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Smile again ~また逢えるなら、その笑顔をもう一度~  作者: たいちょー
第六針 七夕のタイムリミット
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Memory.9

 次の日。入学式も終わり、まだまだ不安が残るなか、中学校の教室に着いた。

 まだまだ見慣れない教室やクラスメイトに戸惑いながらも、裕人は自分の席へ座った。

 ―さて、どうしようかな。

 周りは知らない人だらけ。完全なアウェーの場に、どうしていいか分からない。

 誰かに話しかける勇気もないし、かと言ってこのまま何もしなければ、一人ぼっちになってしまうかもしれない。

 なかなか勇気を決められずに、ボーっと教室を見渡していた。

「いよっ!おはよっ!」

「うわぁ!」

 突然、背中を叩かれる。聞き覚えのない声に、思わず退き振り向いた。

 寝癖なのか、セットしているのか。中学生にしては極めて目立つ黒毛のツンツン頭で、キリッとした目つきが特徴的な男の子が一人、そこには立っていた。

「えっと…誰?」

 思わず問うた。

「ん、宇佐美うさみ悠介ゆうすけ。お前、なんだか一人でボーっとしてて、友達いなさそうだったから声かけてみた」

 そう言うと、彼はにひひと笑った。

「友達いないって…それなりに友達はいるけど、このクラスには友達が一人しかいなかったから、どうしようかなって思ってたところ」

「ふーん、そうなのか。まぁいいや。お前、名前は?」

「え、真田裕人」

「へぇ、聞いたことない苗字だな。よろしくな、裕人」

「あ、うん。よろしく」

 それだけ言うと彼は、じゃあな!と言って他の人に声をかけにいってしまった。どうやら、一人でいる人に片っ端から声をかけているらしい。

 果たして、いい人なのか。はたまたお調子者の変わり者なのか。初めて見るタイプの彼に、裕人は驚きを隠せなかった。

「ねぇねぇ」

「うわぁ!」

 はたまた、今度は後ろ頭をツンツンと突かれて驚いた。

 今度は何事かと振り向くと、そこには一人、女の子が後ろの席に座っていた。

「えっと…何?」

 すかさず裕人は彼女に問う。

「さっきの子、友達?」

「へ?い、いや、さっき初めて喋ったけど」

「ふーん、そう」

 すると彼女は、口元を釣り上げて笑った。化粧でもしているのだろうか?香水のような香りが漂い、大人の女性のような印象の彼女は、悪戯っぽく笑うとなんだか艶めかしい。

「…君、カッコいいね」

「…・・はい?」

 突然の聞きなれない単語にドキッとする。

「私、ちょっと好きになっちゃったかも」

「え、いや、ちょっと。いきなり何を…」

 対応に困っている裕人など目もくれず、机に体を乗り出して、ズイっと顔を近づけた。

「君、彼女とかいたりする?」

「か、かの!?そ、そんなのいるわけないよ!」

「あら、意外。てっきりもう席が空いてないのかと思っちゃった」

 顔が近い。少しでも動けば、唇が彼女にタッチしてしまいそうだ。彼女の吐息が、耳元で聞こえる。

「なら、私なんかどう?私も今、席に誰もいなくて退屈なの」

「ちょ、ちょっと待ってよ!いきなりそんな話されても!」

 もはや机を前に引いて、体ごと退く。さすがにこれだけ離れると、彼女も諦めたように机に頬杖をついて苦笑いをした。

「もう、そんなに焦らなくてもいいのに。ま、いいわ。私、前田来実まえだくるみ。これからよろしくね」

 そう言うと、彼女は席を立ちあがり、教室を出て行ってしまった。

 ―何だったんだ、一体。

 その後ろ姿を呆然と見つめる裕人は、カッコいいの言葉が微塵たりとも当てはまらない姿であった。

 しばらく教室で呆然としていると、心奈がやってきた。

「おはようーヒロ」

「おはよ」

 幸いなことに、彼女は裕人の隣の席だった。左隣にカバンを置くと、こちらを向きながら椅子に座った。

「どう?友達できそう?」

 心奈が聞いた。

「うーん。まだ分かんないなぁ。何人かに話しかけられたけど、色んな人ばっかりで、仲良くなれるかが心配だなぁ」

「そっかぁ。私も頑張って、新しい友達作らなきゃ」

「お互い頑張ろうね」

「うん!」

 二人は、お互いに微笑み合った。


 放課後

「先に和樹君と待ってるね」

「うん、すぐ行くから待ってて」

 裕人が先に教室を出ていく。ガヤガヤと賑わう教室の中、心奈は荷物の整理をしていた。

「明月心奈さん、よね?」

 ふと、誰かに話しかけられた。振り向くとそこには、一人の女子が立っていた。心奈よりも少し目線が上で、香水のような香りがした。

「え?あ、うん。そうだけど」

「あなた、真田君のお友達よね?私も今朝、彼と友達になったの。だから、あなたとも仲良くできたらなと思って」

「え、そうなんだ。うん!私も、友達できるか凄い不安だったんだぁ」

 安堵の表情を見せる心奈を見て、彼女は微笑んだ。

「前田来実よ。仲良くしてね」

 彼女が、艶めかしく笑った。

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