ギルド長との再会
散髪屋と高級服店で何時も以上に可愛く成ったスチイを連れて食事処へと向かう。
隣を歩くスチイを見下ろすと、輝く金色の髪に少し広がりを見せる緑色系のワンピース、花で例えるなら、まるでタンポポの様に可愛い。
スチイはタンポポの綿帽子の様に俺に幸せを運んで来てくれた、そう思える。
見ていたら何となく頭を撫でていた、そしてスチイは俺の手を気持ち良さそうに受け入れてくれる。最高に幸せだ。
しばらく歩くと何時もの食事処が見えて来る、まだ昼前で客の少ない内に店内へと入り挨拶する。
カウンター席に程近い四人掛けのテーブル席に座った、この席は店主の顔も見れて調理で油の跳ねる音が心地良く聞こえて来る。
俺の隣にはスチイが座り、正面には姫様……ではなく若様が、はぁ。
何故と文句を言いたい、男の顔を正面に見ながらの食事なんてと思ってしまう。
なるべく若様を見ない様にして、姫様とスチイを……と一緒に美味しく食べよう。
店内に料理名の書かれた表は有るが、俺は始めの頃しか見た記憶が無い。
スチイと自分の分を相談して、豚肉と卵に野菜、それとお気に入りのヒジキだ。
魚は食べらないし、体を作る為に動物性タンパク質の多そうな肉と卵にする。
但し運動もさせないと意味が無いので、気を付けてあげないといけない。
姫様と若様は料理名の書かれたメニューを見て考えているので、声を掛けてみる。
「若様は角の有るモノ意外は平気でしたか?」
「好き嫌い無く何でも食べますよ」
「え? 何かの言い伝えでは?」
「国では角の生えた動物に親近感を抱く者が多く食べないだけで、特に言い伝え等は有りませんよ」
若様の言葉に少しの驚きと、大きな安心感を感じながらスチイの笑顔を目にした。
あぁ成るほどスチイは知っていたって事か、少し気にし過ぎた、最初からスチイに聞けば良かったのかもしれない。
声の出せない姫様は何かを若様に伝えて、若様が食事の注文をしている。
二人は心で繋がっているのだろうか? 俺には姫様が何を言わんとしたのか分らなかったが、若様には理解出来ているようで、まったく羨ましいと思う。
店主が料理を持ってテーブルに並べてゆく、俺とスチイの前には、それぞれ大きな厚切りベーコン二枚の上に目玉焼きが乗っている。
姫様には野菜中心に海藻類で、若様の前には肉や魚と二人前近い料理が並べらる。
「「「頂きます」」」「……」
皆で美味しい食事を食べ始める、二枚のベーコンの片方はカリカリに、片方は焦げ目も無くベーコンの油でツヤツヤな状態だ、二種類の食感を楽しめて、それぞれに美味しく本当に嬉い。
姫様の食事は質素だと思ったが、若様から肉を少し貰って食べている。
ゆっくり味わいながら食事をしていると、昼に成り幾人もの客が入って来て、その中には見知った顔が有り目が合ってしまい横を向く……、が気付かれてしまい此方に近づいて来る。
「ノーバン、帰ったなら顔を出せ!、話が有るんだ」
「あぁ……うん、待ってくれ」
もう少し先送りにしたかったが冒険者ギルド長に会ってしまった、と言うか見付かってしまったのだ。面倒だなぁ。
ギルド長は俺に声を掛けた後に、スチイを見て微笑み、姫様と若様を見て……固まってしまった、数秒後に再び動き出し姫様と若様に大きくお辞儀をして話しかける。
「お食事中の所すみませんが、ノーバンをお借りします」
「あっあぁ」
ギルド長の話に、若様が返事をしてくれるのは有難いが、どうせなら断って欲しかった。
ギルド長が直立不動で姫様と若様を、スチイと見比べる様に交互に見ている。
その間に俺は急いで食事を口の中に放り込んでいく、残すのは勿体無い。
俺だけ先に食事を済ませて、スチイには帰ったら筋トレをするように言ってから、店主に纏めてお金を払い、ギルド長と店を出る。
店を出ると俺のは手首を捕まれて、無言のまま冒険者ギルドに連れて行かれた。
ギルド長室に入ると、お茶も無しにドアは堅く閉ざされソファーに座らせられる。
「ノーバン! 今まで何をやっていた? あの二人は何だ? エルフの国に行ったんじゃなかったのか? 帰って来たのに何故顔を出さないっ!」
「ちょっと待ってくれ、今から説明する」
