特別編【バレンタイン】
これは全く本編に関係ありません。
麗奈と和也のバレンタインでの一幕です
〜人里〜
今日はみんな待ちに待ったバレンタイン。幻想郷にもそんな風習があったとは驚いたが、みんな特別な行事にはあやかりたいらしい。
人里はバレンタインに湧いている。和菓子屋までもが洋風のチョコレートを売っている。
そんな里を様子を見て一人。悪態をついている者がいた。
「こんな日に見張りだなんてついてないよな.....」
今日の仕事内容を聞きに人里の本部に行ってみても、魔璃さんしか本部におらず他の人はみんな出払ってしまったらしい。
全く仕事をなんだと思ってるんだ。みんな浮かれやがって.....。
本部にいる魔璃さんを見習って欲しい。でもどうせあの人もキノコさん(魔璃さんの夫)にチョコをあげるんだろうな。それにしてもキノコさんはどうやってあんなに綺麗な人と結婚出来たんだろう?謎だ...。
いや、今はそんな事よりも、どうこのやるせない気持ちを晴らすかが問題だ。
ただここで見張ってるだけでは何にも解決にならない。ますますイライラが募るばかりだ。
「まぁ考える次いでに小傘ちゃんの店で休憩するか.....」
小傘ちゃんの店は今俺が見張りをしている門の近くにある。だからいつもここの担当になった時にはこっそり抜け出してよく遊びに行っている。
「小傘ちゃん!また来たよ!.....って麗奈?何でここに?」
そこには小傘ちゃんと何やら話をしている俺の同居人、博麗麗奈がいた。小傘ちゃんと麗奈は話し込んでいてこっちに全く気づいていなかった。
少し申し訳ないけど会話の盗み聞きさせてもらおう。小傘ちゃんの所に麗奈がわざわざ出向くなんて.....。
それなりの理由があるんだろう。俺は二人が話している近くの席に座って聞き耳を立てた。
「これ.......かず.......くれ.....」
中々周りの声に負けて聞こえないな。もう少し近づいてみるか。
「ありが.......これで和也を.......やれるわ」
おい。今なんかとてつもない事聞いた気がするんだけど.....。やる?何を?俺を。小傘ちゃんは麗奈に凶器でも渡そうとしてるのかな?
これで和也を殺してくれ.....と。何それ怖い!え?小傘ちゃんそんなに俺の事憎んでたの!?それに麗奈も麗奈だよ。最近は俺と仲良くしてくれてると思ってたのに.....。
いや待て。俺の聞き間違いかもしれない。もう一度だけ聞いてみよう。
「和也.....チョコ.......する」
バレンタインだけに血ョコレートってか?全然上手くねぇーよ!やばいこれは本気だ。俺は麗奈殺されてチョコレートにされて里で売られるんだ。
こうしてはいられない早く逃げなきゃ。
.....いやちょっと待てよ?
これはチャンスでは?流石の麗奈でも人里の人が沢山いる場所では出来ないはず。ならば今から接触していれば急な不意打ちには対処出来るはず。
そうと決まれば早速麗奈を確保しなければ。とにかく平然を装って近づかないと.....。
俺は二人が話している所にこっそりと近づく。
「よぉ!麗奈何してんだ?」
「ッ!?アンタ!何でこんなところにいるのよ!」
麗奈は俺に話しかけられた途端、咄嗟に何かを隠したな。それが今回使われる凶器か。
「それで何してるんだ?」
「え〜と.....それは.....」
麗奈は明らかに動揺している。やはり俺がここに来るのは想定外だったらしい。そして、麗奈が動揺しているのを悟ったのか小傘ちゃんが.....。
「二人とも少し外を歩いてきたら?」
「それはいいかもな」
「なッ!小傘貴女ねぇ!」
麗奈は小傘を連れて店の奥に入ってしまう。何か計画に不都合なことでもあったんだろうか?
