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Smile again ~また逢えるなら、その笑顔をもう一度~  作者: たいちょー
第六針 七夕のタイムリミット
46/164

1.

二千×八年現在 少し前、中田と久々に電話を通じての会話にて


≪…っていうかよ、つい話の流れでお前らの話聞いてたけど、俺はあの時の話を聞きたかっただけなんだが≫

 受話器越しで、中田が眠たそうに欠伸をした。

「ああ、悪いな。ついどうでもいい話までしちまった」

 あの日の出来事までの話をするつもりが、ついつい彼女との思い出話で盛り上がってしまった。気が付くと、時計は既に夜中の十一時を過ぎている。二時間も無駄話をしていたようだ。

≪っていうか、まさか七夕の日に告白されてたなんて思ってもいなかったぜ。その返事は返したのか?≫

 中田が問うた。

「…ああ。返したぜ」

≪なんて?オーケーしたのか?≫

「ん…」

 正直に言うか一瞬迷ったものの、どうせこの後話すことだ。ここはそのまま彼に話そう。

「…このナイフが、その返事だ、ってな」

≪…は?な、なに言ってんだ?≫

 驚愕した様子で、中田が言った。

「そのままだ。あいつが、誰かに切られたって噂は知ってるだろ?それ、俺だから」

 あっさりと俺が答えると、受話器からは何も聞こえなくなってしまった。通信が切れた訳じゃない。ただ、彼が喋っていないだけだ。

≪あの噂…本当だって言うのか?≫

「ああ。紛れもない事実だよ。犯人が言うんだからそうだろ」

≪お前…!自分で何言ってるのか分かってんのか!?人を切っただと?それも、自分を好きでいてくれた奴を?信じてくれていた奴をだ?バカ言ってんじゃねぇぞ!≫

 ギリッと歯ぎしりらしい音が聞こえた。どうやら、彼の堪忍袋の緒が切れたようだ。それもそうだ。昔親友だった奴が、親しい友を切ったと言っている。当然のことだと思う。

「落ち着け。近所迷惑だ」

≪落ち着いていられるか!?っていうかテメェ!今更になってホントの事言いやがって!昔の事はもう過ぎたことだ、とかまさか言うまいな!?≫

「ホントの事を聞かずに避けてたのはどっちだ?俺は…俺は、ずっと誰かに相談したかった。でも、一番の親友だったお前が逃げちまっただろ?だから、あんなことがあっても俺を許してくれた、宇佐美と佐口だけが味方だったんだ」

≪ぐっ…。それは…≫

「和樹。改めて聞く。…今更だけど、本当のこと。聞いてくれるか?」

 部屋に沈黙が走った。手汗で受話器が滑らないよう、ギュッとそれを握りしめ、彼の返事を待った。

≪…ああ、悪かった。分かった、話してくれ≫

「因みに、今からこの話をすると一時間コースになるけどいいか?」

≪お前…今この雰囲気でそれ言うか?≫

「悪いね、それが今の俺なんでね」

≪ふん。分かったから、さっさと話せよ≫

「へいへい。えっと、じゃあ話は七月九日からだな…」

 再び俺は、彼へあの日の真実を話し始めた。

 俺と彼女しか知らない、本当の事実を。

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