31話 魔石が欲しい
アイテム召喚を行ってから2週間が経過した。
結局、世界樹については地下の拠点近くに植えて、毎日欠かさず、ジョウロに入った植物成長促進剤を与え続けている。
植物成長促進剤の効果は凄まじく、たった2週間しか経っていないにも関わらず、高さ30cm程しかなかった苗が、高さ1m程になっており、幹の太さも二回り程太くなっている。
どこまでの高さや太さまで成長するのかはわからないが、このペースのまま成長すれば1年で18m位の高さまで成長しそうだ。
高さ18mだと6階建てのマンションくらいの高さだから、かなり大きくなると思われる。
結界の範囲も半径20m程にまで拡がっており、安全な敷地がかなり増えたので、もう少ししたら地上に家等を建てていきたいところでもある。
世界樹の栽培以外にも新しく導入された【冒険】や【クラフト】システムを活用して素材を集めたり、色々なものを作ったりもした。
【冒険】システムでは、素材を採取していた際に1体のオークと遭遇したことから、3Dモデルの性能を試すために戦闘を仕掛けてみた。
結果は瞬殺。
まあ、やられたのは俺の方だけど……
正直、オークを舐めてました。
前回は土魔法で簡単に倒せたので、脅威度3だということを忘れて初心者防具に身を包んだまま、鉄の剣で突撃。
鉄の剣では分厚い脂肪に刃がほとんど通らないうえに、思ったよりも素早い動きで棍棒を振るわれ、3Dモデルは一撃でやられてしまった。
本当に生身の時に近接戦で戦わなくてよかったわ。普通に死んでたかもな。
今後も生身の時は基本的に安全第一で【隠密】スキルで気配を隠しながらの遠距離からの不意打ちに限るな。
しかし、土魔法による石の杭では串刺しになるのに、鉄の剣を防ぐのは不思議だよな……
一応、魔力で硬質化や先端を鋭利にはしているからそのおかげか……
とりあえずオークみたいに見た目と違って素早い動きをする魔物や思わぬ攻撃をしてくる魔物もいるかもしれないから、今後初見の魔物を相手にするときは3Dモデルで戦闘してみて、動きや攻撃方法を確認するようにしよう。
そうすれば予想外の一撃で死ぬ危険性も低くなるだろう。
まあ、やられっぱなしは癪なので、オークには3Dモデルの操作の練習相手として近接戦でそのうちリベンジだな。
ちなみに【冒険】の際に、3Dモデルにアイテム召喚で手に入った《鉄の斧》を持たせて、木を伐採してみたが、ゲーム補正なのか、5回程木を切りつけただけで、何故か木が消滅して《木材》や《木の枝》等の素材に変換されてしまった。
一応、自分でも普通の斧として使ってみて、木の伐採に挑戦してみたが、そもそも力が弱いのか、それとも木と刃の当たる角度が弱いのか分からないが、木の表面に傷をつけることはできたが、全然切り倒せる気がしなかったので早々に諦めた。
いやー【冒険】の仕様はまじで助かる。
普通に木を伐採するとか俺には無理だったわ。
【冒険】で伐採してしまうと、普通に伐採するよりは、少ない量しか素材が得られなくなるけれども、それ以上に効率が良すぎるので、今後、木の伐採に関しては【冒険】での採取一択だな。
【研究】についても、1週間前に《転移結晶》の研究が終わり、製作するのに必要な素材がわかった。
《転移結晶》を製作するには《魔石(中)》10個が必要であり、他に特別必要な素材は無かった。
《魔石(中)》であれば脅威度4の魔物から採取できる上に、脅威度3以下の魔物から採取できる《魔石(小)》10個を合成させても入手することができる。
地味に魔石を集めるのは大変かもしれないが、特別な素材を入手できなくても製作できるようなっていてありがたい。
思っていたよりも気軽に【移動】を活用できそうだったので、ポメラ達とともに食料調達も兼ねて魔石を入手するために日々魔物狩りに勤しんでいる。
倒した魔物としては、オーク十数体の他に、まだ出会ったことがなかった、二足歩行のトカゲの見た目をしているリザードマン、巨大な雀蜂であるギガホーネット、木に擬態していたトレント、歩く毒きのこのポイズンファンガス、睡眠効果のある鱗粉を撒き散らす巨大蛾のナイトメア等多岐にわたる魔物を多数倒した。
倒し方はほとんど一緒で土魔法で囲った後に生き埋めにするか串刺しにするかだ。
これらの魔物は全て脅威度3の魔物であり、脅威度4の魔物には以前倒したレッドグリズリー以来遭遇していない。
遭遇していないのは、魔境は奥に行けば行くほど土地の魔力が高くなるのか、強い魔物程、魔境の奥に生息する習性があるみたいだ。
そのため、拠点付近には脅威度3の魔物が多く、今より奥に行かない限りは脅威度4の魔物にはほとんど遭遇しないと思われる。
前に倒したレッドグリズリーみたいに、全くいないわけではないので注意が必要ではあるが。
脅威度4の魔物を倒せば《魔石(中)》を入手することはできるが、レッドグリズリーみたいに爪に炎を纏わせるなど、スキルっぽいものを使うことが多そうなので、戦闘向きのスキルが充実するまではあまり戦いたくはないので、魔境の奥に行くつもりはしばらくはない。
話が脱線してしまったが、《転移結晶》の【研究】が終わった後は《上級魔力回復ポーション》を【研究】した。
魔力を回復できるようになれば【創生】スキルで色々なものを多く創れるようになるし、戦闘においても魔力切れを気にすることなくスキルを使えるので優先した形だ。
これについても研究が終わるまでに1週間掛かり、先ほど製作方法が判明した。
製作には《満月草》という満月の夜にしか生えない薬草や《蒸留水》等の他に、また《魔石(中)》が必要であることが判明して呆然としてしまった。
くそっ……また魔石が必要なのか……
「あぁ〜魔石が欲しい……」
切実な願いを呟きながら、他のアイテムの製作にも魔石を使うかもしれないと思うと憂鬱な気分に陥った。
さすがに脅威度3の魔物だけを倒すのでは効率が悪いから、行くつもりはなかったが、もうちょっと魔境の奥に行って脅威度4の魔物を倒すしかないか……
いや……町に戻って魔石を購入すればいいのでは……
俺は妙案が思いついたとばかりに久々にフレスタの町へ戻ることを決意するのであった。




