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東方剣録伝 〜幻想郷最強剣士の物語〜   作者: 黒井黒
第二章 小さな異変と恋心
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十九話 大図書館


〜紅魔館〜


みんなはいつかの回想を覚えているだろうか。覚えていて欲しい。

俺はフランとレミリアに遊ばれている。肉体的な意味で...。


「お兄様、もっと早く動かないと死んじゃうよ!」


「これが精一杯だっての!」


フランは普通にしていたら可愛い女の子なのだが、いざ戦闘になるとどうもエキサイトするらしい。

俺は一方的にフランの弾幕を避け続けている。それも当たったら本当にシャレにならんやつを間一髪の所で避け続ける。

それだけならまぁ避けるだけでいい。だが、フランは『フォーオブアカインド』という分身技を使って四人になっている。一人が殺人弾幕を無差別にばら撒き、他の3人が『レーヴァテイン』で俺に斬りかかってくる。


「.....よく考えたら超無理ゲーなんだけど」


俺が妹に殺されかけてるってのに姉様は何してんだ。俺は余裕が無いがチラッとレミリアの方を見た。

優雅にお茶してんじゃねぇよちくしょう! なんでこんな弾幕地帯で呑気にお茶飲めるんだよ。


「お姉様! 出来れば助けて欲しんだけど...」


「人に助けを求める前に自分で打開策を見つけなさい」


「できないから言ってんだよ〜!お願いだから助けて!」


「しょうがな...「お姉様手出さないでね♡」はーい」


「姉様ちょろい!?うぉっと!?」


危ないかった……。あと数センチで死ぬところだった。フランは惜しいと舌打ちするが、俺にとってはその舌打ちが聴けるだけいい。もう少しで聴けなくなるところだった。

ここに来て、仕事で鍛えておいて改めて良かったと思う。鍛えてなかったらすぐ死んでるわ。


ーーー避ける、避ける、避ける!

避け続けて何分たっただろう。もうそろそろ限界に近い、いやもう限界。


そう思っていた時、女神の声が聞こえた。


「そろそろ結界が壊れるから辞めてちょうだい」


フランが攻撃を開始する寸前に紫の少女が横槍を入れる。それにフランは物足りなそうな顔をしながらも、分身も弾幕も消して、空中から降りてきた。

紫髪の女性……確かパチュリーってフランが言っていた気がする。パチュリーが自身の持っていた本を棚に戻し、新しい本を持ってまた部屋に帰っていく。


「なぁフラン」


なに?とこっちに顔を向けるフラン。普通のフランは常識があって可愛いのになと俺は思ってしまうが今はどうでもいい。


「あの人ってなんなんだ?」


「う〜ん...それはお姉様に聞いた方が良いんじゃない?元々パチュリーはお姉様が連れてきたし...」


フランがレミリアに聞けというので周りを確認する。レミリアはティーカップを持ちながらこちらに歩いてくる。


「ーーパチュリー・ノーレッジ。七つの魔法を操る魔女にしてこのヴワル魔法図書館の司書。そして私の親友よ」


「魔女ってことはパチュリーは怖かったりするのか?」


「そうね。出会った時は突然魔法を撃ちまくってきて困ったわ」


「...えぇ〜」


「でも、今はそんなことないわよ。今は人を殺すより本を読むことの方が楽しいみたい」


「いや、それだと前まで人を殺すのを楽しんでいたみたいなんだけど...」


そう言うとレミリアは黙ってしまった。ダメだ、これ以上は聞かないことにしよう。聞いてしまったらダメな気がする。


だがこれでパチュリー・ノーレッジは魔女だということが分かった。


魔女というのは知識としてこの数少ない記憶に残っている。


ーーあらゆる魔法の知識を持ち、魔法使いとは違うまた別次元の存在。


この図書館は多くの魔導書を揃えた魔法図書館らしい。勿論、普通に童話や小説などもあるのだがそれでもこんなにも魔導書が揃う図書館は魔女としては大喜びだろう。


とりあえず、話をしてみたいな。


「じゃあ俺、パチュリーと話してくるから」


ーーえ? とレミリアの顔に疑問の表情が出る。


「何かパチェに話したいことがあるの?」


「アイツに聞きたいことがあるんだ」


「私じゃダメなの?」


俺は頷いた。レミリアは諦めたのかフランの手を引いて何も言わずに図書館を出ていった。


俺はパチュリーが入っていった部屋の扉の前に立っている。パチュリーは普段この部屋に篭っている為図書館以外で会うことはほとんど無い。だから、相談しようともどうやって話に入っていいかわからない。

