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42人の教室  作者: 夏空 新
第4章

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43/88

24:少しずつ動き始める予感

《4月4日/7:46/321号室》

 おはようございます、佐藤 タケルです。と挨拶したところで一つ動きが。

 ゼミターミナルを寝る前に部屋のプラグに繋げておくことと指示があったもので、言われた通りにして眠りについた昨晩。すやすやと眠って数時間後に目を覚めた時には一つのアプリケーションがインストールされていた。恐らく委員会ごとに違うのであろう。僕の場合は紫色のアイコンに「書」の一文字、下には書記と表記されたものであった。

 試しにタップをすると「書記の仕事内容について」と「予定1件」の項目があった。仕事内容の方は後程見るとして先に「予定1件」その部分をタップすると、4月8日の金曜日にどうやらやることがあるらしい。タイトルはシンプルに「議事録作成」と。議事録作成? 生徒会でマリアの手伝いで書かされたことはあるから全くもっての未経験ではないけど、しかし一体何の議事録なんだ…?少なくとも何かしらの会議に出席するってことだよな…?

 「うーん」と考えてもキリがないからあとで先生に訊くのが手っ取り早い手段だろうな。僕はそう思案しながら制服に着替え部屋をあとにした。


《7:56/321号室前》

「おや、ようやくのお出ましだね」

 そう声をかけるのは松本さんであった。

「ようやくということはだいぶ待った?」

「そうね………だいたい10分くらいかしら」

 腕時計を見ながら松本さんはそう言った。

「僕は朝が弱いからね、仮に今後待つのであればこの時間くらいを目安にした方がいいかもね」

「なるほど、肝に銘じておくわ」

「あっ、そうだ。松本さんに渡したいものがあったんだ」

 僕はあることを思い出し、慌てて部屋に戻る。それは1分と経たずすぐに戻ってこれた。

「はい、松本さん。これを渡したかったんだ」

「これは………あぁ、頼んでいたアレね」

 それは遡ること2日前、図書室で見つけた「八密」についてまとめた資料だ。資料と言っても事前に持ってきていたルーズリーフに書き記してホッチキス止めしたものだ。

「だいぶまとまっているわね………食事会場に持って行っても?」

「これ調べる限りだいぶグレーだからなるべく落とさない・置き忘れないさえすれば」

「了解」

 そう言って松本さんは資料片手にエレベーターへと向かった。僕はそれを後について行く。


《8:00/朝食会場》

 ちょうどいい時間についたことに気付きつつ、僕はいつものように和食セット(小さめの鮭の切り身×2、味付け海苔、納豆、若布と豆腐の入った味噌汁)を揃え席につく。

 遅れて松本さんも席についたがパンや果物数種は前回と変わり目がない。

「お互い既視感のある朝食だね」

「えぇ、そうね。ではいただくとしよう」

 そう言いながら松本さんは手を合わせて「いただきます」と言ったのち、右手にパン、左手に件の資料を見ていた。

「へぇ~、八密って一昨年にできた組織なんだね………」

 松本さんはボソッと思ったことを幾度も幾度も言う。

「ねぇ、佐藤君。これ本当によく調べてあるわね………君のいた犯罪研究部はとんでもないノウハウでも叩き込まれるのかしら?」

「まぁ僕の場合は昨日話した椿先輩からの入り知恵しかないよ」

「クオリティが警察の捜査に引けを取らない出来栄えよ」

「それは嬉しいね」

 僕にとっては普通のことをしたに過ぎないためこれ以上の感情がわかなかった。

「ありがとう佐藤君、一旦この資料貰っていいかしら?」

「いいよ」

「ありがとう。これは話したいことが山ほどあってキリがないのよ、ゆっくり後で話そう。ということで、朝食の続きといこう」

 そうして僕らは朝食を進め、学園へと向かうこととなった。


《9:00/鳥籠[終焉]学園》

 この先何があったかについてはダイジェストとして話すとして、学園内の案内が中心となった。入っていい教室や入ってはいけない場所(施錠されていたがどう考えても電気錠で何かしらで読み取ってはいれるようになっている)、特別教室、図書室、植物園、体育館、保健室などなどだった。

