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贈り物の意味と想い

 スチイにネックレスをプレゼントした後、早めにお城へと帰って来た。


 それでも昼食までには、魔王の砂や海水が付いた馬体を洗うだけの時間しかなかった。濡れた馬体を乾かす時間は無く、タオルを何度も絞りながら水を拭き取って、後は厩舎の係りの者に魔王の事を頼んだ。


 魔王と別れて二人でお城に入り、廊下の突き当り分かれ道でスチイの肩に手を置いて軽く引き止めた。俺は正面に回り込み、一度両手を肩に乗せ少し腕を下ろし両の二の腕を軽く(つか)み、少し(かが)む様にしてスチイに目線を合わせて今一度言った。


「スチイ、良く似合ってるよ」

「ありがとう、大切にするね」

 見つめ合っていたスチイが、俺の言葉を聞いて一度視線を胸の真珠に向けてから、また目線をを合わせて微笑みながらお礼を言ってくる。

 大切にするのも良いが、大切にし過ぎて仕舞い込む様な事はして欲しくない、我侭かもしれないが毎日身に着けて欲しいと思う。


「今日は楽しかったよ、スチイ」

「……ノーバン様……また一緒に……デートしょぅ」

 一時の別れの挨拶代わりに、今日の午前中に感じた素直な気持ちを伝えたら、スチイは何かをポツポツと言って、最後は早口で、しかも尻窄(しりすぼ)まりに声が小さくなり、よく聞き取れなかった、言い終わるとスチイは逃げる様に走り去ってしまった。


 何て言ったのか聞き返す事も出来ずに、スチイの声を思い出す様に心の中で何度も繰り返す。

 始めにまた名前呼びされたがお城の中だから? と考えている時に『また一緒に』と聞こえて来て我に返った後、スチイが何て言ったのか?

 よく聞き取れなかったが「デートしよ」って聞こえた気がした、スチイが俺とデートなんて言うだろうか?

 テトネーション? ディテンション? ないな。やはり『デートしよ』と言ったのだろうか?

 そうか!俺が朝スチイを誘った後に、両親にその話をしてデートとか、からかい半分に言われたのかもしれない、それを素直に受け止めたとかだろう。多分。

 魔王も連れて行くと言ったから、デートと一緒に遊ぶ事が同義だと思ってる節が有るが、今はデートと言う言葉を嬉しく受け取っておこう。


 昼食の席でエルフの族長がニコニコしながら、話し掛けて来た。


「ノーバン、デートは楽しかったかしらね?」

「……エッ?」

 族長は今何て言った『デート』? 何処で俺達の話を聞いているのやら、それともスチイにデートとか言ったのは御両親ではなく族長かぁ? 人をからかうのが好きな族長なら、やりそうな気がする。そう思って、つい族長を(にら)んでしまった。


 昼食後は少し休んでから病院へ行く準備して、馬車の止まる庭に行った。


 今日は人が多く女王様に姫様と若様も居るが見送りらしい、スチイやエルフの族長より一歩控えて立っている。


 スチイは午前中とは違う服を着ている、上は白で前合わせのシャツだが生成り生地だろうか?若干茶色掛かっている。少し深めの丸首に(そで)(ひじ)上で一旦絞られて再び少し広がりを見せ、手首より一握り手前から白く細い腕をさらけ出している。

 下は薄茶色のスカートだが、腰より随分高めの鳩尾(みぞおち)の辺りに太いの帯紐で留められて、前でリボンを作りスチイの可愛さを引き立てている。

 リボンの輪は控えめな大きさで、端はお腹辺りまで垂れ下がり、いかにも俺に解いてくれと言わんばかりの姿だ。


 帯で留められたスカートは、帯下から軽いヒダが(すそ)へ向かいながら緩やかに開いてゆく。

 帯元はお腹で締める時ほど絞り込まれておらず少し幅が有る、裾も肩幅位に自然な広がりを見せて無理な広がりはしていない。

 少し高めの位置に着せられたスカートにより、程よく体の線が隠され、それが逆に妙な色っぽさを(かも)しだしている。

 スカートの丈は少し短く、スチイの健康的な足が(すね)の中程から見えて動き(やす)そうで有ると共に、俺の目を引き付けてしまう。

 良く見るとスカートは二重に成っていて、裾近くは外側の生地が短く途中で終わり、内側の生成りの生地がコブシ一つ分見えていて、下着を見ている様で欲情的な気分に成り、健康的で動き易さの中に大人の雰囲気が入り込んでいる。

