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海道グループ〜欲望の王国で女達は頂点を奪い合う〜  作者: Fujeno Yasuko


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第7章 百万円の扉 ー百万円が開く夜ー

この物語は、すべてフィクションです。

登場人物は全員成人であり、架空の大企業の海道グループを舞台に、成人男女の欲望、権力、金、社会の歪みの中で、欲望を満たす為の生存戦略を練る女達のオムニバス官能ノワール群像劇です。


ー藤野靖子編 女王への第一歩ー


 脇田との激しい夜から、数日が過ぎていた。


 藤野靖子は、いつものようにジムで会員の姿勢を見て、ストレッチの角度を直し、呼吸の使い方を教えていた。

 仕事中の彼女は、何も変わっていないように見えた。


 明るい声。

 自然な笑顔。

 相手の身体をよく見る癖。

 無理をさせず、でも確実に変えていく指導。


 けれど、ふとした瞬間に、あの夜の記憶が身体の奥から浮かび上がった。


 脇田の視線。

 プロの男優としての衝撃。

 自分を見極めるような沈黙。

 そして、それに応えようとした自分自身。


 靖子は何度も思い返した。


 あれは、本当に自分の意思だったのか。

 それとも、場の熱に流されただけだったのか。


 脇田との情事を思い返すたび、靖子の胸の奥には、恥ずかしさが込み上げた。

 頬が熱くなる。

 目を逸らしたくなる。

 忘れてしまいたくなる。


 なのに、忘れられない。


 あの夜の自分は、逃げていなかった。

 ただ受け身で流されたわけでもなかった。


 相手の呼吸を見ていた。

 動きの意味を考えていた。

 自分の身体がどう見えるか、どう反応するか、どこまで高められるかを、どこか冷静に観察していた。


 トレーナーとしての自分。

 女としての自分。

 見られる側の自分。

 認められたい自分。


 それらが、あの夜だけは一つになっていた。


藤野靖子

「……最低」


 靖子はロッカールームで小さく呟いた。


 けれど、その声には本気の拒絶だけではなく、自分でも認めたくない甘さが混じっていた。


 恥ずかしい。

 怖い。

 でも、少しだけ誇らしい。


 脇田はプロだった。

 女を綺麗に見せることを知っている男だった。

 その男を相手に、自分は壊れなかった。

 むしろ、知らなかった自分の扉を開けられた。


 その事実が、靖子を苦しめていた。


 否定したいのに、否定しきれない。

 あの夜の自分を、どこかで認めてしまっている。


 気づけば靖子は、仕事帰りの駅とは逆方向へ歩いていた。


 夜の街。

 ビルのガラスに映る自分の姿。

 少し疲れた顔。

 それでも、目だけは妙に冴えていた。


 何をしているのか、自分でも分からなかった。


 帰ればいい。

 忘れればいい。

 もう関わらなければいい。


 そう思っているのに、足は止まらなかった。


 やがて靖子は、一つのビルの前で立ち止まった。


 見覚えのある入口。

 関係者以外立ち入り禁止の札。

 奥へ続く、静かな廊下。


 西園寺アスカのいるAVスタジオだった。


藤野靖子

「……私、何しに来たんだろ」


 靖子が呟いた時、入口の自動ドアが開いた。


 中から出てきたスタッフが、靖子を見て一瞬だけ驚いた顔をした。

 すぐに奥へ連絡が入る。


 数分後。


 黒い服をまとった西園寺アスカが、廊下の奥から現れた。


 アスカは驚かなかった。

 まるで、靖子が来ることを最初から分かっていたように、静かに微笑んだ。


アスカ

「来たのね、靖子さん」


 靖子は言葉に詰まった。


靖子

「私……別に、来るつもりじゃ……」


 その一言に、靖子の胸が跳ねた。


 アスカは近づきすぎない距離で立ち止まった。

 優しくも、どこか逃げ道を塞ぐような距離だった。


アスカ

「脇田さんとの夜、忘れられない?」


 靖子は答えられなかった。


 否定すれば嘘になる。

 肯定すれば、自分が変わってしまったことを認めることになる。


 アスカは靖子の沈黙を責めなかった。


アスカ

「恥ずかしいのは当然よ。怖いのも当然。だけどね、靖子さん。あなたはあの夜、ただ乱されたんじゃない」


 アスカの声は低く、静かだった。


アスカ

「あなたは、自分の身体を使って、自分の可能性を見たの」


 靖子は視線を上げた。


 その言葉は、靖子の中にある言い訳を壊した。

 同時に、ずっと探していた答えにも聞こえた。


靖子

「私は……そんな立派なものじゃないです」


アスカ

「立派かどうかは、どうでもいいわ」


 アスカは少しだけ笑みを深めた。


アスカ

「大事なのは、あなたがもう一度その扉の前に立っていること」


 靖子の指先が震えた。

 帰ろうと思えば帰れる。

 このまま背を向ければ、まだ普通の生活に戻れる。


 けれど、戻ったとしても、あの夜を知らなかった自分には戻れない。


靖子

「……私は、どうすればいいんですか」


 靖子の声は小さかった。

 けれど、逃げる声ではなかった。


 アスカは靖子の目を見た。


アスカ

「参加には条件があるわ」


靖子

「条件……?」


アスカ

「本気の人間だけを入れるための条件よ。冷やかしも、流されただけの人も、ここから先へは進ませない」


 靖子は息を呑んだ。


 アスカはまだ、海道グループの名を出さなかった。

 その奥にある巨大な仕組みも、金と権力と欲望が絡み合う舞台も、何一つ語らなかった。


 ただ、目の前の靖子にだけ分かる言葉を選んだ。


アスカ

「参加費は、百万円」


 靖子の表情が固まった。


 現実的すぎる金額だった。

 夢でも、勢いでも、綺麗事でもない。

 その数字は、靖子の足元へ重く落ちた。


靖子

「百万円……」


アスカ

「払えないなら、それでいい。払いたくないなら、それも正しい。あなたはここで引き返せる」