 そして鍵屋先生の自己紹介もここで行われた。相も変わらずブレない独特な話し方で教室内の空気が「異様」の2文字に包まれた。

「とまぁ、ここが君たち42人が1年間過ごす校舎の全貌と言ったところだ。今後の予定だが、まだ準備期間とかがあってな好きに過ごしてほしい」

 天堂先生は両手を教卓につきながらそう言った。

「そうだな、みんなはもう知っていると思う前提で話すがミッションカードのミッションクリアを目指すのもいいと思うよ」

 ミッションカード、そう言えばそんなものがあったな。こうして思うと僕以外にも何かしらのミッションが与えられているのか。しかも人によってはそれがアキレス腱になる。確かに思えば松本さんのミッションが松本さんを探偵であることを前提に与えられている。これを明かせば彼女が探偵であることを知らしめることになる。

「次こうして皆がこの教室に集まるのは1週間後の4月11日、月曜日だ!しばらく名残惜しいが友達をたくさん作るチャンスと思って過ごしてくれ。それじゃあ委員長、締めの挨拶といこう」

「わかりました。起立」

 結城さんはそう言って全員立ち上がる。

「礼」

『ありがとうございました』

「うん、ありがとうございました。気をつけて帰れよー」

 気を付けて帰るも何もこの学校の正面なんだよね、そう心の中で突っ込んだ。

「あっ、そうだ。佐藤~、こっち来てくれないか?」

「ん?」

 急に先生の方から僕への指名が入った。すぐに席を立ち、先生の方へ向かった。

「えっと、僕に何か用でもありますか?」

「佐藤の方こそ、俺に聞きたいことあったんじゃないか?」

「…………あっ!」

 すっかり忘れていた。松本さんに例の資料を渡すことで頭がいっぱいだったがばっかりに。僕は今日先生に訊くことが1つあったんだった。

「そうでした先生。このアプリの予定についてです」

「きっと佐藤のことだ、今日聞いてくると思ったから俺もそのつもりでいたさ」

「えっと議事録作成でしたよね、僕も何かしらの会議に出るってことでいいんですよね」

「あぁそうだとも」

「で、その会議というのは…」

「それは今この場では言えないな。だから細かいことは当日の金曜を待ってくれ、21時校舎前に集合だ。その時間帯に俺は立って待っているからそこで合流ということで」

「あぁ~、はい。わかりました」

「んじゃ、よろしくな~」

 そう言って天堂先生は去って行った。結局何の会議かはわからずじまい。まぁでも金曜の夜9時に学園に行けばいいってことがわかったのは大きいか。

「佐藤君」

 松本さんが僕に声をかける。

「松本さん」

「どうしたんだい、先生とわざわざ一対一で話すなんて何かあったのかい」

「そうだね、まぁ大したことはないけど………そうだ今朝渡した資料の話もしたいしその時に合わせて話そう」

「うむ、確かにそうだな」

 腕時計を見るとまもなく12時という頃合いを指し示していた。

「ちょうどお昼時だね、じゃあ僕は部屋に戻るとするよ」

「食堂に行かないのかい?」

「たまにはコンビニのものも食べてみたくてね」

「なるほどね、わかったわ」

「あ、そうだ松本さん。例の話は僕の部屋でしてもいいかな?」

「その心は?」

「いくつか見せたい画像があってね。ちょっと印刷の方法もまだ見つかってないし、このゼミターミナルで撮って見せるのも一手かと思ったけど高画質のもので見せるなら直がいいかなと思ってね」

「ふむ、今回の調査は画像付きか」

「動画もあるよ」

「それはそれは、随分と豊作じゃないか」

「まぁそれなりにはね」

「何時ごろ伺えばいいだろうか」

「ちょうど1時間後くらいってところかな、どう?」

「えぇ、問題ないわ」

「じゃあよろしくね」

 そう言って僕は教室を、学園を後にして昼食を部屋で摂った。内容はコンビニで買った唐揚げ弁当と麦茶。食後は松本さんに見せる画像や映像の用意のため、部屋にあるパソコンの操作行っていた。


