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身請け

ポイントを入れて下さった方、応援して下さる方、ありがとう!

今後も頑張って書いていきます。


奴隷の少女とは? 報酬はどうするのか?

 今朝は早めに起き、奴隷商へと向かった。

「おはよう、少し早かったか?」

「いえ平気です。お待ちしておりましたノーバン様」

 死に掛けの奴隷を俺に只で渡し、何を期待しているかは分らんが、奴隷商は笑顔だ。


「早速で悪いが見せて(もら)っても良いか?」

「はい、ご案内いたします」

 奴隷商の後を付いて行くと(おり)ではなく、奴隷は部屋に入れられていた。意外だ。

 思ってたより環境は良い様に思う。

 ある扉の前まで来て奴隷商はノックした。扉には三人分の名前の表札と大き目の覗き窓が付いている。


「はい、ただいま開けます」

 中から女性の声がし、扉が開いて、背の低い四十代位の女性が立っていた。


「ミディアムは居るか?」

「奥で()せっております」

身請(みう)け人が見つかった。連れて来なさい」

「はい、ただいま連れて参ります」

 連れて来るとは言っていたが、臥せっているとも言っていた。大丈夫だろうか?

 しばらくして先程の女性が、若そうな女性を連れて来た。が、後ろに隠れ、(うつむ)いていて顔は見えない。


「ミディアム、前に出なさい」

 後ろからミディアムと言われる女性が俯いたまま前に出た。


「ノーバン様にお(ゆず)りする奴隷のミディアムです」

 顔は俯いていて良く見えないが火傷の(あと)が少し見える。

 髪は濃い目の青色で、縮こまっていて身長はよく分らないが低くは無い様だ。

 胸にはメロンより大きいスイカ? スイカほどは大きくは無いが、形の良いパイナップルが二つ実ってる。メロンより大きいパイナップルの頭が俺の方を向いている形の良さだ。

 これだけでも足を運んだ甲斐が有ると言うものだ。


 少女と言っていたが神話になぞらえただけで、身長と持っている果物から、少女ではなく女性だとわかる。


「わざわざ済まないな。三時過ぎに改めて身請けに来る」

「では、戻りなさい」

 ミディアムは一言も話して無い気がする。

 やはり何か(あきら)めているのだろうか?