俺が悩んでいると、扉が大きな音を立てて勝手に開いた。俺は驚きながらも必然的に部屋の中を見る。恐らく扉を開いた張本人であるパチュリーは椅子に座って本を読んでいる。


「ずっと扉の前に立っていられても迷惑よ。話したいことがあるなら早くしなさい」


そう言って彼女は本をパタンと閉じ、椅子をこちらの方に向け座り直す。


「それで?なにか聞きたいことある?」


パチュリーは面倒くさそうな目で俺を見てくる。だが、一応話は聞いてくれるみたいだ。俺はパチュリーに甘えることにした。


「実は俺は記憶喪失なんだ」


「そうなの。悪いけど私は医者じゃなく魔女よ。頼む相手を間違えてるわ」


話は終わりと背を向けようとする。でも、俺はこんなことでは引き下がらない。


「魔女なら記憶喪失ぐらい治せるんじゃないのか?」


「管轄外よ」


「またまた〜」


「しつこいわよ?」


パチュリーは興味が失せたように本を開いて、和也を邪魔者のようにあしらい続ける。


「もしかして、出来ないからそんなこと言ってんじゃないのか?魔女が聞いて呆れるな〜」


今まで無表情だったパチュリーの顔が少し動いて、感情が顕になった。重心が後方に移動しかけていた体がまたこちらの方に戻ってきた。


「人間が魔女に向かっていい度胸ね」


上手く挑発に引っかかった。あんまりこういうやり方は好きになれないが背に腹は変えられない。話を聞いてもらえるなら何でもいい。


パチュリーは少し感情的になりながらも話し始めた。


「いい?まず大前提に記憶喪失は魔法の専門外、魔法で自分が知らない失った記憶を取り戻すことなんてできない。ーーそして、二つ目。貴方は自然の記憶喪失ではなく、人工的且つ衝撃的な何かで失っている可能性が高い。この二つの理由から私は記憶喪失を治せない」


パチュリーが説明口調で記憶喪失を治せない理由を長々と話した。

だが俺はその説明を聞き、納得できる事とできないことがある。


「.....話は分かった。一つ目の理由についてはなんとなくだけど理解出来た。だけど、二つ目の理由に関しては全く心当たりがない」


彼女は呆れた顔で少しため息混じりに、俺の顔を目掛けて本を投げてきて言った。


「自分が記憶喪失になった経緯を知ってるなら誰も苦労しないわ」


それもそうだ。記憶喪失になった原因を知っているなら何にも苦労しないのだ。


ーーだが俺はそれを知らない。


知らないも言うより知ってはいけないという感覚に近いかもしれない。最近極たまに夢を見ることがある。それも物凄く現実味がある夢を...…。


パチュリーが投げてきた本。タイトルは.....『バカな魔女と高貴な吸血鬼』


「なんなんだ?これ...…」


童話集ではなく、物語として完結している類の本だ。厚さはそれほどでもないがパチュリーが進めてくるとしたらあまりにその容姿に見合わない。


「それは子供向けの童話書。今の貴方に足りないものはそれよ。貸してあげるから読み終わったら今度返しに来なさい」


俺はその本を素直に受け取るがここで話を終わらせるわけにはいかない。パチュリーの本を男子巫女装束の懐にしまい、パチュリーに頼む。


「俺に魔法を教えてくれないか?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いきなり何を言い出すのかと思えば魔法を教えてくれってどういうこと?」


