2-5
漆黒の森でまず最初にやることは討伐目標のダークレオを見つけること――ではない。
まずは幻獣を見つけることが最優先だ。
なにせ俺の切り札である最強スキル『エンチャント』は幻獣の協力なしには発動できない。俺は幻獣をこのダンジョンで見つけだして、そして仲良くなって『エンチャント』してもらわねばならないのだ。
情報を交換しあう酒場で、ダークレオの情報といっしょに漆黒の森に住む幻獣についての情報も聞いて回ってみたが、幻獣についての情報は得られなかった。それも仕方ない。ドラゴンの住む火山ダンジョンの先にある漆黒の森に踏み入るプレイヤーはほとんどいないからだ。よしんば情報を持っているプレイヤーがいたとしても、それはやり込み勢の高レベルプレイヤーで、法外な情報料をふんだくられるだろう。
「幻獣さん、見つからないね、トキヤくん」
「どこのダンジョンにも幻獣は必ずいるから、この漆黒の森だけいないなんてことはないはずなんだけどな……」
「まったく、面倒なスキルをおぼえちゃったわね、あんた」
「でも、俺の『エンチャント』が無いと間違いなくダークレオは倒せないぞ」
「わかってるわよ」
それは自慢ではなく事実である。
そもそもレベル15程度ではダークレオどころかその前のドラゴンを倒せるかすら厳しいのだ。レベル30以上の高レベルプレイヤーでもドラゴンなどのボスはスルーして次のダンジョンに挑むくらいだ。
ダンジョン攻略は基本、適正レベルでは雑魚敵を狩ったり採集をしたりするだけで、その時点ではボスには挑まない。雑魚敵から得られる経験値がレベル補正がかかって得られなくなったらボスをスルーして次のダンジョンへ行く。そして余裕で倒せるレベルになって、はじめてそのダンジョンのボスに挑む。それがこの『ハルベリア・オンライン』の基本的な攻略方法として広まっているのだ。
セレナにとっては『つまらないプレイ』なのだろう。
もっとも、それに関しては俺も同意である。
……まともにステータスが上がらない俺は、雑魚敵の狩りすらできず、採集ばかりする現状であるが。
「トキヤ、しくじっちゃダメだからね」
「わかってる。ただ、ダークレオの足止めでセレナにもがんばってもらわなくちゃならないからな」
「それもわかってるわよ。この最強フェンサーのセレナさまを信じなさい」
「最強とはまた頼もしいな……」
「わ、私も回復係がんばるからねっ」
「ああ。――っていっても、俺はたぶん一撃で倒されるだろうからな……。セレナの補助をよろしく頼むぞ、クラリーチェ」
「うんっ」
クラリーチェは健気だ。現実世界でも彼女は誰にでも優しく、保健委員としての役目を立派に努めている。
なお、セレナは学級委員長である。
その役目を全うできているかといえば、言うまでもない。学級委員長というか、トラブルメーカーだ。
「先へ進もう」
ぬかるんだ泥の地面。
落ち葉を踏みしめながら俺たちは森の深い場所へと少しずつ歩いていく。
「あっ!」
不意にセレナが声を上げた。