 アスカは淡々と言った。


アスカ

「でも、もし払うなら、それは誰かに流された証拠じゃない。あなたが自分の意思で、ここから先へ進む証拠になる」


 靖子は唇を噛んだ。


 脇田との夜が、また胸の奥で熱を持つ。

 恥ずかしさ。

 怖さ。

 認められたい気持ち。

 もっと自分を知りたいという、知らなかった欲望。


 靖子は、初めてそれらから目を逸らさなかった。


靖子

「……少し、時間をください」


アスカ

「ええ」


 アスカは頷いた。


アスカ

「ただし、覚えておいて。扉はいつまでも開いているわけじゃない」


 靖子はスタジオの奥を見た。


 そこにはまだ、自分の知らない世界があった。

 誰が待っているのかも知らない。

 どんな女たちがいるのかも知らない。

 そして、その先に現在一位の女王がいることも、まだ知らない。


 ただ一つだけ、靖子には分かっていた。


 もう、自分は完全には戻れない。


 その夜、靖子は家に帰ってから、通帳を開いた。

 数字を見つめる手が、わずかに震えていた。


 恐怖ではない。


 それは、扉の取っ手に手をかけた人間だけが知る震えだった。


アスカとの会話を終えた夜、靖子はすぐには眠れなかった。


 部屋の明かりを落としても、まぶたの裏にはスタジオの廊下が残っていた。

 アスカの静かな声。

 百万円という現実的な数字。

 そして、脇田とのあの夜に、自分の身体が見せた信じられないほどの充実感。


 靖子はベッドの上で寝返りを打った。


 金がないわけではない。


 むしろ、靖子は金銭面では堅実だった。

 派手な買い物はしない。

 無駄遣いもしない。

 仕事で得た収入は、生活費、軽い投資、貯金、そして将来的に自分のジムを持つための資金として、きちんと分けていた。


 百万円。


 大金ではある。

 けれど、出せない金額ではなかった。


 靖子が本当に迷っていたのは、金ではない。


 その百万円を出した瞬間、自分がもう戻れない世界へ踏み込むのだという恐怖だった。


 脇田との夜は、偶然だったと言い訳できた。

 アスカに導かれた。

 場の空気に飲まれた。

 自分でも分からないまま、ああなった。


 そう言い訳することは、まだできた。


 けれど、参加費を自分の手で払えば、もう違う。


 それは選択になる。


靖子(心の声):

「払ったら……私は、自分で望んだことになる」


 胸の奥が熱くなった。


 怖い。

 恥ずかしい。

 でも、それと同じくらい、知りたい。


 あの夜、自分の身体は最高のパフォーマンスを発揮した。

 トレーナーとして鍛え、整え、磨いてきた身体が、まったく別の舞台で、自分でも知らない輝きを放った。


 あの感覚を、靖子は否定できなかった。


 脇田に認められたこと。

 アスカに見られたこと。

 自分自身が、自分の身体を誇らしいと思ってしまったこと。


 それらは靖子の中で、羞恥と自己肯定と承認欲求に分かれて、何度もぶつかり合っていた。


 通帳を開く。

 数字を見る。

 閉じる。

 また開く。


 何度も繰り返した。


靖子:

「……馬鹿みたい」


 小さく笑った。


 その笑いは、自嘲ではあった。

 けれど、泣きそうな弱さではなかった。


 靖子はゆっくり身体を起こした。

 鏡の前に立つ。


 そこに映っているのは、いつもの自分だった。

 ジムで会員に笑いかける女。

 堅実に働き、将来を考え、身体と生活を整えてきた女。


 でも、もうそれだけではなかった。


 脇田との夜を知った女。

 アスカに可能性を見抜かれた女。

 そして、自分の意思で扉を開こうとしている女。


靖子(心の声):

「やろう」


 その一言が、胸の奥を強く押した。


靖子:

「女は度胸……でしょ」


 靖子は、自分に言い聞かせるように呟いた。


 翌日。


 靖子は、普段より少しだけ丁寧に身支度をした。

 派手な服ではない。

 けれど、だらしなくもない。


 清潔なブラウス。

 身体のラインを邪魔しないスカート。

 歩きやすいヒール。

 そして、百万円を用意した封筒。


 バッグに入れた瞬間、その重みがやけに生々しかった。


 金の重さではない。

 覚悟の重さだった。


 電車に乗っている間も、靖子の指先はバッグの持ち手を離さなかった。

 窓に映る自分の顔は、昨日より少し硬い。


 それでも、目は逸らさなかった。


 目的地に着く。


 表向きは、関係者専用の撮影施設。

 けれど、その奥には、靖子がまだ知らない巨大な組織の入口があった。


 海道グループ。


 靖子はその名の本当の意味を、まだ理解していない。

 ただ、アスカが用意した受付会場へ向かっていた。


 扉の前で、一度だけ立ち止まる。


 逃げるなら今だ。

 帰るなら今だ。

 昨日までの自分に戻るなら、まだ間に合う。


 靖子はバッグの中の封筒に触れた。


靖子(心の声):

「戻るために来たんじゃない」


 扉が開いた。


 受付会場は、靖子が想像していたよりも静かだった。

 派手な音楽も、下品な熱気もない。

 高級ホテルの会員制ラウンジのように、空気そのものが管理されている。


 その中央に、西園寺アスカがいた。


 そして、その隣に、もう一人の女が立っていた。


 黒髪。

 整った姿勢。

 隙のないスーツ姿。

 秘書という言葉が似合うのに、ただの秘書ではないと一目で分かる女。


 佐伯鈴香。


 靖子はまだ、その女の本当の立場を知らない。

 けれど、視線が合った瞬間、背筋が自然と伸びた。


アスカ:

「来たのね、靖子さん」


靖子:

「……はい」


 靖子の声は震えていなかった。


 アスカは、靖子の手元のバッグを一度だけ見た。

 すぐに視線を戻す。


アスカ:

「答えは、決まった?」


 靖子はバッグから封筒を取り出した。


 その場の空気が、ほんのわずかに変わった。


靖子:

「参加費です。百万円、用意しました」


 鈴香の目が、静かに靖子を測った。


鈴香:

