末代家族0:プロローグ
真昼間。人通りのほとんどない、駅前のロータリーに立っている3人の少女は、かなり目立っていた。
それは、この辺りではあまり見かけない都会的ないでたちのせいであったかもしれないし、タイプこそ異なれど、3人が3人ともそれなりに整った顔だちをしていたせいかもしれない。そして、そもそも10代の若者をこの辺鄙な駅前で見かけること自体が珍しかったせいかもしれない。
3人のうちの1人は、肩まで届くストレートロングの黒髪に、ミニ丈の黒ワンピースを着た少女。よく見ると黒髪の内側は、ピンクのインナーカラーになっている。バッグやアクセサリーなどにピンクを取り入れたコーディネートは、地雷系ファッションにも通ずるところがある。顔立ちは整っているものの、視線を地面に落とし、固く一文字に結ばれた口元からは、やや不機嫌そうな様子がうかがえる。
一番背の高い少女は、白いブラウスにチェック柄のフレアミニを合わせた、制服のようなコーディネート。足元はローファーではなく、キャンバス地のスニーカーだ。背が高いせいもあるが、何よりも目を引くのは日に照らされて輝く、その金髪だろう。髪の長さは黒髪の少女よりも少し長いくらいで、こちらはストレートではなく、若干ウェーブがかかっている。タレ目がちの、愛嬌のある顔立ち。メイクはナチュラル系だが、全身から醸し出している雰囲気は、いわゆる「ギャル」のそれだった。
一番小柄な少女は3人のうちで最年少のようで、顔つきも雰囲気も他の2人よりも幾分幼い。白いノースリーブのワンピースに、グレーのカーディガンを羽織っており、足元はサンダル。髪は3人の中で一番長く、背中の真ん中あたりまである。髪色は明るめの茶髪だが、染めているというわけではなさそうだ。抜けるように白い肌、色の薄い虹彩などから、そもそも色素が薄いタイプなのだろう。近くで昼寝をしているネコが気になるらしく、視線はずっとそのネコに注がれていた。
3人はそれぞれ個性は異なるものの、どこか似た顔立ちと雰囲気をしている。各々が大きなキャリーバッグを携えており、このひと気のない駅前で、誰かを待っているようだった。
数分後、3人の少女の前に大型の白いミニバンが停まった。運転席から長髪で、がっしりとした体格の中年男性が降りてくる。
「申し訳ない!思いのほか道が混んでて、遅くなった。3人とも荷物は、これだけかな?」
男性は3人の少女に声をかけると、ミニバンの後部ハッチを開いて、そこの3人分のキャリーバッグを積み込んでいった。肩幅の広いがっしりとした体格で、大きなキャリーバッグを軽々と持ち上げていく。
キャリーバッグをを積み終えると今度は後部座席のスライドドアを開き、
「それじゃ、乗って貰ってよいかな」と3人の少女に声をかけた。
まず、一番小柄な少女が乗り込む。
「えっと、君がかずみさん、かな?」
かずみと呼ばれた少女は男性に向かってうなずいた。
「そうか、かずみさんとは、初めましてだね」
「初めまして。よろしくお願いします、おじさん」
次に金髪の少女が乗り込み、最後に黒髪の少女が乗車した。
「うちも初めましてです。次女の詩織です」
運転席に乗り込んだ男性に向かって金髪の少女が声をかけた。
「ああ、どうもよろしく。お姉さんの美保さんとだけは、面識があるんだけど…」
「すみません。よく覚えてないです。写真では、見たことがありますが」
唯一、面識があると言われた黒髪の少女は、ややそっけない感じでそう答えた。
つまり、この3人の少女たちは姉妹であり、黒髪の少女「美保」が長女、金髪の少女「詩織」が次女、一番小柄な少女「かずみ」が三女とのことだった。
そして3人を乗せたミニバンを運転している中年男性は、彼女たちの「おじさん」にあたる人物のようだ。
先ほどの美保のそっけない返事のせいで、若干気まずい雰囲気になった車内だが、「おじさん」はさして気にする風でもなく、
「じゃ、出発するからシートベルト締めてね」とミニバンを発進させた。




