答え
第7話です。
今回で一つの区切りとなります。
「……なんでお前が、そんなに強いんだよ……」
ガルドの声は、震えていた。
悔しさと、戸惑いと、そしてわずかな恐怖。
その全てが混ざっている。
「さあな」
レイは興味なさそうに答える。
「ただ、前と同じじゃないってだけだ」
「同じじゃない……?」
ガルドが顔を歪める。
「ふざけんな……! お前はずっと、役立たずだっただろうが!」
叫ぶように言い放つ。
それは、自分に言い聞かせるようでもあった。
「そうだな」
レイはあっさりと頷く。
「少なくとも、お前たちはそう思ってた」
「思ってた、じゃねぇ!」
ガルドは剣を握る手に力を込める。
「実際にそうだったんだよ!」
「……どうだろうな」
レイは一歩、近づく。
ガルドが思わず後ずさる。
「なにが……言いたい」
「簡単な話だ」
レイは静かに言った。
「お前たちは、見えてなかっただけだ」
「……は?」
「俺のスキルも、価値も」
その言葉に、ガルドの表情が固まる。
「……スキル?」
「コピー」
短く告げる。
「相手の力を取り込み、自分のものにする」
「な……」
ガルドの顔から血の気が引く。
「じゃあ……今の強さは……」
「今までお前たちと戦ってきた中で、蓄積されたものだ」
淡々とした説明。
だが、その意味は重い。
「……嘘だろ」
膝が震える。
「そんなスキル……聞いたことねぇ……」
「だろうな」
レイは視線を逸らす。
「俺も、最近までちゃんと理解してなかった」
だからこそ――
気づけなかった。
「……俺たちは……」
ガルドの声がかすれる。
「そんな奴を……追い出したのか……」
答えは、目の前にある。
「そういうことだ」
レイはあっさりと言った。
「……っ!」
ガルドは歯を食いしばる。
何も言い返せない。
ただ一つ、はっきりしている。
自分たちは――
取り返しのつかない選択をした。
「……レイ」
ミリアが静かに声をかける。
「行きましょう」
「ああ」
レイは頷く。
もうここに用はない。
「ま、待て……!」
ガルドが思わず声を上げる。
だが――
「なんだ」
振り返ることなく、レイが言う。
「……戻ってこい」
絞り出すような声。
「お前がいれば……俺たちは……」
その言葉は、最後まで続かなかった。
「断る」
即答だった。
「……っ」
「もう関係ないだろ」
それだけ言うと、レイは歩き出す。
ミリアもその後を追う。
「……くそ……」
ガルドはその場に崩れ落ちた。
手の中の剣が、力なく地面に落ちる。
「なんでだよ……」
後悔しても、もう遅い。
失ったものは、戻らない。
それが現実だった。
「……よかったんですか?」
森を抜けながら、ミリアが尋ねる。
「何がだ」
「戻らなくて」
少しだけ、不安そうな声。
「問題ない」
レイは迷いなく答える。
「もう終わった話だ」
それが、本心だった。
過去には戻らない。
これから先を進むだけだ。
「……そう、ですね」
ミリアは小さく頷く。
「これから、どうするんですか?」
「さあな」
レイは少しだけ空を見上げる。
「とりあえず――」
そして、前を向いた。
「自由にやるさ」
その言葉に、ミリアは少しだけ笑う。
「じゃあ、私も一緒にいいですか?」
「好きにしろ」
ぶっきらぼうな返事。
だが――
「……はい!」
ミリアの声は、どこか嬉しそうだった。
二人は並んで歩き出す。
新しい道へ。
もう、過去に縛られることはない。
これは――
“本来の力”を取り戻した男の、
新しい物語の始まりである。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ひとまず、この物語はここで一区切りとなります。
またどこかで、彼らのような物語が続くかもしれません。
その時は、また読んでもらえたら嬉しいです。




