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閑話 小旅行

 ウェスティニアから帰ってきたリリエルは、ゲーム内の機能でブラウザを検索している。

「どこか、羽を伸ばせるところがあれば良いのだけれど」

 そんな独り言が漏れ聞こえてくるほどにはリラックスしていた。


 そんな時、1つの記事が目に留まる。

(『セントレイア南方温泉』?まあ、クリスに聞こうかしら)

 思い立ったが吉日と、クリスを呼ぶとすぐに入ってくる。


「クリス、セントレイアの南に温泉が湧き出ているらしいのだけれど、クリスは行ったことあるのかしら?」

「会頭、温泉とは温かい水が湧き出てくる泉で間違いございませんか?」

 温泉はクリスには──この世界の人々には馴染みのないもののようで、確かにウェブサイトの記事は未だ整備されていない様子が映されていた。


「ええ、その温泉よ。今度行こうかと思ったから、少しでも調べようと思ったのよ」

「それでしたら、あまりお勧めできません。温かい泉は物珍しくはありますが、強い臭いがあります」

 クリスはあまり温泉に良い印象を持っていないようだ。


「そう、それは良いことを聞いたわ。やはり今度、行くべきね」

「そうですか。会頭がどうしてもということであれば止めはしません」

「ええ、行ってくるわ」


* * *


 後日準備をして、リリエルは単身で温泉へ向かっていた。

「ドレミに聞いていたけれど、本当にエネミーが少ないわね」

 戦闘がないとはいえ、急斜面もある山登り。疲れないはずがなく、所々休憩しながらリリエルは温泉を目指して登っている。


「それにしても、この辺りまで臭ってくるなんて」

 目的地までまだ10分ほど歩かなければいけないが、それでも臭ってくる硫黄のような臭いに、リリエルは商機を見出していた。


 しばらくして目的地に到着すると、そこには数人のプレイヤーがいるだけで、NPCは誰一人としていない。

 リリエルも他のプレイヤーたちにならって入浴着に着替え、温泉へ浸かる。決して広くはない温泉だが、知名度のためか誰もリリエルの側に寄ってこない。


「沁みるわ」

 無言で15分ほど入浴したリリエルは、満足とばかりに温泉から上がり、元の衣装へ換装した。

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