《13:07/321号室》

 ピンポーンと呼び鈴の音がする。松本さんが来たかなと時計を見ればすっかり13時を過ぎていた。作業に夢中になり過ぎて自身で約束した時間がすっかり頭から抜けていた。

「は~い」

 僕は席を立ち、ドアの方へ向かう。念には念で覗き穴を見ると部屋着姿の松本さんが立っていた。メガネもしていない裸眼状態だ。右手には今朝渡した資料を持っていた。

 僕は鍵を開け彼女のを部屋に入れた。

「すまない佐藤君、少しばかり遅れてしまったようだ」

「いいよ別に、どうせ正面なんだし」

「その寛大な心に感謝するよ、ではお邪魔します」

 松本さんはそのまま部屋に入り、僕のベッドの上に座った。

「さて、どこから話そうか」

「う~ん。まずは手短に済む方からにしよう」

「先ほどの天堂先生との会話かしら」

「そう。内容は委員会のことについてだった。昨日先生言ってたでしょ、『寝る前にゼミターミナルをプラグに繋いでおくように』って。それで今朝見てみたらアプリが入っていてね」

「私もそうだったわ。全体補佐のアプリが自動的にインストールされていたわ」

「どんな感じだった?」

 松本さんは上着のポケットからゼミターミナルを取り出し、少し操作をした後に僕に画面を見せた。中身を見ると、僕のものとは違って「全体補佐の仕事内容について」の項目のみがあった。

「全体補佐がどういう役割を果たすのかについて書いてあったわ」

「内容は読んだの?」

「えぇ軽くね。大方私の推測通りのことしか書いてなかったわ。他の委員会の子に何かあればすぐにここに連絡が入るからフォローに入るようにというね」

「文字通り、全体を補佐するんだね」

「そうみたいね。で、佐藤君の方はちょっと違ったってことかしら」

「ご名答。これを見て」

 僕はゼミターミナルの例のアプリ、例の予定表を松本さんに見せる。

「『議事録作成』?」

「少なくとも僕は今度の金曜日に何かしらの会議に議事録担当として出席するみたいだ」

「なるほどね、佐藤君はそれを先生に訊こうとしたんだね」

「それがすっかり忘れてて、先生に先手打たれて教えてもらったんだよ」

「あら、佐藤君にしては忘れるなんて珍しいわね」

「そういうときもあるってことよ」

「ふぅ~ん。それでその会議ってのは何なのかしら?」

「実はなにもわからないんだ……。ただ言われたことは金曜の夜9時に学校で先生と合流することだけ」

「なるほど、勿体ぶられたのね」

「そういうこと、だから手短な話になったってわけ」

「そっか~、盛り上がりに欠けるわね」

 松本さんはそのまま後ろに倒れ、寝っ転がり天井を見上げる。一応異性の部屋なんだけど気にならないのか…。

「私は男部屋であろうが女部屋であろうがベッドに遠慮なく寝っ転がるタイプよ。あっ、でも不潔なのはヤダなぁ。安心してくれ、佐藤君は清潔であると信じているから」

 僕の思っていることを見透かして松本さんはそう言った。清潔だと思われるのは如何せん悪い気持ちにはならないが…。

「それよりも佐藤君」

「ん?」

「その議事録とやら、私にも見せることは可能だろうか?」

「さぁ?現時点でYESともNOとも言えないね。でも可能なら松本さんに議事録を会議であったことも含め情報共有するつもりだったよ」

「そうかい、助かるよ。ん?というか君がそう思うということは……」

 バッと松本さんは起き上がって「この会議自体が何かあるのだろうと踏んでいるのかい?」と尋ねた。

「なんとなく、ね…」

 自信はないが4日後に何か大きなものに巻き込まれる予感があった。敢えて一言も発していなかったが松本さんはそこをしっかりと気づいたようだった。つくづく、彼女の前で隠し事は難しいなぁ。

「さて松本さん、この話はこれ以上の内容がない。最速で土曜日、松本さんのための報告会をするよ。暫定この部屋でね」

「面白い話、特に私の与えられたミッションカードに繋がるような話題があればいいんだがね」

「うん、そうだね。じゃあ………」

「本題のこれだね」

 松本さんはバッと僕がまとめた資料を掲げた。

「内容はともかく、君は本当に字がキレイだね。つい見惚れてしまうよ」

 それは今関係ない気がするけど……そう思いながら僕らの擦り合わせは続く。


一夜明けて新章、佐藤君が何かしらのことに巻き込まれる雰囲気が漂っていますね…


というところで八密の確認など前回のところから続くあれこれも回収していこうという感じです(八密のことを調べる話を書いていた当時はすっかり忘れていてなんとかねじ込ませました)。

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