「確認いたします」


 鈴香が封筒を受け取る。

 その動きは丁寧で、無駄がなかった。


 靖子は、その手つきを見ただけで分かった。

 この女は、金を受け取っているだけではない。

 人間の覚悟を見ている。


 鈴香は中身を確認し、アスカへ小さく頷いた。


鈴香:

「相違ありません」


 アスカは靖子を見た。


アスカ:

「これで、あなたは扉を開いた」


 靖子は息を吸った。


 怖さは消えていない。

 むしろ、さっきより強くなっていた。


 でも、不思議と後悔はなかった。


靖子:

「私は……自分がどこまで行けるのか、知りたいです」


 その言葉を聞いたアスカの表情が、わずかに柔らかくなった。


アスカ:

「いいわ。その言葉、忘れないで」


 鈴香は無表情のまま、靖子へ一枚の書類を差し出した。


鈴香:

「こちらに署名を。内容を確認したうえで、ご自身の意思でお願いします」


 ご自身の意思。


 その言葉が、靖子の胸に深く刺さった。


 靖子はペンを取った。

 名前を書く。


 藤野靖子。


 その四文字が、紙の上でいつもより重く見えた。


 書き終えた瞬間、部屋の奥にある扉が静かに開いた。


 その先に何があるのか、靖子はまだ知らない。


 だが、確かに一つだけ分かっていた。


 もう、見学者ではない。

 もう、迷い込んだ女でもない。


 自分の意思で、ここへ来た。


アスカ:

「ようこそ、靖子さん」


 アスカの声が、静かな受付会場に響いた。


アスカ:

