19-6
俺とセレナ、クラリーチェ、そしてドラゴニュート三人の六人はスネまで積もった雪を踏みながら丘を登る。
吐き出される白い息。
やはり雪と登り坂の組み合わせは体力を消耗する。
服の内側が汗ばんできた。
セレナもクラリーチェもおしゃべりしていたのは最初だけで、今は無言で丘を登っている。ドラゴニュートたちも黙々と歩を進めている。ギッ、ギッ、と雪を靴で踏みつける音だけがした。
そのとき、遠くからおぞましい咆哮が駆け抜けてきた。
グオオオオオオオッ!
その方向は大地と大気を震わせ、木々に積もっていた雪を一斉に落とした。
「い、今のはフロストドラゴンの叫び声!?」
「すっごい声だったね……」
セレナとクラリーチェは目をまんまるにしていた。
――フロストドラゴンの寝床はそろそろだ。
俺たちは気持ちを引き締めて坂道を進んだ。
丘の頂上にたどり着く。
そこに青色のウロコの竜が寝そべっていた。
フロストドラゴン。こいつが。
名を上げようと立ち向かってきた冒険者の命をことごとく奪い、ドラゴニュートに供物を要求した恐ろしき怪物。
フロストドラゴンがのそりと立ち上がり、長い首をもたげて足元の俺たちをにらみつける。俺たちのことを命知らずの哀れな冒険者だとでも思っているのだろうか。
タブレットでステータスを確認する。
レベル20。HPは7000。
これなら俺のエンチャントで一撃で倒せる。
ただ、確実に仕留めるなら胴体や頭部を狙いたい。足を狙っても部位破壊でとどまってHPを削りきれない可能性がある。
「ドラゴニュート、エンチャントを――」
――待て。よけろ!
フロストドラゴンが首をひっこめて息を吸い込む。
ブレス攻撃の前動作か!
俺たちは左右に散ってフロストドラゴンの正面から逃げる。
フロストドラゴンが頭を地面につけ、口から凍てつくブレスを吐き出し、直線状にあるものすべてを凍り付かせた。俺たちは間一髪でそれを回避できた。
側面に回り込んだセレナが足元に接近して剣技を浴びせる。
「ツインスラーッシュ!」
フロストドラゴンの脚を剣で斬ったが、HPはほとんど減らせなかった。
三人のドラゴニュートたちが弓を引き絞って矢を放つ。大きく山なりに飛んでいった矢はフロストドラゴンの背中に当たったが、これも強靭なウロコに弾かれてダメージを与えられなかった。
さすがは凍てつく丘の主。
生半可な攻撃は通じない。
勇気と無謀を誤った数多くの者たちを葬ってきただけはある。彼らは皆、ウロコに傷ひとつ付けられず絶望しているうちに命を奪われてしまったのだろうか。
フロストドラゴンが翼を勢いよく開く。
その風圧で側面にいたセレナとドラゴニュートたちが吹き飛ばされた。
「だいじょうぶか! セレナ!」
雪に埋もれたセレナの手を取り、起こしてやる。
「いてて……。なんとか平気よ。でもアイツにぜんぜん攻撃が通じない……」
起き上がったドラゴニュートたちはなおも矢を放っているが、フロストドラゴンの頭上に表示されているHPバーは少しも動いていなかった。
やはり俺のエンチャントで仕留めるしかない。
慢心しているのだろうか。フロストドラゴンは積極的に攻撃しようとはせず、悠々とその場にたたずんでいる。そしてもてあそぶように時折翼で風を吹かせ、ドラゴニュートたちを吹き飛ばすのであった。
エンチャントで倒すなら、ヤツが油断している今しかない。
「ドラゴニュート。今度こそエンチャントだ!」




