道具屋へ行った。