ギルド長はしばらくの間騒いで話にも成らない、どうやら一緒に居たのが竜人の若様と、人魚の姫様だと気付いてしまったようだ、徐々に落ち着いて来た所で俺も始めから話をする。
教会のシスターの依頼で少女を冒険者にして欲しいと言われ、スチイと名乗る可愛い少女に会った。
スチイは幼少の頃から苛めにあっていた、だが教会内でも苛めにあっている事に気付いた俺は、スチイと共に教会を飛び出し、冒険者のギルド長を訪ね手立てを探し要人リストに知人の名を見つける。
知人とはエルフの族長だ、早馬を依頼しようにも高く、自分とスチイでエルフの国を目指し族長を訪ね話す機会を得た。
エルフの族長の話でスチイの御両親が、竜人族の次期族長と人魚族の次期族長でまだ生きて居る事を知り、竜人族の国に向かう。
竜人族の国に入ったが国中の人が病気で、その原因調査をしながらスチイの父親の居る町を目指し旅をして、やっとの思いでスチイは父親に会う事が出来たが、父親も病気にかかっていた。
そしてスチイの父親に協力してもらい、病気の診断をして、ようやく病気の原因を突き止める事が出来て、ペンドラゴンとの交渉材料を得られる。
竜人族の現族長のペンドラゴンと交渉を始めた所で、人間族のアーサー王が現れ邪魔をしようとするも、エルフの族長が上手く話をつけて、若様を頂いた。
父親の次は人魚族の母親の国を目指して旅を始めるも、またしても病気が流行っていると言う事で、病気の調査を行いながら母親の居る町を目指す。
人魚族の病気は奇病と言われるもので、まるで原因が分らないままに母親の居る町に着いてしまうが、母親まで奇病に掛かっていた。
そしてスチイの母親を診察して、ようやく奇病の原因に辿り着き治療をするも、病人の人数も多く、それなりの日数を人魚族の国で過ごす。
その間に、人魚族の現族長とエルフの族長が交渉し、姫様も頂きスチイ達家族三人が一緒に過ごせる様に、スチイの周知活動もした。
そして人魚族の医師に治療法を教えて、再び医療? 物資を持って竜人族の国へと向かう。
竜人族の国では、医療物資を持って、スチイ達親子の周知と、人魚族との貿易の再開を現族長の言葉で民衆に伝えられた。
とまぁざっくりと話して帰ろうとした所で、まだ終わってないと呼び止められる。
「馬と鞍は如何した?」
「安心してくれ、宿屋に預けてある」
どうやら鞍が心配だった様だが、話はそれだけでは終わらなかった。
それから俺は延々と二時間位は、ギルド長の話を聞かさせられた。
俺と別れた後に隣町での嘘の情報の工作やら、町に戻ったら捕まって一週間も監禁された事等、色々と愚痴や文句を言われたが、下手な嘘の工作をしたからではないだろうかと思わなくも無い。でも、まさか本当に捕まるとは……。
何はともあれギルド長のお陰で良い旅が出来た事も確かだし、素直にお礼を言う。
話が終わった所で、ギルド長と一緒にスチイの泊まっている宿屋に向かった。
取り合えず鞍だけを渡そうと思ったのだが、そこでエルフの族長に会ってしまう。
「こんにちは族長」
「こんにちは、ノーバン」「こ、こんにちはで有ります」
俺と族長が軽く挨拶していると、隣で硬くなったギルド長が畏まって挨拶をする。
あぁそう言えば、エルフの族長が来ている事を言っていなかった様な気もするが、丁度良いと思い族長とギルド長をお互いに紹介した。
ギルド長は護衛が如何とか言っていたが、族長は特に気にしていない様だ。
そして別れ際、族長に呼び止められて、明日孤児院へ挨拶しに行こうと言われる。
急な申し入れでビックリしたが、スチイを勝手に連れ出してしまったのは俺だ、此の町で生活するなら挨拶に行かないと不味いだろう、族長が後ろ盾に付き合ってくれると言うなら逃す手は無い、俺は族長に頭を下げた。
族長と別れてスチイの部屋を訪ね、鞍をギルド長に返し二人でお礼を言ってギルド長を見送り、魔王、馬は後で厩舎へ連れて行くと約束する。
俺はスチイに明日の予定を話す。族長と一緒に孤児院へ行く事を。
少し不安そうなスチイを抱き締めて落ち着かせる、俺も不安だったがスチイを抱き締める事で少しは心が落ち着く。
明日は必ずスチイを守ると心に決めた。