「ここから先は、あなた自身の舞台よ」


 靖子は扉の奥を見つめた。


 百万円の扉は、もう開いていた。


藤野靖子は、会場に足を踏み入れた瞬間、自分の足音を見失った。


高いヒールの音。グラスの触れ合う音。男たちの低い笑い。女たちの甘い声。遠くで鳴っている音楽は、心臓の鼓動と同じ速さで床を震わせていた。


ここは、ただのパーティーではない。


靖子は一目で悟った。


欲望が、照明を浴びている。


金が、支配している。


権力が、シャンパンの泡の向こうで女を品定めしている。


ジムで見慣れた身体とは違った。

そこにいる女たちの肉体は、鍛えるためだけのものではなかった。立ち方ひとつ、髪を払う指先ひとつ、唇に残る笑みひとつが、男たちの視線を絡め取る罠になっている。


靖子は、自分の腕を無意識に抱いた。


負けているわけではない。


そう思いたかった。


けれど、この場所にいる女たちは、靖子の知らない戦い方を知っていた。


その時だった。


会場の照明が、ふっと落ちた。


ざわめきが、波のように引いていく。


次の瞬間、壁一面を覆う巨大モニターに光が走った。


白く、青く、金色に。


そして、女たちの名前が浮かび上がる。


昨年度ランキング。


靖子の視線は、吸い寄せられるように一番上へ向かった。


第一位――高山響子。


その名前を見た瞬間、靖子の喉が小さく鳴った。


写真の中の女は、笑っていなかった。


夜景を背負った高級オフィス。黒い衣装。細い首元に光る宝石。すっと伸びた脚。鍛えられた腹部。豊かな曲線。冷たい目。


美しい。


だが、美しさだけではなかった。


その女は、写真の中にいるのに、会場を支配していた。


まるでモニターの向こう側から、靖子の胸の奥を見透かしているようだった。


――あなたは、ここで何を見せられるの?ーー


そう問われた気がした。


靖子は息を吸った。けれど、空気は肺の途中で止まった。


高山響子。


女社長。


スポンサー。


昨年度総合第一位。


VIP支持、最高水準。


観客票、歴代上位。


冷静な支配力と、大人の色気で会場を掌握する女。


文字は淡々としていた。

だが、靖子にはそれが、経歴ではなく判決文のように見えた。


この女は勝っている。


この世界で、すでに勝っている。


そして自分は、まだ入口に立っているだけだ。


「……一位」


唇から漏れた声は、自分でも驚くほど細かった。


ジムでは、靖子は人の身体を読む側だった。

肩の力み。骨盤の傾き。膝の入り方。呼吸の浅さ。疲労の癖。


見れば分かった。


けれど今、靖子は見られる側に立っていた。


姿勢も、表情も、震えも、迷いも、全部。


巨大モニターの右側には、現在のリアルタイム票数が映し出されていた。


数字が動く。


また動く。


誰かが票を入れている。


観客席から。

VIPルームから。

配信の向こうから。

この会場にいる人間だけではない。見えない無数の目が、女たちを見て、比べ、選んでいる。


数字が、女を飲み込んでいく。


靖子の胸がざわついた。


怖い。


そう思った。


けれど、次の瞬間、その恐怖の奥に、別のものが灯った。


悔しさだった。


なぜだろう。


まだ高山響子に会ってもいない。

言葉を交わしたわけでもない。

何かを奪われたわけでもない。


それなのに、靖子は悔しかった。


あの女は、すでにこの舞台の中心にいる。


名前だけで、会場の空気を変える。


写真一枚で、女たちを黙らせ、男たちを黙らせる。


それが、たまらなく遠かった。


そして、たまらなく眩しかった。


モニターの下部に、新人枠が表示された。


藤野靖子。


その文字を見た瞬間、靖子の心臓が跳ねた。


写真は簡易登録のものだった。

プロフィールも短い。


スポーツトレーナー。

初参加。

今夜、デビュー。


デビュー。


その言葉が、欲望の針のように靖子の背中をなぞった。


試される。


今夜、自分は試される。


身体だけではない。

顔だけでもない。

若さでも、筋肉でも、胸でも、脚でもない。


この異常な世界の中で、藤野靖子という女がどこまで通用するのか。


欲望の前で、逃げるのか。

飲まれるのか。

それとも、見返すのか。


靖子は、知らず知らずのうちに拳を握っていた。


手のひらに爪が食い込む。


痛みがあった。


その痛みが、かろうじて靖子を現実につなぎ止めていた。


「怖い?」


背後から声がした。


案内役の女だった。

柔らかい笑みを浮かべている。けれどその目は、何人もの新人がこの場所で変わっていくのを見てきた者の目だった。


靖子はすぐに答えられなかった。


怖い。


そう言えば楽だった。


でも、それだけでは嘘になる。


高山響子の写真を見た時、靖子の中に生まれた感情は恐怖だけではなかった。


胸の奥が焼けるようだった。


羨ましい。


悔しい。


知りたい。


あの場所に立つ女は、何を見ているのか。


あの名前の重さを背負う女は、どんな顔で男たちを見下ろすのか。


そして、自分は――藤野靖子は、そこに届く女なのか。


靖子はモニターを見上げたまま、ゆっくりと言った。


「……怖いです」


案内役の女は、何も言わなかった。


靖子は続けた。


「でも、逃げたいとは思いません」


自分で言って、驚いた。


声が震えていなかった。


会場の熱が、靖子の頬を撫でていく。

音楽が、腹の奥を叩く。

男たちの視線が、肌の上を滑る。

女たちの香りが、呼吸の中に混ざる。


靖子はもう一度、高山響子を見た。


画面の中の女王は、相変わらず冷たい目をしていた。


靖子には、その目が挑発に見えた。


来られるものなら、来てみなさい。


そう言われている気がした。


靖子は、小さく笑った。


自分でも知らない笑みだった。


怖い。

怖くてたまらない。


でも、身体の奥で何かが目を覚まし始めている。


ジムの床では眠っていたもの。

鏡の前では隠していたもの。

真面目なトレーナーとして生きてきた日々の奥に、ずっと沈んでいたもの。


それが、この会場の光と熱に触れて、ゆっくりと目を開けようとしている。


巨大モニターの数字が、また動いた。


高山響子の票が伸びる。


会場がわずかに沸く。


靖子はその瞬間を、目を逸らさずに見た。


一票。


たった一票。


けれど、その一票の向こうに、金と欲望と権力と熱狂がある。


その重さを、靖子は初めて知った。


女王と新人。


頂点と入口。


高山響子と、藤野靖子。


二つの名前が、同じ光の中に並んでいる。


それは偶然ではなかった。


少なくとも、靖子にはそう思えた。


この夜は、ただの初参加ではない。


自分が昨日までの自分を脱ぎ捨てる夜だ。


藤野靖子は、静かに一歩を踏み出した。


会場の空気が、肌にまとわりつく。


怖さは消えない。


けれど、その怖さの奥に、確かな熱がある。


靖子はその熱を、初めて自分のものとして受け入れた。


高山響子の写真が、背後のモニターで輝いている。


その光を浴びながら、靖子は思った。


いつか、私も。


声にはしなかった。


だが、その言葉は胸の奥で、はっきりと形になった。


いつか、私も――あの場所へ。


ー海道グループのパーティーの第一夜ー


藤野靖子の初夜は、欲望ではなく、まず敗北感から始まった。


そしてその敗北感こそが、彼女の中に眠る女王の種に、最初の火をつけた。


藤野靖子は、巨大モニターから視線を外した。


高山響子の名は、確かに重い。


昨年度一位。

スポンサー。

女社長。

この場の頂点にいた女。


だが靖子は、そこで心を持っていかれなかった。


凄い女がいる。

それは分かった。


けれど、凄い女を見たからといって、自分の軸まで明け渡す必要はない。


靖子は、静かに息を吐いた。


牛柄のハイレグビキニが、肌に吸いつくように張りついている。

布は少ない。隠しているというより、隠している事実そのものを見せつけるような衣装だった。


胸の丸み。

腹筋の線。

腰骨。