そんな俺をよそに長い間、二人はこそこそと何かをしている。そして、相談し終わったのか麗奈達が奥から出てきた。
「それじゃあ行きましょうか.....」
「あ、あぁ」
麗奈と人里でこんなのんびり過ごすのは久しぶりかもしれない。前に二人で来た時は妖怪の襲撃に遭って、ゆっくりとはいかなかったからな。
「それでどこに行きたい?」
麗奈が唐突に聞いてきた。俺にはそこまで行きたい所はないんだけど.....。でも麗奈の予定どうりに事が進むのはまずい。
「それじゃあ、寺子屋にでも行くか?」
「何で寺子屋なの?」
「なんとなくだよ。なんとなく行きたいんだ」
「そ、そう?」
麗奈は少し戸惑っていたがついてきてくれた。俺が何で寺子屋に行きたいかというと.....。
「授業!?何で私がそんな事をしなきゃいけないのよ!」
「いいじゃないか。慧音さんも快く快諾してくれたし」
「それに授業って何すればいいのよ?私に教えられる事なんて無いわよ?」
「授業の科目なんだけど.....」
俺は麗奈を寺子屋の横にある道場に連れていく。道場では体術や剣術の授業が主に行われる。だから、つまり麗奈の授業は.....。
「ずばり体育だ!」
「あんた本気で言ってんの?この私、博麗の巫女に対して子供相手に刀を振るえと?」
「刀じゃない。木刀だ。それなら別にいいだろ?」
「私はいいんだけど。アンタ達はいいの?私.....博麗の巫女よ」
寺子屋に出入りする生徒はこの里の子供たち。つまり麗奈の恩恵を受けている子供達だ。麗奈の事は大人達が話していれば嫌でも耳に入ってくるだろう。
だけど、それに関しては一切心配していない。
一人の女の子の生徒が麗奈に近寄ってくる。その手には木刀が二本握られている。
「お姉ちゃんが私達の事守ってくれてるのは知ってるから。全然怖くないよ?だから心配しないで?」
そう言って麗奈に木刀を渡す。それを麗奈は受け取る。すると、生徒の表情がキラキラと笑顔になる。
それを見た他の生徒が一斉に麗奈に駆け寄ってくる。麗奈はその中の中心でオドオドと困った表情をしている。
「ちょっと!?みんな分かったから離れて?ねぇなんとかしなさいよ!!」
そんな麗奈の姿を見て、俺も大笑いする。そして、麗奈が本気で俺に対して怒ってきたのでみんなを引き離す。
「じゃあ今日は俺じゃなくてこの可愛いお姉ちゃんが相手をしてくれるので気合いを入れてやりましょう!」
「か、可愛いって.....。何言ってんのよ!」
「え?冗談のつもりで言ったんだけど?」
「.......へぇー。冗談ね。そうなんだ。へぇー」
明らかに麗奈の機嫌が悪くなっている。俺なんかしたかな?
すると、何故か突然男子の生徒が立ち上がった。
「お姉ちゃん達って付き合ってるの?」
「「え?」」
「だってお母さんが言ってた。喧嘩するほど仲がいいって」
何を言っているんだろう?麗奈と俺が仲がいいだって?毎日本気で口喧嘩しているような仲だぞ。
その言葉に麗奈も怒っているだろうと俺は麗奈に顔を向けた。
「仲がいい.....。それだけじゃない.....」
「麗奈どうした?何ブツブツ言ってんだ?」
「別に何でもないわよ!ほらみんなさっさと授業始めるわよ」
やっぱり怒っていたか。まぁあんな勘違いされたら麗奈も怒るだろうな。
授業は何の問題なく終わった。生徒達も麗奈に対して本気で木刀を振っていたし、麗奈は麗奈で手加減に苦しんだろう。
授業が終わり、外に出てみると真っ赤な夕日が里を照らしていた。もうすっかり時間が経った。
麗奈と一緒に神社に帰ろうかなと思っていたら、何故か小傘ちゃんが走ってきた。なんだろうこの示し合わせたようなタイミングは。
「麗奈さんに和也さん。あっち道を行ったところに新しく温泉が出来たんですよ?行ってみてはいかがですか?」
「う〜ん、温泉か。入ってみたい気もするけど.....麗奈は?」
「別にいいんじゃない?別に神社で入るのと変わりはないんだし」
「じゃあ行ってみるか。小傘ちゃんも一緒に.....ってもういなくなってるし」
「とりあえず行きましょう?」
俺達は小傘ちゃんに勧められた温泉がある場所に向かった。そして、そこには確かに温泉があったのだが.....。
「なんかおかしくないか?」
「何がおかしいのよ?別に普通じゃない?」
「いや、俺が前ここを通った時にこんな建物あったかなって」
「細かいことは気にしないの。さぁ入りましょ?」
俺は建物に違和感を感じつつも麗奈に連れられて入る。男女と分けられた暖簾を潜り、俺は麗奈と別れて服を脱ぐ。
それよりも他のお客がいないことに不自然さがある。でもまぁこんな事もあるかな?俺は特に気にせずに入った。
お風呂は物凄く広く、しかも露天風呂だった。夜だったらもっと風情が出て素晴らしかっただろうなと少し後悔する。でもこれはこれであるかなと思って湯に浸かる。
「はぁー!やっぱり疲れた後の風呂はいいな。心が癒されるよ」
(それにしてもこの風呂は大きいな。外から見たらそこまで大きくは見えなかったんだけどな。まるで二つの部屋が繋がってるみたいだ.....。.....あれ?おかしいな?あそこに麗奈らしき人がいるんだけど.....)
