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いくら格上相手でもレベルはたった5の差しかない。俺の『エンチャント』された槍の攻撃を受ければ9999のカンストダメージを与え、HP7000のフロストドラゴンは一撃で倒せるはず。
タブレットでフロストドラゴンのステータスをじっくりと調べる。
そしてそこに、俺たちの見落としたものがあった。
フロストドラゴンは『氷竜のウロコ』というパッシブスキルを持っていた。
効果は――HPが50%以上あるとき、被ダメージを激減する。
だからあれだけ堅かったのか!
このスキルの効果でセレナの剣技やドラゴニュートの弓矢を完全にシャットアウトし、俺のエンチャントされた槍の攻撃もほぼ半減したのだ。
「ト、トキヤ。もう一回エンチャントよ!」
フロストドラゴンがのそりと起き上がる。
グオオオオオオオオオオオッ!
そして両翼を広げ、激怒の咆哮を上げた。
まずい。今のでフロストドラゴンを本気にさせてしまった。
フロストドラゴンは両翼をはばたかせ、上空へと飛び立ってしまった。
俺たちの真上に位置を取ったヤツは、口から氷塊を吐き出してきた。
「ひゃあっ」
クラリーチェの目の前に大きな氷塊が落下する。
氷塊のブレスか。
これが頭に直撃すればひとたまりもない。
ボスンッ、ボスンッ。
次々と降り注ぐ氷塊。
フロストドラゴンは完全に俺たちを倒す気になっており、俺たち攻撃が届かない場所から遠距離攻撃を続けていた。
――ヤツを射落とす。
ドラゴニュートたちが弓を構えて矢を放つ。
真上に放たれた矢はフロストドラゴンの腹や翼の膜に突き刺さった。
ゴオオオオオオッ!
フロストドラゴンが叫び声を上げる。
先ほどの怒りの咆哮とは異なる叫びだ。
「フロストドラゴンが痛がってるわ!」
「えっと、パッシブスキルっていうのの効果がなくなったから、きっと矢が通じてるんだよっ」
そうか。HPが半分を切ったから『氷竜のウロコ』の効果がなくなって攻撃が通じるようになったのか。
タブレットでステータスを見ると、矢を受けるたびにフロストドラゴンのHPが減少している。
――フロストドラゴン、覚悟しろ。
ドラゴニュートたちは絶え間なく矢の雨を浴びせる。
フロストドラゴンは身体を傾かせ、地上に墜落した。
横倒しになったフロストドラゴン。
「クラリーチェ! 攻撃力アップの魔法お願い!」
「光の刃よ――『ブレイブエッジ』!」
セレナの指示を受けてクラリーチェが攻撃力増加の補助魔法をかける。
剣を青白く輝かせたセレナはダッシュでフロストドラゴンに接近する。
「くらいなさい――」
セレナは腰を深く落とし、剣を水平に構える。
「トライスラーッシュ!」
そして怒涛の三連撃をフロストドラゴンの顔に浴びせた。
青白い残像が残るほど素早い連続攻撃。
ウゴオオオオオオオオオオオッ!
フロストドラゴンが叫び声を上げる。
セレナの渾身の必殺技を受けたフロストドラゴンはHPが0になり、その巨躯は光の粒子となって消滅した。
今度こそフロストドラゴンを倒したのだ。