脚の付け根。


普段なら機能として扱ってきた身体の部位が、今夜はすべて、女としての意味を持たされていた。


男たちの視線が、遠慮なく靖子の身体をなぞる。


ただ見るのではない。


剥がすように。

測るように。

想像するように。


その視線に、靖子の肌は正直に反応した。


恥ずかしさはある。


だが、靖子は肩を丸めなかった。


背筋を伸ばす。

肋骨を開きすぎない。

骨盤を立てる。

下腹に力を入れる。

膝を固めない。


身体は、どんな場所でも嘘をつかない。


たとえここが、欲望と金と権力が混ざり合う、海道グループの乱交パーティーの会場であっても。


靖子は、自分の身体を内側から整えた。


その時だった。


会場の一角から、低く濡れたようなベース音が流れてきた。


腹の奥を直接撫でるような重いリズム。


靖子の視線が、自然とそちらへ引かれた。


そこだけ、空気が違っていた。


赤、黄、緑の照明が、汗ばんだ肌を舐めるように揺れている。

黒服たちが事前に整えたのだろう。その一角だけが、会場の中にぽっかり開いた、熱帯夜のような小さな舞台になっていた。


煙のようなライト。

甘い酒の匂い。

香水。

体温。

興奮した男たちの吐息。


その中心に、斎藤美奈子がいた。


巨大モニターが切り替わる。


斎藤美奈子。


――実戦審査枠、合格者。

――レゲエダンスを武器にする肉体表現型。

――胸部、臀部、腰部の可動と揺動に優れる。

――観客煽動力、高。

――男性参加者への挑発性能、上位評価。

――空間を自分の色に染める能力あり。


靖子は、文字を読みながらも、美奈子の身体から目を離せなかった。


美奈子は踊っていた。


ただのダンスではない。


それは、肉体を使った挑発だった。


腰が沈む。

尻が重く跳ねる。

胸がリズムに遅れて大きく震える。

腹が波打つ。

太腿がしなり、膝が開き、閉じる。


そのたびに、周囲の男たちの空気が変わる。


視線が集まる。


喉が鳴る。


笑い声が下品に濡れる。


美奈子は、それを分かっていた。


分かったうえで、さらに胸を揺らし、尻を突き出し、腰を音楽に絡ませる。


挑発的なドヤ顔。


自分の肉がどう揺れれば男が反応するか。

どの角度なら視線が胸に落ちるか。

どの沈み込みなら、尻の弾力が一番いやらしく見えるか。


美奈子は知っている。


知識ではない。


身体で覚えている。


靖子は、まずトレーナーとしてそこを見た。


背中が潰れていない。

骨盤の動きが大きいのに、腰椎だけで逃げていない。

足裏が床を掴んでいる。

膝も足首も柔らかい。

腹圧の抜き方が上手い。


見せるための動きなのに、身体を壊しにくい。


いや、違う。


身体を壊さないぎりぎりの範囲で、男の理性を壊しにいっている。


靖子は、そこでようやく胸の奥が少し熱くなるのを感じた。


下品だとは思わなかった。


美奈子の動きには、明確な技術がある。


ただ、技術の使い道が靖子の知る世界とは違う。


健康のためではない。

競技のためでもない。

治すためでも、鍛えるためでもない。


欲情させるため。


男の目を奪い、身体の奥に火を点け、考える力を奪うため。


そのために美奈子は、胸も、尻も、腰も、太腿も、表情も、すべて使っている。


靖子は静かに息を吸った。


空気が濃い。


会場全体が、汗と香水と酒と欲望で湿っている。


その湿った空気が、牛柄ビキニの隙間から肌に入り込んでくるようだった。


美奈子が靖子を見た。


一瞬。


だが、はっきりと。


音楽に合わせて腰を揺らしながら、美奈子は唇の端をつり上げた。


見てるんでしょ。


その顔だった。


靖子は目を逸らさなかった。


美奈子はさらに大胆に動いた。


胸を前へ押し出し、重さを見せつけるように震わせる。

尻を大きく回し、下半身の熱をそのまま音楽へぶつける。

男たちの歓声が一段上がる。


ある男が、思わず身を乗り出した。


別の男が、笑いながらグラスを傾けた。


女たちの中には、冷ややかに見ている者もいる。


しかし、誰も目を逸らせていない。


それが美奈子の強さだった。


品があるかどうかではない。

正しいかどうかでもない。


見せた瞬間に、場の体温を上げる。


この会場では、それは間違いなく才能だった。


靖子は、自分の腰へ意識を落とした。


牛柄のハイレグが、脚の付け根に食い込んでいる。

少し動くだけで、布が肌を擦る。

胸元も、呼吸のたびにきつくなる。


この衣装は、自分を守ってはくれない。


むしろ、隠しきれないものを強調するためにある。


靖子は、その事実を受け止めた。


だが、乱されはしなかった。


美奈子のように揺らすことが、自分の答えではない。


美奈子は、肉感と音楽で攻める女だ。


自分は違う。


靖子は、身体を派手に崩して煽る女ではない。

鍛えた身体を、律し、整え、必要な瞬間に正確に使う女だ。


ただし――。


靖子は、美奈子から目を離さずに思った。


この会場では、律するだけでは足りない。


律した身体を、どう見せるか。


自分のストイックさを、どう欲望の場で武器に変えるか。


それを知らなければ、ここでは戦えない。


美奈子の票数が動いた。


巨大モニターに数字が加算される。


周囲が沸く。


美奈子はそれを横目で見て、さらにドヤ顔を深めた。


まるで、当然でしょ、と言わんばかりに。


靖子は、その姿を見て小さく息を吐いた。


焦りはなかった。


ただ、理解した。


この女は強い。


肉体を恥じていない。

視線を恐れていない。

欲望の空気を自分の味方にしている。


靖子は、その強さを認めた。


そのうえで、自分の中に一本の線を引いた。


私は、私のやり方で立つ。


美奈子が再び靖子を見た。


今度は、少し長かった。


挑発。


値踏み。


面白がり。


そのすべてが混ざった目。


靖子は逃げなかった。


煽り返しもしなかった。


ただ、真っ直ぐに見返した。


その姿勢は、派手ではない。


胸を揺らすわけでもない。

尻を突き出すわけでもない。

男たちへ媚びるわけでもない。


牛柄の際どいハイレグ姿で、肌を晒しながら、それでも靖子は静かだった。


静かなのに、崩れていない。


その静けさに、美奈子の表情が一瞬だけ変わった。


靖子は思った。


あなたの武器は分かった。


でも私は、あなたにはならない。


美奈子の一角は、さらに熱を増していく。


レゲエの音が、胸と腹を揺らす。

男たちの欲望が、目に見えない蒸気のように立ちのぼる。

美奈子の肉体が、その熱を浴びてますます艶を増す。


靖子の肌にも、その熱は届いていた。


頬が熱い。

呼吸も少し深い。

下腹に、普段のトレーニングとは違う重さがある。


それでも靖子は、自分を見失わなかった。


この熱を否定しない。


だが、飲まれない。


この会場で生き残るには、欲望を拒むだけでは足りない。


欲望を見て、認めて、その上で自分の形に変えなければならない。


藤野靖子は、その入口に立っていた。


美奈子の票数が、またひとつ伸びる。


歓声が上がる。


靖子はその数字を見てから、美奈子の踊る身体へ視線を戻した。


そして、静かにうなずいた。


レゲエの熱。

揺れる肉体。

男たちの濡れた視線。

女たちの値踏み。

牛柄ビキニに包まれた自分の身体。


そのすべてを受け止めながら、靖子は思った。


ここは、身体が裸に近づく場所ではない。


本性が裸にされる場所だ。


斎藤美奈子は、それを知っている。


だから強い。


ならば自分も、自分の本性を見つけなければならない。


藤野靖子は、乱れないまま、熱を覚えた。


その静かな熱こそが、彼女の第一夜を少しずつ変え始めていた。


重低音が床を揺らす、光と快楽の迷宮。贅沢な装飾が施された広大なホールには、濃厚な香水の匂いとアルコールの香りが充満している。空間の至る所で、視線が品定めするように女たちの肢体を舐め回し、誰が最も「価値」があるかを冷徹に計量する、残酷な競売のような空気が漂っていた。


