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42人の教室  作者: 夏空 新
第一部【箱庭の青春編】―第1章

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21/86

8:4月1日 (8)

《18:25/321号室》

 上の階を探索してから僕はその後自室に戻った。それから現在まで何をしてたかと言えば、ネットを開いて色々と調べ物をしていた。具体的に言えばこのゼミについてだ。

 さり気なく言っているが僕は犯罪研究部に所属していた経歴がある。そこでの経験でのひとつに僕は「様々な裏サイトにアクセスするためのノウハウ」を得た。確かにインターネットの情報と言えば石ころからダイヤまで幅広く置かれている玉石混交なものだ。そのため、どれが正しくてどれが正しくないかを見極める必要がある。しかしあそこで得た情報収集術は限りなく100%に近い正確な情報が得られる。そのサイトをアクセスするたびに思うことが()()がどういった経緯でこのサイトを見つけたのか気になるところだ。

 彼女とは犯罪研究部に所属していた唯一の上級生で唯一の女子である部長のことだ。名前は椿(つばき)ルカ。明朗で誰からも人望があったいわゆる学園のアイドル的存在であった。そんな彼女との日々はどこかで必要になったら語ろう。

 さて本題に戻ると、結果から言うと僕の得た情報収集術でゼミのことを知ることはできなかった『超情報サイト OPENWORLD』をもってしてもこのゼミに関することが何一つ得られなかった。他にもアクセスをし続けた優秀なハッカー集団によって作られたとされているサイト『KEYT@LK』、書かれた嘘くさいタレコミ情報が真実でそれが世間に露呈される確率の高いサイト『処刑日程帳』、今後の政治の動向などが詳細に書かれている掲示板サイト『政の手』それらすべてを巡回してみたが、残念なことにゼミ自体のことやゼミの背景に歴史などは見つけられなかった。

 しかしそれはずいぶんと奇妙な話だ。毎年優秀な生徒を集めてここに連れていくというずいぶんと大きなプロジェクトであるはずだ、なのにどうして噂・都市伝説の域でしか認知されていないのか。しかも10年も経っているはずだ、上級生の先輩に知り合いは少しだけいたものの、その人たちから僕のようにゼミに行く都合で元々いた学校を去る人のことは一度たりとも聞いたことがない。違和感しかない。

「この先うまくやっていけるだろうか……」

 そんな一言が自然と漏れてしまう。しかし悩みに悩んでも埒が明かない。そろそろ夕食の時間であることに気づいた僕は部屋から出ようとした。

 

《18:29/321号室前》

 ドアを開けると目の前には松本さんが立っていた。

「やぁ、佐藤君。進捗はどうだい?」

 彼女は僕の顔を見るなりいきなりそう言いだした。僕としてももう目の前に松本さんがいることに何の違和感も衝撃もなく慣れてしまった。むしろいると高を括るほどだ。

「進捗って…松本さんは本当に察しが良いね」

「それが私のセールスポイントなのでね。夕食の時間にもなったし、そろそろと見込んでいたよ。

 ここで立ち話をするよりかは向こうで話していた方がいいんじゃないかしら?」

「そうだね。そのつもりで出たわけだし………まぁ、松本さんの期待に応えれるほどの話はないかもしれないけど」

「私も先に結論を言ってしまう形になるかもしれないが、同じようなものさ」

 そう言って松本さんはエレベーターの方へ向かった。僕も彼女の後を追うようについていった。


《18:32/食事会場》

 エレベーターに乗った後、何も起きることなく夕食の会場に着いた。少し時刻も過ぎていたためすでに何人かいた。ただ席は空きもあるため問題はないと感じた。

 夕食もバイキング形式でお互い好きなものを取って席に着き、今日のことについての話をした。僕から松本さんに伝えることはこのホテルの上層にある大浴場と共有スペースなどのこととネットでの調査(調べたサイトの名前は伏せながら)についてを話した。彼女は特に興味を示す様子はなく、頷きながら話を聞いていた。恐らく彼女の中で僕の行動は想定通りだったのかもしれない。

「とまぁ、その後の僕の行動についてはこんな感じだね」

「なるほどね…少なくとも言えるのは私たちはとても()()されているってところよね」

「うん、確かに。そこら辺にいる学生以上に客人扱いされているけど、一応ゼミ生という名目でここに来ているんだよね」

「えぇ、そうね。一体ゼミで何をされるのか全く読めないのも現状ね。勉強するのかすらもわからない、ただ不死の状態になっただけ。いま私たち等しく与えられている情報ってこれだけだからね。さすがの私もこれだけで推測してっていうのは難しいね」

「いや、そもそも推測するにしたって情報量があまりにも少なすぎる」


「あ、すんません」

 僕らが会話をしている中、近くで声が聞こえる。僕は声の方を向くと、そこにはガタイのいい男性が立っていた。黒いタンクトップを着ているが、袖口の二の腕は鍛えていたのがよくわかるほど通常の二回りくらい大きい。

「あぁ、君は秋月君だね」

 松本さんはその男性に向ってそう言った。秋月君の名前はフェリーに乗った時に一度彼女の口からも聞いたのを思い出した。

「そうッス、フェリーで話したとき以来ッスね。そちらの方は…?」

「あ、初めまして。僕は佐藤 タケルです」

「よろしくお願いするッス。俺は秋月 アユムです!」

 ある程度の挨拶を済ませたところで松本さんが間に入る。

「そう言えば秋月君、私たちに何か用があったんじゃないか?」

「あぁそうッスね、とは言っても大したことじゃないんスが、相席いいっスか?」

 なんだそんなことかと僕は思い、そのまま「どうぞどうぞ」と一言。秋月君は僕の隣に座った。一旦ゼミに関する会話を止め、秋月君のことを知るための会話に切り替えることにした。

「秋月君の体、随分とがっしりしているけど何かスポーツでもやっているの?」

「えぇまぁ。中学まではバスケをやっていて、高校からはラグビーを始めたって感じっスね」

 ラグビーをやっていると言われたら納得できる程の立派な体だとみていてわかる。胸板も厚く、岩のように堅そうだと触らずとも判断できそうだ。

「高校からラグビーを始めたのはどうしてだい?」

 松本さんが秋月君にそう聞く。確かに起点は不明だが中学生の頃まではバスケをしていて、そこから急にラグビーを始めたのは少し気になるところではあるなと彼女の質問を聞いて気づく。

「う~ん………そこまで大きな理由じゃないっスけど、単純に入った高校にラグビー部があったからっスかね」

 中学校のラグビー部は僕の経験上、確かにピンとは来ないイメージだからなるほどなぁと感心しながら聞いていた。

「ふ~ん、なるほどね。確かに違うスポーツに手を出してもやっていける体格だね、納得だわ」

 そう言っている松本さんはどこか疑問に思うような訝しい表情をしていた。今の会話に何ら疑わしい要素はないが今までを考えると松本さんの今の表情には何か意味深長な要素があるに違いない。だが、この場でわざわざ聞くほどでもないからあとで聞いてみることにしようと考えた。

 そんな会話をしながら夕食の時間はゆったりとしながらも充実した内容で過ごせた。

秋月君。当初は秋山君という名前になる予定でした。

ですが42人の名前を考えている時、出来れば『同じ漢字が被らないように』というポリシーを大事にしていました。

この序章の隙間[2]でゼミ生を見ると、桐山さんという人物がいます。彼女と『山』が被ってしまうため秋月君に改名しました。

自分もうっかり彼のことを秋山君と呼びそうになる時がありますが、頑張って慣れていきます。

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