五十九話 子供三人で
パーティーを追放された少年が、僕とパーティーを組むって言い出した。
はっきり言って迷惑だ。断ろう。
「すみませんが、僕にはパーティーメンバーがいるのでお断りします」
「だから、加護もない雑魚じゃなく、俺が面倒を見てやるって言ってんだ」
「ご加護の有無は関係ありません」
「雑魚同士馴れ合っても、意味ないぜ。素直に従えよ」
しつこいなあ。押し付けがましいし、恩着せがましい。
僕と少年の言い合いは、しばらく続いた。面倒を見てやると主張する少年に、断る僕。
なんで僕にこだわるんだか。
さっきの会話を聞いてると、彼はパーティーに寄生して分け前をもらってたみたいだ。ご加護のない僕じゃ寄生できないし、戦力にもならないと分かるだろうに。
格下相手に、でかい顔をして威張りたいのかな。
「ですから……」
僕が、何度目になるか分からない拒絶の言葉を口にしようとした時。
少年は僕から視線を外し、別の方向を見てた。
少年の視線の先には、一人の女の子がいる。見た感じ、僕と同年代の子だ。
ギルドの職員と話してるんだけど、困った顔をしてる。
さては、あの子に目をつけたな。男よりも女の子の方がいいんだろう。
僕の予想は正しかったみたいで、少年は女の子に近付く。
放っておけないし、僕も行ってみよう。
「君、どうしたんだい? 困りごとでも?」
少年は、僕に話しかけた時とは全然違う、優しい声を出した。
女の子は事情を説明してくれる。
彼女は孤児らしい。皇都の孤児院で暮らしてて、お金を稼ぎたいと考えた。
でも、まだ十歳でこれといった特技もない。ご加護も授かってない。
仕事がないわけじゃないけど、稼げる金額なんてたかが知れてる。
そこでハンターになろうとして、ギルドの職員に断られた。
まあ、なれるわけないよね。戦う力もなさそうだし、無駄に命を落とすだけだ。
女の子をハンターにしなかった判断は正しい。
「そんなことか。じゃあ、俺が組んであげるよ。俺は正式なハンターだからね」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
女の子は顔をほころばせて、素直に感謝してる。
形だけなら人助けだけど、これはちょっと……
「いいんですか? ハンターでもない子供を、勝手にパーティーに加えて」
嫌な予感しかしないし、職員の人に聞いてみた。
止めてくれないか期待したのに、答えは「規則では禁止されていません」だった。
確かに、規則では禁止されてない。
コロアドさんたちもハンターになれなかったから、他のハンターに頼み込んでパーティーに入れてもらったんだ。
下積み期間を経て、力を身に着け、正式なハンターになる。これは珍しくない。
つまり、少年が女の子を助けようとしてるのも問題ないってことになる。
とはいえ、この二人だけってのも心配だ。
僕が気にすることじゃないかもしれない。二人とも初対面だし、どうなろうと知ったこっちゃないってね。
「……僕もパーティーに入れてもらえませんか?」
無視もできたけど、僕はそう言っていた。見捨てるのは後味が悪い。
少年はどうでもいいよ。女の子がかわいそうだ。
「ふうん……さっきまで嫌がってたのに、どういうつもりだ?」
「気が変わりました」
「だがなあ、どうすっかなあ」
性格悪いな。薄ら笑いを浮かべて、嫌味な顔になってる。
「どうすれば入れてもらえますか?」
「頼み方ってものがあるだろうが」
「お願いします。僕をパーティーに入れてください」
腰を九十度に折り曲げて、少年に頼み込む。
ここまでやっても認めてもらえない。
「お前にはパーティーがあるんだろ? いくら俺でも、雑魚四人も面倒は見れんからなあ……あ、君は違うよ。雑魚四人ってのは、こいつのパーティーだから」
相変わらず、僕たちを雑魚扱いか。
女の子だけは、ちゃっかり雑魚のくくりから外してるし。
「今のパーティーは抜けさせてもらいます」
「まあ、しょうがねえか。そこまで言われたんじゃ、俺も断れない」
やっと認めてくれた。いい性格してるよ。
こうして、変な三人パーティーが結成された。
今日はもう遅いから、仕事は明日から。学校が休みの日でよかった。
少年の名前は、シシン・ベイ。十四歳。
女の子の名前は、カザカナ・ミコト。十歳。
そして僕、ロイサリス・グレンガー。十一歳。
子供三人の頼りないパーティーだ。
各々、自己紹介をして、今日は早速魔物退治に向かう。
ちなみに、コロアドさんたちには事情を話して、一時的にパーティーを抜けさせてもらった。
僕たち三人をまとめて面倒見るって言ってくれたんだけど、どう考えてもベイさんが納得しないだろうから、それは断った。
年下二人を引き連れたベイさんは、有頂天になってる。
ベイさんの隣をミコトさんが歩き、僕は少し後ろをくっついて行く。
ミコトさんにあれこれ話しかけてるけど、自分の武勇伝ばっかり。
もっと建設的な会話をすればいいのに。ハンターの心構えとか知識とか。
まずは打ち解けるのが優先ってことなら分かる。僕もそうだったし。
そうは見えないんだよね。
ひとしきり武勇伝を語り終えたベイさんは、今度はミコトさんに質問する。
「カナちゃんは、なんでハンターになりたいの?」
「わたし、初等学校に通いたいんです。孤児院の先生はよくしてくれますけど、学校に通うお金はなくて……」
「なるほどね。ハンターなら、一気に稼ぐのも無理じゃない。俺に任せといて。取り分は、俺が六割、カナちゃんが三割、ロイサリスが一割でどう?」
「さ、さんわり?」
初等学校に通ってないミコトさんは、算術もほとんどできないみたいだ。三割の意味が分かってない。
後ろを歩きつつ、僕が口を挟む。
「十あれば、三がミコトさんの取り分って意味ですよ。果実にたとえると、十個中三個がミコトさんの分です。ベイさんが六個で、僕が一個」
説明したら、ベイさんに睨まれた。余計な真似をするなって言いたいのかな。
「三? えっと、わたしはいいんですけど、ロイサリスさんは?」
「あいつは見習いなんだから、一割で十分だ」
「わたしは、見習いでもないんですけど……」
「初等学校に通いたいっていうカナちゃんの方が、優先されるべきだよ」
稼いだ分をどう取り分けるかは、パーティーの自由だ。
僕が一割でも構わないんだけど、ベイさんに言われるとなんかムカつく。
六割も持ってくなら、相応の働きは期待できるんだろうね。
役割分担としては、僕とベイさんが魔物と戦って、ミコトさんは荷物持ちだ。
でっかいリュックサックを重そうに背負ってる。服も軽装だ。
僕は小さな肩かけ鞄を持ってて、ベイさんだけは身軽な状態だね。
水や食糧、怪我をした時に手当てする包帯や薬など、必要な物は多い。
シロツメ謹製の薬も持ってきてる。効果のほどは折り紙つき。味は……劇物だけどね。
僕とベイさんは、装備も身に着けてる。革製の胸当てに剣って装備だ。
遠出することが多いハンターは、重い鉄製の鎧はあんまり着ない。
僕たちの格好も普通なんだけど、弱そうに見える。大丈夫?