重いレゲエのリズムが刻まれる中、ステージの中央へと滑り出す。周囲の冷ややかな視線を、心地よい刺激として全身で受け止め、不敵に口角を上げた


美奈子

『ちょ、マジでみんな顔怖すぎなんだけど!』


腰を低く落とし、音楽のビートに合わせてゆっくりと、だが大胆に尻を振る。小麦色の肌を震わせ、豊満な胸元をわざと強調しながら、挑発的に腰を回すレゲエダンスを披露し始めた


美奈子

『もしかして、あたしの魅力にビビってんの?もっと近くで、じっくり見ていいよ。最高にイケてるあたしをさ!』


美奈子が激しく腰を突き出し、肉感的な身体を波打たせるたび、周囲の男たちの視線に明確な変化が生まれる。単なる鑑賞から、所有欲に突き動かされた飢えた獣の目へと変わり、彼女を囲む輪が徐々に狭まっていく。


激しいリズムに身を任せ、自らの秘部を強調するように大胆なポーズを決める。熱い視線に晒される快感に、瞳に勝ち誇った輝きを宿らせて、一人一人の男に挑発的な視線を飛ばした


美奈子

『あはっ、いい顔!そんなに欲しそうな目して、ウケるし。あたしをランキング上位に上げるなら……いいこと、いっぱいしてあげるよ?』


下卑た笑みを浮かべ、手にしたグラスを軽く揺らしながら、美奈子の腰つきをねっとりと眺める。脂ぎった顔に欲望を露わにし、ガニ股でゆっくりと彼女のダンスを邪魔しない低度に踏み込んだ。


川波康雄

『ガハハ!いい身体してんなぁ、お嬢ちゃん。見てるだけでこっちまで熱くなってきちゃうな。』


太い指で自分の唇をなぞり、品定めするように彼女の胸元へ視線を這わせる


川波康雄

『どうだ?オジサンがたっぷり可愛がってやろうか。お前のその生意気な口、俺のので塞いでやりたいねぇ。』


音楽に合わせて激しく腰をくねらせながら、康雄の視線を正面から受け止める。挑発的に舌先で上唇をなぞり、わざとらしく上目遣いで彼を見上げた


美奈子

『ちょ、マジで直球すぎっしょ!おじさん、そういう強引な感じ、ウケるんだけど。』


わざと彼に触れそうな距離まで身体を密着させ、小麦色の太腿を彼の脚にゆっくりと擦り付ける


美奈子

『でもさ、あたしを満足させる自信、あんの?ただの「おじさん」だったら、あたし、速攻で飽きちゃうし。』


重低音が響くフロアの中、二人の間に火花が散るような緊張感が走る。周囲の男たちが、新入りの康雄がこの奔放なギャルをどう手懐けるのか、あるいは跳ね返されるのかを、期待に満ちた視線で見守っていた。


さらに激しく腰を突き出し、誘惑的に身体を波打たせて彼を翻弄する。絶頂の予感に瞳を濡らしながら、耳元で囁くように問いかけた


美奈子

『ねぇ、どうする?あたしと最高にエロいことして、ランキング爆上げしてくれるわけ?……それとも、口だけのおじさんで終わる感じ?』


脂ぎった顔をにやりと歪め、声音には年収に見合った傲慢さと、女を金で買い慣れた余裕が滲んでいた


康雄

『俺は川波康雄だ。まあ、ビジネスの世界じゃそれなりに名前が売れてるし、年収だって十分すぎるほどある。』


美奈子の腰辺りに、ねっとりと手を回そうとして指先を這わせる


康雄

『今夜、初めてここに来たが、お前みたいな極上の素材は久しぶりだ。金もテクも、俺は、たっぷり持っとる。』


激しく腰を振っていた美奈子が、ふっと動きを止める。彼女は康雄の手を軽やかにかわすと、傍らに控えていた黒服のウェイターからクリスタルグラスをひょいと奪い取った。冷えたカクテルがグラスの中で揺れ、氷のぶつかる音が心地よく響く。


カクテルをゆっくりと啜り、視線だけを康雄に向けてじっくりと品定めをする。その瞳は、獲物を狙う肉食獣のように鋭く、同時に退屈さを隠そうともしなかった


美奈子

『へー、川波さんね。凄そうだけど……。』


グラスの縁を舌先でゆっくりとなぞり、挑発的に微笑む。


美奈子

『てか、あたしが求めてんのは、あんたが口で言うほど「デキる男」なのか、あたしが納得できる証拠、見せてくれるわけ?』


不敵な笑みを浮かべると、迷いのない手つきで海道グループ指定のブリーフをずらし、猛々しく反り上がった自らの凶器を惜しげもなく晒した!


康雄

『ガハハ!どうだ、お嬢ちゃん。』


誇らしげに腰を突き出し、血管が浮き出た太いソレを美奈子の目の前で誇示する


康雄

『口先だけじゃねぇこと、今から体に叩き込んでやるよ。』


目の前に突き出されたそれは、55歳という年齢からは想像もつかない、凶悪なまでの太さと硬さを備えていた。美奈子の視界を支配する圧倒的な質量に、周囲の空気さえもが重く沈み込む。


余裕たっぷりに構えていたはずが、予想外のサイズに思考が停止し、呆然と口を開ける。喉の奥が渇き、無意識にゴクンと生唾を飲み込んだ


美奈子

『……ちょ、マジで……?』


空虚な表情のまま、目の前の巨大な質量を凝視し、本能的に身体が熱くなるのを感じる


美奈子

『うそっしょ、このオッさん……こんなもん隠してたわけ?……やば、あたし、ちょっと本気で欲しくなっちゃったし。』


挑発的なギャルとしての仮面が剥がれ、純粋な雌としての飢えが美奈子の瞳に宿る。男の圧倒的な「武器」を前に、主導権が静かに、だが決定的に康雄へと移り変わった瞬間だった。


目を丸くして凝視していたが、すぐに不敵な笑みを戻し、白くしなやかな指先をその太いソレに添える。自分の手のひらでは到底包みきれない圧倒的な太さを確認し、わざとらしく溜息をついた