 靴下は薄く短い物で可愛い踝が(くるぶし)見えて、靴も合わせて足を覆う側面の高さは低いが、踵は(かかと)指二本分位高く少し細く成った物を履いている。


 そして頭にはツバの短い麦藁帽子を被り、首には白銀に輝く細い鎖に胸元では青い真珠が輝いている。麦藁帽子も今日の服に似合っていて、胸のネックレスは少女を少しだけ大人の女性に見せている。


 今日のスチイは何時もにも増して綺麗に見える、可愛さを残しつつ美しさを兼ね備えた姿で俺を魅了する。

 今のスチイがスカートの裾を少し持ち上げて、蔑む(さげす)様な目で見ながら何かを踏んだなら、とても良い絵になるだろうと想像せずには居られない。


 スチイの魅力にしばらく見惚(みと)れていたが、我に返りスチイの前まで歩み寄り、静かに腰を落として膝を着く、そして右手を左胸に当てて頭を一度下げてから目線を正面のスチイのお腹に当たりに戻し、見上げる事はせずに、左手を前に出してお声を掛ける。


「スチイお嬢様」

「……」

 何の反応も無いのでチラリと見ると、スチイは目を丸くしている、驚いているのだろうか?そんなスチイに若様が近付いて耳元で何かを囁い(ささや)た。

 スチイは若様に一つ頷き(うなず)一度姿勢を正してから、俺の左手の上に自分の右手を軽く乗せて一言。


「ありがとう」

「勿体無いお言葉、スチイお嬢様」

 左手に乗せられた小さな手を取ると、俺はゆっくりと立ち上がりスチイに向きを合わせる様に隣に立って、軽く手を引きながら若様と姫様に向き直る。

 スチイは見上げて俺の顔を見ると、コテンッと可愛く首を傾げる、困っているスチイに代わり俺が先に口を開く。


「では行ってまいります」

「……お父さんお母さん……、行ってまいります?」

 スチイに見本を見せる様に、少しゆっくり目に頭を下げながら、若様と姫様に挨拶をした。それに習ってスチイも挨拶をする、最後は自信無さそうに語尾が上がってしまったが可愛いから何も言えなかった。


 凄く恥かしかったがお嬢様のエスコート兼、護衛の役を演じてみた、お城と言う場所に今日のスチイの美しい立ち姿に、その周りを囲む顔ぶれを見て、今後のスチイの為に成ると思ってやってみたが、緊張した。

 後は馬車までエスコートするだけと思ってたら、エルフの族長の声が掛かる。


「スチイお嬢様、本日は一段とお美しいですね」

「スチ………………」

「ありがとう存じます?」

 族長がニヤニヤしながら話しかけている、嫌な予感しかしない、俺はスチイの耳元で誰にも聞こえない様に、返答の仕方を小声で囁い(ささや)た。

 それに習ってスチイが答えるが、どうも語尾が上がってしまう、その内に()れるだろう。

 そして族長の話は終わっていなかった、更に言葉を重ねて来る。


「胸元のネックレスが良くお似合いですが、誰かからの贈り物でしょうか?」

「今日ノーバン様にもらったの」

 俺が口を(はさ)む前にスチイが嬉しそうな高い声で答えてしまった。


「素敵ですわね、ところで真珠のネックレスの意味は知っておいでですか?」

「しってます、えっと……」

 族長が悪戯(いたずら)っぽく質問をし、スチイは『しってる』と言い何かを答え様とした時、族長に一指し指を唇に当てられて止められた。

 族長が今度は俺に視線を向けて来た、思わず斜め下に視線を外してしまう。


「ノーバンも勿論(もちろん)知ってて渡したのよね?」

「えっとネックレスの意味でしたっけ?」

 何を聞いているのかは分っていたが、少し考える時間が欲しくて一応確認の意味も含めて聞きなおし、時間稼ぎをしながら考えた。

 貴方に首ったけ? それはネクタイの話だったか? でも首に掛ける物なら一緒だろう。でも首に縄を掛けるとか、独占欲の表れの様な意味合いも有った様な気もする。

 素直に「知らない」と、「スチイの胸元が寂しかったから」と言うか?それだとスチイの()()寂しいと変な勘違いをされても困る。

 知ったかぶっても恥をかくだけだから、少し(にご)しながら今は逃げようか?

