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2-6

「見つけたか!」

「『ワープクリスタル』買うの忘れてた!」


 俺とクラリーチェは肩透かしをくらった。

 ちなみに『ワープクリスタル』とは、即座に街へと帰還することのできるアイテムで、ダンジョン攻略には必須である。

 俺は常に複数のワープクリスタルを所持するように心がけていたから、その一つをセレナに渡した。


「もー、セレナちゃんたらおっちょこちょいなんだから」

「ダークレオ討伐のことで頭がいっぱいだったのよ」


 そのときだった。視界の端に小さな影がちらついたのは。


「トキヤ! なんか今横切ったわよ!」


 セレナも気付いたらしかった。

 幻獣か。

 それとも魔物か。

 浮遊する小さな影だったからダークレオとは考えにくい。

 再び木立の間から小さな影が現れる。

 それは精霊だった。

 俺たちはタブレットを起動してマップ画面を開く。

 マップの中心には青色のアイコンが三つ――これは俺たち三人を表すアイコンだ。

 そしてそこから少し離れた場所には緑色のアイコンが左右に往復している。


「幻獣よっ」

「やたねトキヤくんっ」


 緑色のアイコンは幻獣を表しているのだ。

 精霊は魔物ではなく幻獣だった。

 俺は精霊型の幻獣を怖がらせないよう、ゆっくりと近づく。昨日、力を貸してくれたオオカミ型の幻獣は友好的で自分から近づいてきてくれたが、幻獣の中には不用意に近づくと逃げてしまうものもいる。ここで失敗しないよう、俺は慎重に歩を進めた。

 精霊型幻獣がこちらに気付いた。

 幻獣はその場で浮遊したまま動かない。

 俺は少しずつ近づく。

 そして会話できる距離まで接近すると、俺は幻獣に交渉をもちかけた。


「幻獣。俺に力を貸してくれないか」



 ――いーよ。


 よし!


 ――そのかわり、お菓子ちょーだいっ。


「トキヤ。幻獣はなんて言ってるの?」

「えっと、『お菓子をくれ』って」

「また食べ物? あんたホントに幻獣の声聞こえてるの?」


 セレナが訝しげな目で俺を見た。


「幻獣さーん。私のキャンディあげますよー」


 クラリーチェが手のひらの乗せたキャンディを幻獣に差し出した。

 精霊型幻獣はクラリーチェのほうに近寄ってきて、じーっと手のひらを見つめる。それから素早い動きでキャンディを奪い取り、包み紙をほどいて中身のオレンジ味のキャンディを口に含んだ。幻獣の口は頬袋をぱんぱんに膨らませたハムスターみたいになった。


「交渉成立ね。幻獣はなんて言ってる?」


 ――もごごごご、もごごご。


「『もごごごご、もごごご』」

「いい加減ぶっとばすわよ」


 だが、幸運にも――あるいは不運か――俺はセレナにぶっ飛ばされずに済んだ。

 タブレットがアラームを鳴らした。

 タブレットのマップを覗くと、俺たち水色アイコンの周囲に無数の赤いアイコンが出現していた。


「赤いアイコン――魔物だ!」

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