美奈子

『ちょ、マジでエグいし!あんた、なんで?そんなにちょー自信満々なわけ?』


指先で、先端の先をツンと突き、わざと挑発的に視線を上げる


美奈子

『いいよ、合格点。おじさんにしては最高にイケてるし。……あたしが、その生意気な竿をトロトロに溶かしてあげる。』


美奈子がゆっくりと膝をつき、フロアの冷たい床に身体を預ける。周囲の男たちの視線が、彼女の献身的な姿勢に集中し、期待と嫉妬が混ざり合ったどろどろとした熱気が辺りを包み込んだ。


口端を吊り上げ、舌先で唇を濡らす。喉を鳴らして、目の前の巨大な質量に顔を近づけ、深い吐息を吹きかけた


美奈子

『ん……いい匂い。ねぇ、ちゃんとあたしのテクに耐えられるわけ?泣いてお願いしても、途中でやめてあげないからね。』


頭上から見下ろす美奈子の挑発的な表情に、さらに腰を突き出し、低く濁った笑い声を上げる


美奈子

『ガハハ!やってみろ。お前のその生意気な口が、快感でどうなるか楽しみだ。』


フロアの喧騒の中、一際目を引く牛柄のビキニハイレグに身を包んだ女、靖子が静かに観察する。彼女は腕を組み、美奈子が康雄のソレに挑む様子を、獲物を分析する猛禽のような鋭い視線で凝視していた。


太い指が美奈子の頭を強く抑えつけ、逃げ場をなくす。快感の波に打ち震え、余裕のあったはずの声音は見る影もなく、喉の奥から情けない喘ぎ声を漏らした


康雄

『くっ……!あぁっ!お、お前……っ!何をした!』


腰がガクガクと震え、快楽に翻弄されて身体が不自然に跳ねる


康雄

『止めるな……っ!そのまま、もっと……!』


康雄が悶絶する様子を至近距離で見上げ、瞳に小悪魔的な愉悦を宿らせる。わざと先端だけを舌先でクイと弾き、絶頂まであと一歩というところで吸い付きを緩めて、じらして彼を虐めた


美奈子

『あはっ、いい声!おじさん、さっきの自信はどこ行ったわけ?』


わざとらしく口端から涎を垂らし、挑発的に舌を出し入れして、再び深く、だがゆっくりと、じっくりと快楽を刻み込むように吸い上げた


美奈子

『んむぅ……!ほら、もっと鳴いてよ。あんたが情けなくなるまで、あたしが全部コントロールしてあげるし。』


(余韻に浸る間もなく、快感に突き動かされた瞳に昏い情欲を宿らせる。美奈子から強引にソレを引き抜くと、涎の糸が白く伸びた。そのまま彼女の腕を掴んで乱暴に床へ押し倒し、自身の太い質量を狙い定める)


康雄

『いい気分にさせてくれたな、美奈子!だが、ここからが本当の教育だ。』


一切の躊躇なく、最奥まで一気に突き刺す。お互いが激しくぶつかり合う鈍い音がフロアに響いた


康雄

『生意気な!その身体に刻み込んでやるよ!』


不意に訪れた凄まじい充満感に、背中を大きく反らせて絶叫に近い声を上げる。内側から押し広げられる感覚に呼吸を乱しながらも、瞳にはまだ挑発的な光を失っていない


美奈子

『あぐっ……!ふぁっ……!ちょ、マジで……っ!』


激しく揺さぶられる中で、わざと脚を彼の腰に強く絡め、爪を背中に食い込ませる


美奈子

『いいよ……っ!もっと激しくしてよ!おじさんの全力、まだ全然足りないし!あはっ、もっとあたしをめちゃくちゃにしてみなよ!』


周囲の男たちが、その野生的な合体の衝撃に息を呑んで見守る。激しく打ち付けられる音と、美奈子の高飛車な喘ぎ声が混ざり合い、フロアの温度がさらに跳ね上がっていく。欲望が飽和した空間で、二人の肢体は汗にまみれ、獣のように激しく絡み合った。