 奴隷が戻り、奴隷商と二人になってから、また話をする。

「悪い、今から見受けの準備をして来るから、これで旨い物でも食べさせておいてくれ」

「少し多いようですが?」

「あぁ他の奴隷にも振舞(ふるま)いだ、かまわないだろう?」

「さようですか。有難うございます」

 多めにお金を渡した。後は本人が食べるかどうかだ。

 俺は奴隷商を後にして、必要な物を買いに行く。


 歯ブラシ、包帯、下着、服、布団、夕食、小さい物から順に買っていった。

 下着は高級で魅力的な物を数枚買った。是非、身に着けて欲しい。

 しばらく部屋から出ないだろうから、服は部屋着的に安くてサイズ調整出来そうなワンピースを買い、 布団は柔らかさと肌触りで選んだら少し高くついた。


 食材が一番迷った。気力も体力も無さそうだから食べやすく栄養の多い物をと考え、牛乳と食欲が出た時の為に肉、野菜、魚も少し買い、主食にパンを買って一度家に持ち帰る。

 もう一度出て、牛乳に匹敵する完全栄養食の卵を買いに行く。

 卵は別にしないと割れてしまうから、二度手間だが仕方ない。


「卵を六つほど貰えるか」

「はい、少々お待ちを」

 店で卵を買おうと白髪交じりで腰の曲がった女性に声を掛けた。その女性の顔を見て驚いた。とても肌艶がいい。

 気に成る、他の外見と見合わない綺麗さだ、火傷を負った奴隷を身請けする事もあって、肌が綺麗に成る方法が気になる。


「お待ちどうさま」

「ありがとう。ところで肌が綺麗だけど何かしてるのか?」

 女性に聞いて良い物か分らないが素直に聞いてみた。秘密かもしれないが駄目元だ。


「あら、嬉しいわね。でも皆には秘密よ」

「秘密ですか?」

 皆には? 俺には教えてくれるのかな? 少し期待して待つ。

「本当は秘密なんだけど肌に気付いてくれた事が嬉しいから教えてあげるね」

「有難うございます」

「秘密はね卵よ……、卵の薄皮を使うの」

「卵の薄皮ですか?」

 その後、卵の薄皮の使い方を教えてもらい、また卵を買いに来る約束をして店を後にする。有益な情報を聞けた。

 薄皮を使うのに蒸篭(せいろ)が必要との事で買って帰る。


 家に戻り風呂の準備と料理の下ごしらえを終わらせておく。

 昼は食べてなかったので遅くなったがパンを牛乳で流し込む。

 時間が経つのが早い。三時までなら余裕だと思っていたが少し遅れた位だ。

 三時を過ぎてしまい、急いで奴隷商へ向かった。


「少し遅くなったが身請けに来た」

支度(したく)は出来ております」

「何か手続きは有るか?」

「手続きも済ませてあります。注意事項だけ宜しいでしょうか」

「聞かせてくれ」

「首輪は奴隷の証です、首輪に持ち主の認識票を付けて有ります。首輪は夜伽の時以外は外せない様に鍵をかけて下さい。奴隷が問題を起こした場合、首輪の有る無しで持ち主への処罰が全然違います。どうか御注意下さいませ」