そう思った俺はこっそりと近づいてみる。
.....やっぱり麗奈だった。
ここのお風呂は大きいのではなくて、ただ単に男子浴場と女子浴場がくっついているから大きく見えるだけなのか。つまり混浴と変わりない。
まずい。麗奈に見つかったら殺されるぞ!
俺はそっと上がろうと入ってきたドアを目指す。
「和也。分かってるわよ。怒らないから来なさい」
〜麗奈side〜
ここが混浴だって事は元から知っていた。事前に小傘から聞かされていたから。まぁだから慌てずにいられたんだけどね。
これが不意打ちだったら、アイツを殴り飛ばしてた。
私の呼びかけに和也は素直に答えて、私の隣に背を向けて座った。私は勿論タオルを巻いている。どうせこの露天風呂は貸切なんだから気を遣う必要が無い。
「あんた何で背を向けてるの?」
「それは.....仕方ないだろ」
「別に見てもいいのよ?タオルも巻いてるし」
「そういう訳にはいかないだろ?」
見てもいいのよ、なんて言ってる私の方が顔から火が吹きそうなほど恥ずかしいけど。なんだか知らないけど自然と言葉に出てしまった。.......死にたい。
「それより麗奈。俺に何か言いたいことはないか?」
「いきなりどうしたの?」
「そういえば、小傘ちゃんの店で会った時に何かしていたと思ったんだけど.....」
「え〜と、それは.....」
ここで言ってしまってもいいのか?和也もなんか怪しんでるようだし。
「小傘ちゃんにお団子の作り方を聞いていたのよ。ほ、ほら!あのお団子飛びっきりおいしいでしょ?だから自分でも作ってみたいなぁ〜、なんて」
(あーあ、結局嘘つくのよね私は。肝心な時に勇気が出ない)
「あ!そうなんだ。俺はてっきり俺への殺人計画を立ててるのかと思ったよ」
こいつの思考回路どうなってんの?
まぁそんな事は置いといてそろそろのぼせてきたし、上がろうかしら。
「じゃあ私は先に神社に帰ってるから」
「分かったよ。じゃあ俺はもう少しだけいるよ」
そして、私は脱衣場にある自分の服の仲を確認する。物がある事に安心して博麗神社に帰った。
それから少しすると和也も帰ってきて、軽めの夕食を済まして私も和也も暇になる。そうなると大体は二人とも自室に籠るんだけど。
「ムズムズして気持ち悪い!早く何とかしてアイツに渡さないと!」
折角この私が手作りしたってのに渡さないなんて勿体無いわ。それに手伝ってくれた小傘ちゃんの苦労が水の泡になっちゃう。
私はこっそり和也の部屋に近づいて、音を立てないように襖を少しだけ開けて、中の様子を見る。
「何よ、もう寝てんじゃない」
「...........」
〜翌朝〜
和也はいつも通り、襖から差し込む陽の光で目が覚める。
「あ〜あ、結局誰からもチョコ貰えなかったな.....。クヨクヨしてても仕方ない。その内いい事.....ってこれなんだ?」
和也の枕元には正方形の包みが置かれている。クリスマスプレゼントじゃあるまいし、何なのだろう。そう和也が疑問に思い、その封を開ける。
「こ、これは!」
それは少し溶けてしまってはいるがチョコレートだった。
和也はあまりの嬉しさに廊下を走り回って、麗奈のいる居間に飛び込んできた。
「何よ。朝っぱらから」
「ほら!チョコだよ、チョコ!今朝俺の枕元にあったんだよ!」
「へ、へぇ〜.....。それは良かったわね」
そして、和也はさっきまでハイテンションはどこへやら。突然冷静になって麗奈を見つめた。
「どうしたのよ、いきなり?」
「.......ありがとう麗奈」
「え、え〜と?何のことかわからないわ〜」
「麗奈って可愛いな!」
「はっ!?いきなり何言ってのよ!か、可愛いってなによ.....。私は何にもしてない!」
「ハイハイ、いつものツンデレね」
「ば、バカにするな〜!」
バレンタインっていい日だな。
麗奈の可愛さがいつもより格段に上がってますねwww




