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42人の教室  作者: 夏空 新
第一部【箱庭の青春編】―第1章
23/81

隙間[2]

《19:25/どこかの屋上》

「見て見てシンくん、()だよ」

 そういう結城(ゆうき) アマネは屋上から4人のうちの一人に指をさす。指先に見えるのは佐藤 タケルだ。

「なぁ、本当に奴がそうなのか? 俺には全くそうは見えんがな?」

 彼女の言葉に対して、首を傾げながら(みなと) シンタロウは答えた。

「フフフッ……そういう湊サンは覚えていたンですかぁ?」

 シンタロウの言ったことに対し、横からヒョコっと仲丸(なかまる) アオイが出てくる。

「最後に会ったのはどれくらい前だったかな………昔はよくもまぁ口論していたけどよ。実際問題、真偽をこの場で判断できるのは一番縁のあるそいつだけだろ?」

 指さす先にもう一人立っている。しかしその人物は夜の闇に隠れ人相まではわからない。その一人は言う。

「―――――――――――」

 夜風の仕業で霞むが確かに3人の耳には届いていた。

「ねぇシンくんにアオちゃん……………もし、もしもさそれが本当だったらさ」

 少し言い淀みはしたが、アマネは3人に向けて満面の笑みでこう言った。


()()()()()の1年が過ごせそうだよね」


 その一言に対し、シンタロウは「やれやれ」と首を横に振っていて、アオイは不気味な笑みを浮かべながら自分の爪を噛んでいた。奥にいる一人の表情は闇と風で隠れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


《20:27/602号室》

 寮の6階にある602号室は細谷 ミオの部屋だ。日笠、佐藤、松本と別れてから彼女は自室に戻っていた。

 部屋に戻るなり彼女の服装はトレーニングウェア姿、室内で多少の運動をしていたのかすでに大量の汗を流していた。

「ふぅ……今日はとりあえずここまでかしら……」

 椅子にかけていたタオルを手に取って、額や首筋の汗を拭く。

「ダメもとで聞いてみたけど、振動の対策もされているなんて本当に高級ホテルのそれね。屋内で運動できるのも悪くないなぁ、しかも上にはいつでも利用可能の温泉付き、気持ちよく汗が流せるわね」

 ミオはこの先のことについて一計を案じていた。

「とりあえずその前に………~~~♪」

 ミオはパッと直立姿勢で腹筋を手で押さえながらボイストレーニングを始めた。しばらく声を出し、歌いもした。

「よし、今日もいい声が出たわ。防音設備もしっかりしているからこんなこともできるなんてねぇ、でも気持ちよく外でも歌いたいからちょうどいい場所を探してみようかなぁ」

 そう言いながらミオはタオルや着替えなどを小さな袋に詰め始めた。上の温泉に行く準備を始めた。

「そういや日笠さん、あの子凄いなぁ………」

 ふとミオはカナデと出会った時の会話を思い出す。


「細谷 ミオだからほそやんかなぁ。ほそやんってとっっっっても歌が上手いんだね、歌手か何か? というか歌手だよね?」

「そうかな? みんなからはよく言われるけど………」

「いや待って、その声思い出しかもしれないっ! あれはどこだったかなぁ~、確かMetube(ミーチューブ)で聴いた……………Mione(ミオネ)?」

「っ!」

「私さぁ、名前の通り? 音楽が大好きでさ、特に声には目がないのよね。さっき言った名前の子はさ、私の中でナンバーワンの歌声の持ち主なんだぁ。まぁ気のせいだったらごめんね」

「…………」

「あれ? ほそやん?」

「そ、そうなの………すごいね、日笠さん」

「え、えぇぇぇ!?」


 その先の会話についてはミオが歌手になった経緯、顔を隠す理由などで持ち切りになったが最終的にはミオがMioneであることを内緒にしてほしい。カナデは脅すこともなく快諾した。

「でも、一番好きな歌声って言われるのは結構嬉しいなぁ………」

 そう言ってミオは温泉に持っていく荷物を携え、部屋を後にした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


《19:20/街中》

 天海 コウスケはタケルと別れてからもしばらく街を歩いていた。この時彼は一切合切口にしなかったが、常に考えに考え思考を巡らしていた。考え事をしている間、彼はタバコを一本口にくわえ、火をつけていた。 

(さて、佐藤 タケルについてだが、俺は全くもってわからないなぁ。何なんだあの男、今までに()()()()()()()()人間だ。

 とりあえず少し吹っ掛けてみたがこれでどう動くかは様子見だな。わかっていることとしては松本と行動を取っている。あの松本と一緒に過ごすことで何が起きるかは見てからのお楽しみといったところか。

 もう一つの懸念点はアレか………いや、アレについて考えるのはまた後にしよう。俺は俺のなすべきことをしないとな)

 しばらくしてタバコの長さも短くなり、ポケット灰皿に吸殻を捨てた。

「こんなクソみてぇな茶番に付き合うのは懲り懲りだが、ルールは守りますよっと。少しでも神に媚び諂えりゃいいことの一つや二つ沸いてくんだろ?」

 そんなボヤキを残し、寮に帰った。

まず一つ目の屋上の会話。結城さん・湊君・仲丸さんと誰か。彼らの会話については何なんだろうね?


二つ目、細谷さんが歌手のMioneであるという話ですが、これは『歌い手が今なお大好きな私』から生まれた存在です。最初のアーティスト名はシルキーという名前でした。由来は飼っている犬が好き好んで食べていたおやつから取っていました。だけど脈絡もないなぁと思って下の名前であるミオにフォーカスを当てて歌手名をこっちに変えました。


三つ目の天海君については………彼はどうなるんだろうね?


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