パチュリーが困惑顔で尋ねてくる。


「俺も魔法とか使えたりするんだろ?なら教えてくれよ」


パチュリーは一度黙ってしまう。そうなるのも仕方ない。見ず知らずの記憶喪失の得体の知れない男に突然魔法を教えてくれって言われるんだから。


パチュリーは悩んだ末に手を開いて、真っ直ぐに俺の方に腕を伸ばした。


「手の前に額を近づけなさい」


俺は言われた通りに額をパチュリーが伸ばしている手の前に固定しキープする。そうすると、パチュリーの掌から淡いピンク色の光が発生する。

いきなりの事に驚いてパチュリーを見るが、目を閉じて集中している彼女を見て黙って待つことにした。


そして、すぐにその作業は終わった。


目をそっと開けてパチュリーを見る。だがパチュリーは厳しい顔をして何かを考えていた。


数分顎に手を当てて考えていたパチュリーは徐ろに立ちあがって和也の目の前に立ち、服を捲って来た。


「な、何を!?」


「.....やっぱりそうなのね」


謎が解けて嬉しそうなパチュリーを椅子にまた座った。


「...結論から言うと貴方に魔法適正はない。簡単な結界や弾幕ぐらいなら撃つことが出来るけど...」


「そんな〜!」


「話は最後まで聞きなさい」


パチュリーは俺の服を指さして、捲りなさいと言ってるように感じた。だけど、俺はあんまり人に見せるものでは無い思っている為か躊躇する。それを見たパチュリーは大きくため息をついて俺の服を捲り始める。


「おい!?何をして……!?」


服を捲ると、和也の胸から鳩尾にかけて大きなどす黒い傷跡が色濃く残っている。


俺がこの傷に気づいたのは初めて風呂に入った時だ。その時の衝撃に自分の体ながらも腰を抜かした。


それもそうだ。


自分の体に大きな空いたことがあるという証明なのだから。そして、それがましてや普通の傷とは違ったら隠したくもなる。


でも、パチュリーはその傷を見ても一切驚かずに言った。


「…………やっぱりこの傷、誰に付けられたか分からないけど凄い事になってる」


「……なんで傷のこと知ってるんだ?」


「魔術を扱うものが魔術を認識出来ないでどうするのよ?しかもこんな強力な呪い……分からない方がおかしいわよ」


「もしかして、会った時からずっと?」


「えぇ、こうやって見れる機会を窺っていたわ」


パチュリーは棚から四本の糸を取り出した。


「貴方でも分かりやすいようにこれで説明してあげる」


糸を一本手に持ってそれを結んで見せる。


「いい?呪いが一つの場合こんな風に糸はいとも容易く解けて元に戻ってしまう」


そう言ってパチュリーは一本の糸を簡単に解く。そして、解いた糸も含め合計四本の紐を同時に結び始める。

結び終わり、パチュリーはその糸を一本の時とは違って魔法で宙に浮かべ説明する。


「だけど呪いが幾つも重なると.....魔法でもなかなか解けなくなる」


彼女は魔法で一本一本の糸を巧みに操っているが糸は簡単には解けそうにない。


「つまりこういうことか?俺の呪いは一つだけじゃなくて複数の呪いが組み合わさっているから解除のしようがないと...」


「まさにその通りよ」


俺は内心焦っていた。


この呪いの事を麗奈聞かされた時から妙な違和感を覚えるようになった。それがなんなのかは俺もよく分かっていないのだがムズムズと頭の中でなにか引っかかる。


(.....何か嫌な予感がする)



「ただし.....」


パチュリーが声を掛けてきて俺は思考を一時停止させて話を聞く。


「呪いの中でも例外もあるわ」


そう言うと彼女は机に水を垂らしながら指で何かを描き始める。

そして、書き終わったのか手を止めて服の中のポケットから何故か石を取り出した。その石をさっき描いた所の真ん中に置いた。


「...術式解放」


彼女が小さく呟いた。するとどうだろうさっきまで水で描かれていた物がはっきり浮かび上がってくる。


「これは...」


浮かび上がってきたのは魔法陣だった。石を中心に円形状に広がっていく。

そして、淡い光と共に石の形がどんどんと変わっていく。どうやらこの石を媒介に何かを作っているらしい。魔術に疎い俺には具体的に何をやっているのかは分からないがこれだけは分かる。