康雄の荒々しい声と、美奈子の高飛車な喘ぎが、フロアの中央でぶつかり合っていた。


周囲の男たちは、ただ欲望に呑まれているだけではなかった。


見ていた。


評価していた。


この女が、どこまで耐え、どこまで魅せ、どこまで場を支配できるのかを。


美奈子は追い込まれていた。

だが、負けてはいなかった。


汗で濡れた肌、乱れた髪、震える脚。

それでも唇だけは強気に歪んでいる。


美奈子

「はぁっ……はぁっ……なに、本気出してそれ? あたしを教育するんでしょ……? だったら、もっと会場ごと沸かせてみなよ……!」


康雄の目つきが変わった。


その瞬間、フロアの空気が一段濃くなる。


康雄

「言ったな、美奈子。後悔するなよ」


次の瞬間、美奈子の身体が大きく跳ねた。


息が詰まり、声にならない声が喉の奥から漏れる。

しかし彼女は、崩れ落ちるどころか、逆に康雄の背中へしがみついた。


まるで、獣のような男の勢いすら、自分の舞台演出に変えてしまうように。


美奈子

「あっ……はぁっ……! いいじゃん……っ! やっと、ちょっと面白くなってきた……!」


その言葉に、観客がどよめいた。


ただ耐えている女ではない。

ただ乱されている女でもない。


美奈子は、康雄の荒々しさを受けながら、それを自分の色に染めていた。


レゲエのリズム。

挑発的な笑み。

高飛車な声。

汗と照明に濡れた褐色の肌。


フロアの一角は、完全に斎藤美奈子のステージになっていた。


その時、巨大モニターの数字が動いた。


【斎藤美奈子 評価上昇中】


現場男性票、急増。

リピート希望票、急増。

VIP観覧席からの加重点、追加。


ざわめきが走る。


黒服の一人が、無線で低く告げた。


黒服

「美奈子、票が跳ねています。下位圏外から、50位争いに食い込む勢いです」


別の黒服が、モニターを見ながら息を呑む。


黒服

「単なる派手な女じゃない。場を奪っている。康雄を相手にして、逆に自分の商品価値を上げている」


美奈子はその声を聞いたわけではない。


だが、フロアの空気が変わったことは、本能で分かっていた。


自分が見られている。

評価されている。

値段が上がっている。


その感覚が、美奈子の目にさらに危険な光を宿らせる。


美奈子

「あはっ……皆、見てる? あたし、まだ終わってないから……!」


その叫びに、観客の欲望が爆発する。


男たちの歓声。

女たちの嫉妬。

黒服たちの無言の評価。

VIP席の視線。


そのすべてが、美奈子という女へ流れ込んでいく。


そして――。


少し離れた位置で、その一部始終を見ていた女がいた。


藤野靖子。


牛柄の際どい勝負服に身を包み、腕を組んだまま、微動だにしない。


彼女の瞳は、欲望に濁っていなかった。


鋭かった。


冷静だった。


美奈子の表情。

康雄の力の出し方。

観客の反応。

票が動く瞬間。

どこで声を上げ、どこで耐え、どこで挑発し、どこで自分を商品として輝かせたのか。


靖子は、そのすべてを見ていた。


靖子

「……なるほど」


小さく呟く。


美奈子は強い。


ただ身体が派手なだけではない。

ただ男に強く出られるだけでもない。


追い込まれた瞬間に、観客の視線を自分の味方につける。

相手の荒々しさを、逆に自分の見せ場へ変える。

苦しさも、乱れも、声も、全部まとめて票に変えている。


靖子の太腿に、無意識の力が入った。


それは嫉妬ではない。


劣情でもない。


もっと硬く、もっと静かなもの。


競技者が、強敵の技を見た時の震え。

武道家が、本物の一撃を目撃した時の高揚。

鍛え上げた者だけが分かる、闘志の目覚めだった。


靖子

「美奈子サン……。でも、凄い」


靖子は素直に認めた。


認めたうえで、目を細める。


靖子

「でも私は、ああいう勝ち方じゃない」


靖子の指先が、自分の腹筋に触れる。


呼吸を整える。

心拍を鎮める。

乱れそうになる身体を、意志で抑え込む。


美奈子の強さは、野性と場の支配。

観客を巻き込み、男を煽り、自分の乱れすら武器にする強さ。


だが靖子の強さは違う。


鍛えた身体。

制御された呼吸。

相手を観察する目。

限界の中で姿勢を崩さない精神。


そして、相手の技を見て、自分の武器へ変換する学習能力。


靖子

「美奈子。あなたのS○Xは、確かに票を動かす」


靖子の目に、静かな炎が宿る。


靖子

「でも私は、票だけじゃ終わらない。身体ごと、空気ごと、相手ごと、全部支配する」


その瞬間、靖子の中で何かが切り替わった。


これまでの靖子は、まだ迷っていた。


この会場の欲望。

女たちの争い。

男たちの視線。

ランキングという異常な仕組み。


それらを、どこか自分とは別の世界として見ていた。


だが今、美奈子を見て理解した。


ここは、ただ脱がされる場所ではない。

ただ男に選ばれる場所でもない。


鍛えた身体、呼吸、精神、技、表情、間合い、声。

そのすべてを使って、女が女として勝ちに行く戦場なのだ。


靖子の唇が、わずかに笑った。


靖子

「面白いじゃない」


その声は低く、静かだった。


だが、近くにいた黒服が思わず振り返るほど、凄みがあった。


靖子は美奈子を見下していない。

響子のように計算で見ているわけでもない。

アスカのように演出家として分析しているわけでもない。


靖子は、真正面から受け止めていた。


斎藤美奈子という女の強さを。

そして、その強さを超えるために、自分が何を磨くべきかを。


巨大モニターでは、美奈子の票がさらに上がっていく。


【斎藤美奈子 急上昇】

【50位圏内候補】

【現場熱量評価:高】

【男性リピート希望:上昇】

【観客支配力:再評価】


会場が沸く。


美奈子はその中心で、勝ち誇るように笑った。


美奈子

「あはっ……! 見た!? これが、あたしのやり方だから!」


その声を聞きながら、靖子は一歩だけ前に出る。


誰にも気づかれないほど小さな一歩。


だがそれは、藤野靖子という女が、欲望の舞台へ本当の意味で踏み込んだ一歩だった。


靖子

「次は、私が見せる番ね」


美奈子の票数が跳ね上がる中、靖子の中では別の数字が動いていた。


筋肉の使い方。

呼吸の配分。

視線の置き方。

観客の温度。

相手の力を受け流す角度。

乱れを美しさへ変える方法。


すべてが、靖子の中で組み直されていく。


美奈子のS○Xは、靖子に火をつけた。


欲望ではない。


敗北感でもない。


藤野靖子の奥底に眠っていた、ストイックな闘志。


鍛えた身体で、女としての戦場に立つ覚悟。


その炎が、静かに、しかし確実に燃え上がっていた。




【登場人物紹介】


■藤野靖子

スポーツトレーナーとして鍛え上げた肉体と、冷静な観察眼を持つ女性。

華やかな会場の中でも流されず、相手の動きや空気を読み取り、自分の成長へ変えていくストイックな精神性が特徴。


■西園寺アスカ

海道グループの舞台を見極めるAVプロデューサー的存在。

出演者の魅力、会場の流れ、観客の反応を冷静に判断する目を持つ。華やかさの裏で、場全体を管理する重要人物。


■佐伯鈴香

海道勝に仕える筆頭秘書。

表向きは落ち着いた実務担当だが、判断力、調整力、危機管理能力に優れ、海道グループの裏側を支える存在。


■高山響子

美貌、知性、資金力を兼ね備えた女性実業家。

華やかな雰囲気の中にも冷静な計算を秘めており、会場内でも独自の存在感を放つ。


■斎藤美奈子

派手な見た目と強気な性格を持つ女性。

レゲエ調のノリと挑発的な振る舞いで、自分の空間を作り出すタイプ。勢いだけではなく、場を盛り上げる力も持っている。


■川波康雄

荒々しい存在感を持つ55斎藤の男性参加者。

美奈子との場面では、その強引な迫力によって会場の空気を一気に変える役割を果たす。

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