「あぁ忠告感謝する」

 ミディアムを身請けし家に連れて帰る。


 家に帰ったらミディアムは掘りコタツに座らせ待たせて俺は風呂に入った。

 奴隷を先に風呂に入れるわけには、いかないからだ。

 季節柄、コタツとは言っても火は入れてないし布団も掛けてない。

 俺は風呂から上がり部屋着を着てミディアムに声をかける。


「ミディアム、風呂に入れ。上がったら此の下着を着けろ。替えの服もある」

「こ、この下着ですか?」

「あぁ他に無い。命令だ、着けろ」

「分りました」

 替えの服と下着を渡した。ミディアムが始めて話した気がする。

 命令とは言っても直接的な強制力は無い。但し命令を聞かない奴隷の行く末は想像にかたい。間接的な強制力とでも言ったところだ。


 下着は高級で魅力的な物だ。喜んでくれると思ったが、喜ぶのは俺だけらしい。

 ミディアムが風呂に入っている間に夕食の準備をする。何を食べるのか分らないから少しずつ調理した。食べたくなくとも牛乳くらいは飲めるだろう。

 牛乳は一度煮沸(しゃふつ)した物を冷まして用意した。


 ミディアムが風呂から上がってきた、頭にはタオルを巻いている。

「食事の準備は出来てる。座りなさい」

「今日から俺がミディアムの主人ノーバンだ。よろしく頼む」

「よろしくお願いします」

 俯いたままで必要最小限しか話もしない。少し心配に成って来た。

 火傷を見られたくないのは分るから、俺も今は何も言わない。


「食事にしよう」

「「いただきます」」

 量は少ないが一応食べてくれた。少しでも元気になれば良いが。

 俯いたままで容姿が全然わからん。


「「ご馳走様です」」

「食器は台所で水に漬けておいてくれ」

「はぃ、わかりました」

 水に漬けるよう言ったのだが洗って片付けて歯も磨いてきたようだ。

 風呂も長かったけど女性だからと思ったが、どうも一緒に居たくないとかの時間稼ぎに思えてきた。

 戻ってきたので座らせる。


「ミディアム、服を脱いでくれるか」

「ここで服を脱ぐんですか?」

「あぁここでだ。いや何もしないから火傷の状態を見るだけだ」

「……はぃ」

 ミディアムは服を脱ぎ下着に成った。恥ずかしそうに下着の上に手を当てている。

 せっかく魅力的な下着なのだから良く見せて欲しいものだ。

 奴隷の首輪を外してみる、首輪が当たるせいか酷く化膿している。

 鉄の首輪の当たる部分は火傷をしてない部分も酷く赤くなっている。

 アレルギーも有る様な感じだ。


「今から俺がする事、ミディアムが見る事は誰にも言ってはいけない。命令だ!」

「……はぃ?」

 俺は治癒魔法の準備をする、治癒魔法は通常、軽い()り傷を止血できる程度の物だ。

 普通は命の魔石を使うだけで何の工夫もしないので治癒効果が低いのだ。


 俺は太い針を自分の血管に刺し、お茶碗に少量の血を溜める、その血で右手の掌と甲に魔法陣を書く。手を透過したかのように手の甲には逆文字で書く。

 魔法陣は三角の中に円を描き、中心に命、円の外の三角地に光、音、水の魔法陣を書く治療用の魔法陣だ。

 魔法陣に合わせて命、光、音、水の魔石を手の甲に乗せ手ぬぐいを巻いて固定した。普段は使わない魔法だ。間違いが無いか再確認した。


「少し痛かったり、(かゆ)くなったりするが我慢するんだ」

「はぃ?」

 まあ治療するとは言ってないし、医者にも教会にも見離される重症だ。医者でもない俺が治療すると言っても信じないなら言っても言わなくても一緒だ。

 治療してから見せた方が説明が(はぶ)ける。


 包帯を短く切って重ね、ガーゼの代わりにした物を、化膿(かのう)(うみ)の出ている箇所に当てて右手をかざし魔力操作で魔石を操る。

 音の魔石で膿を飛ばし腐りかけの部分は破壊した。

 光の魔石では殺菌し、水の魔石で命の魔石を補助し皮膚の再生を(うなが)した。


 ミディアムは痛いのか痒いのか分らないが、苦しそうに小さく(うめ)き声をあげていた。

 一箇所だけだが五分位治療し、一休みだ。ガーゼを外して見る


「ミディアム痛かったか?」

「はぃ、痛いし痒かったです」

 正直と言うべきか、なんとも治療しにくい。

 洗面所から鏡を持って来て渡す。


「でも、その甲斐有って少しは良くなっただろう?」

「はぃ、少し」

 なんとも正直だ。少しづつしか治せない。一気に治そうとしたら痛みと痒みで我慢出来ないだろう。

 俺は少し考えてお酒で麻痺させようと思い、ブランデーにシロップを少し混ぜ濃い目の水割りを用意する


「ミディアム、このお酒を飲みなさい」

「お酒ですか?」

「あぁ少しは痛みが和らぐはずだ」

「はぃ」

 お酒を飲ませた後、六箇所程の治療をした。

 魔石は半分しか使ってないが、ミディアムが苦しそうなので止めた。

 魔石は中途半端に使うと、魔力が抜けて行き無駄になってしまうが仕方ない。


「今日は終わりにして寝ようか」

「……」

「あぁ部屋着を着ていいぞ」

「はぃ」

「おやすみ」

「……」

 よく分らん、もう少し話してくれると理解も出来るのだが。

 今日は俺も疲れた。寝よう。


 朝起きて顔を洗い軽く体をほぐした。


 朝食と卵の薄皮を使えるように準備だ、生卵を綺麗に洗い上げ手ぬぐいで水気をふき取り、四つをどんぶりに中身を出す(から)は別のどんぶりに入れる。

 溶き卵にしてフライパンで焼いたら皿に載せて、使ったどんぶりを(ふた)代わりに被せて置く。

 卵の殻の入ったどんぶりと蒸篭(せいろ)を持って広間の掘りコタツに上に置き、竹のピンセットと針を持って台所で洗い、堀コタツへ行き卵の薄皮を剥がし、蒸篭に乗せていく。

 雑に手早く剥がしたつもりでも、終わる頃にはミディアムが起きたようだ。

 蒸篭を台所の棚の一番上に片付けた。 

 どんぶりもピンセットも片付け、卵焼きを蓋をしたままコタツの上に置き、コップに煮沸した牛乳を入れる。

 昨夜の残りのパンも出す。


「おはようミディアム」

「おはようございます」

 挨拶はしてくれるようだ。ミディアムは顔を洗い戻ってくる。


「座って食事にしよう」

「はぃ」

 食事を食べた後、ミディアムに留守番を頼み食材を買ってきた。


「俺は出かけて来るから、家事を頼む。食材は自由に使って良いから自分で食べてくれ。夕方には戻る」

「はぃ」

「それから、外には出るなよ。台所の水瓶(みずがめ)に井戸水は()んである」

「はぃ」

「水は生で飲むなよ、一度沸かしなさい」

「はぃ」

 全然元気が無い。出かけて良いものか不安になってくる。

 少しずつ治療して話しかけていくしかないか。

奴隷の女性を救う事が出来るのか?

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