(...この人やっぱり魔女だ)


錬金術.......この知識は俺の中に少しだけ入っていたらしい。錬金術とは非金属から貴金属を生み出すという謎が多い魔術。錬金術を使えば人間を不老不死にも出来るとか出来ないとか。


そして、パチュリーは魔術の仕上げに入った。あの変哲もなかったただの石が段々と大剣に変わっていくのが見える。


「さて、もう少しで完成よ」


パチュリーは魔導書を開き、何かを唱える。すると、眩い光を放って剣が完成する。

彼女はか弱い腕で大剣を持ち上げようとするが、当然彼女の力では剣は持ち上がらない。


「.........この剣は石から金属を作り出す魔法で作った剣。だけど当然だけど耐久力は全くないわ。一回攻撃したら壊れてしまう」


剣を持ち上げられなかったのを誤魔化しているパチュリーは突然に剣の説明をしてくる。


「この剣と呪いは何が関係あるんだ?」


「この剣を作った理由はこうゆうことよ」


パチュリーはそこらにいたネズミを掴みあげて机の上に置く。


「魔術的な呪いは魔術者にしか解けないけど.....」


彼女は大剣に手をかざす。すると、大剣が薄黒い色に変化した。


「優秀な魔術者はこんな色はつけないけど貴方のために付けとくわ。この色を見た通りこれは呪い。魔術ではなく剣自体に仕掛けている呪いなの」


「魔術的な呪いと武具に仕込まれた呪いは何が違うんだ?」


「決定的に違うのは解除方法。魔術的な方は魔術師が解除するけど武具に仕込まれたのは.....」


パチュリーは机に捕えられているネズミを大剣の刃に押し付けて少し傷をつける。すると、ネズミは目に見えるように衰弱していた。


「こうするのよッ!」


パチュリーは大剣の腹を思い切り殴る。さっきも言ったがパチュリーはか弱い。耐久力が全く無いと言っていた剣はビクともしない。


「...........やって」


「...........分かった」


俺もパチュリーと同じ方法で剣を殴る。そして、いとも簡単に剣は粉々になった。


「.....ありがと」


「あぁ...大丈夫」


パチュリーは恥ずかしそうに俯いている。あんな弁舌を振るっていたのに決めるところで決めれなかったから恥ずかしんだろう。


「ま、まぁ!この通りネズミは呪いが解かれるってことよ!」


あ、また誤魔化した。俺はツッコミたいこともありつつ気持ちを押し殺して話を続ける。


「つまり俺のかけられた呪いは武器の呪いで、その武器を壊せば呪いが解けるってことか?」


「そういうこと、察しが良くて助かるわ。.....だけど重要な事があるわ」


「重要な事?」


「そう。貴方にかけられた呪いは五つ。『霊力半減』『妖力半減』『神力封印』『不老』『記憶障害』の五つ。一つの武器に呪いは一つだけ。つまり呪いを全部解くには呪いの原因となる五つの武器を見つけなければいけないという訳」


ーーーーー俺に呪いをかけた五つの武器


俺はそれを探し出さないとこの呪いは解けない。そして、五つの呪いの効果の真相。何故俺にこんな呪いをかけてたのか。それは絶対にあるはずだ。


俺が黙りこくって考えているとため息を吐きながら...。


「しょうがない、私が魔法の扱い方を教えてあげましょう。大きな魔法は使えないけど弾幕と防御結界ぐらいなら習得できるでしょう。それに少し貴方の体に興味があるし」


「体に興味がある!?」


「そういう意味じゃないわよ!それで、貴方は私の指導を受ける気ある?」


「もちろんだ!」


俺が返事をするとパチュリーは魔導書を構えた。



「じゃあ早速今からね。いくわよ!」





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