 迷っている内に、族長が再度話しかけてくる。


「こんな素敵なネックレスを贈る意味をね、知っているのかしらね?」

「後で教えて頂けると助かります」

 そう言うと俺は一礼をして族長の返事も聞かずに、スチイの手を引き馬車の方へと向かって歩き出す。

 これ以上族長の話に付き合うと(ろく)な事に成らない、逃げるが勝ちだ。


 振り返って皆の様子を伺う(うかが)と、族長は俺の方を睨み、姫様は肩を落とし女王様に寄り掛かる様に軽く抱き付き、女王様は姫様を心配そうに見つめ、若様は顔を綻ば(ほころ)せて声を出さずに笑っている。

 皆の反応が各々に違う事が気に成る、心配に成りスチイの表情も確認すると、少し困った様な考え事をしている様な、額にシワを作り難しい顔をしている。

 これは不味いと思い慌ててスチイに声を掛けた。


「その真珠のネックレスには俺の心が込めて有る、スチイが喜んで受け取ってくれて俺も嬉しい、ネックレスに何か深い意味合いが有るのかも知れないが、今は俺の気持ちを、(おも)いを受け取ってほしい」

「はい、ノーバン様」

 スチイは笑顔を取り戻し、俺の腕に(ほほ)を当てて寄り掛かって来た。

 しばし足を止めた後、スチイは歩き出し俺のエスコートの元に馬車に乗り込んだ。

 スチイを馬車に乗せると、俺は逃げる様にして馬車の(かげ)に隠れ、高鳴る心臓をゆっくりと押さえ込むように静かに深呼吸した。


 ほんの少しスチイに寄り掛かられただけなのに、手には汗をかき心臓は早鐘を打って顔は熱くなり、胸は苦しかった。寄り掛かるスチイを見下ろした時には、息をする事すらも忘れて見入ってしまった。ゆるいシャツで広く開いた胸元に、白い肌と薄黄色い下着が微かに見えた。


 何時スチイの事を抱き締めても、こんなにドキドキした事は無かったのに初めての体験だ、少し疲れが溜まり体調が悪いのかもしれない、明日は休ませてもらおう。

 それにしても何だか、まだ鼓動が早く息苦しい気がする。


 俺はじっとしていられなくて、一足先に病院へと向かい歩き出す。

 そしてスチイの薄黄色い下着を思い出してはニヤニヤし、その内に息苦しさよりも嬉しい気持ちで胸がいっぱいになり、心臓の高鳴りも忘れてしまった。


 先に病院の前に着いた俺は、馬車を待つ。

 馬車が到着し先に降りて来たのは狩人で、続いて付き人が降りた。

 次はスチイだと思い手を差し出した先には族長が顔を出す、出した手を引っ込めるのも不味いと思い、族長に差し伸べる。

 族長は一瞬細い目を見開き驚いた様な顔をしたが、手を乗せて来たのでゆっくりと馬車から降ろす。

 四人乗りの馬車なので残るはスチイだけだ、行儀が悪いが出口に待ち構えスチイが顔を出すと同時に、両手を(かか)げてスチイの(わき)の下に手を差し込み、抱き上げる様にして馬車から降ろした。

 スチイに左手を出して、手を握ってから病院の中へと歩き出す。

 そんな俺の事を見上げて微笑んでくれる。


 スチイは最高に可愛い、まさに天使の笑顔だ。

人魚族の女性にとっては、真珠のネックレスに特別な意味が有りそうですが、あまり気にしないで下さい。後々話しに出てくるのかどうかは主人公次第です。


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