姫様への問診
俺の問診、質問に姫様は紙に書かれた『はい』と『いいえ』の文字を鉛筆で指したり、隣の若様が補足したり筆談も使いながら答えてくれた。
何故か姫様はスチイに「食べては駄目だ」と言っていた海老や魚を食べたらしく、海老に関しては生でも食べた事が有るらしい。
そして奇病にかかってしまったと、発病は最近で一日に数回の痛みが有るが発熱は無いそうだ。
やはり原因は海老と魚に有る気がするが、発病が食べた全員じゃない事から真の原因は隠れた別な物の可能性が高い。
死んだ魚でも食べたのだろうかと思い、聞いてみたが海は近く新鮮な物しか食べていなとの事だ。
魚の寄生虫等も考えたが、病状が腹部や腸等の内臓の痛みでは無く、人それぞれに痛む場所が違うと言う話で、問診では町や村で聞いた話と同じで新たな発見は無かった。
姫様なら何か知っていると思い、何故スチイに「魚と海老を食べてはいけない」と言ったのかを聞いてみたが、古くからの言い伝えとしか知らないと、食べたらどうなるかは知らないと、ただ禁を破り食べた結果が奇病ではないかと悲しい顔をしていた。
そして悲しい顔をした姫様が思い立ったかの様に筆談を始めたので、俺は隣に居るスチイの為に逆さ文字のまま読み聞かせる。
『古来より人魚族は魚と海老は食べてはいけないと言われていました。ですが竜人族と不仲になり山の幸や鳥が手に入らなくなって、おかずが海藻だけに成ってしまい、その海藻も皆で分けたら僅かです』
『漁師の取って来る魚も加工をするものの売り先も無く、余る一方です』
『そして魚を食べ始める人が出て来ましたが、呪いや病気にかかる人は居ませんでした』
『ですが、それも長くは続かず僅かの海藻と魚だけではスグに飽きてしまいます』
『そんなある日、人間族の商人が魚の美味しい食べ方と海老も食べられる事を、この町で教え広めたのです、それが美味しかったらしく町から村へ、村から村へと広まりました』
『新しい調理法が広まって、しばらくした辺りから体に痛みを訴える者が出始めました。それが奇病の始まりです』
『古い言い伝えを破り、海老や魚を食べたからだと言う者もおりましたが、同じ物を食べても病気にかからない者の方が圧倒的に多く、ただの迷信だとされました』
『そして疑われたのは竜人族であった旦那で、毒だの呪いだのと言われ私達は小さな村に引っ越し、静かな暮らしを始めました』
『でも今度はスチイが苛められる様に成り、気付いた時にはスチイの体は痣だらけでした。ずっと我慢していたのでしょう』
『家族三人細々と生活していると今度は竜人の現族長が病気に成ったと言われ、次期族長である旦那が連れ去られ、その後にスチイとも離れ離れにされてしまいした』
姫様は涙を零しながら書き、若様は姫様に寄り添いながら目に涙を溜めている。
俺はスチイを抱き寄せながら、読み進めるもスチイが俺の手を取りハンカチ代わりに涙を拭い、俺まで泣きそうになる。
『そして皆が原因だと言った旦那とスチイが居なくなっても病気は治るどころか、その数を増やしました』
『今度は病人が一人も出て無い我が家系が疑われ始めました』
『代々姫を輩出して来た私達の家系は、厳格だった為に海老や魚は食べなかったのです』
『そして私達の家系で病気にかかる者は居なかったのです』
『そんな私達を見て病気を流行らせたから、その家族だけは病気に成らないと町では噂に成っているそうです』
『もう旦那にもスチイにも二度と会えないと思い、それなら私が病気に成って証明してやろうと思い食べました、でも、病気になった直後に旦那にもスチイにも会えるなんて、神様は意地悪です』
神様は意地悪か、そうかもしれない。筆談が終わる頃にはスチイと姫様は元より、若様の目からも涙が零れ落ちてしまう。
俺は悲しみを切り離し、今の筆談に奇病のヒントが無いか、もう一度読み返しながら考える。
気に成ったのは『人間族の商人が魚の美味しい食べ方と海老も食べられる事』の部分だ、三人が落ち着くのを少し待ってから質問してみる。
「商人が教えた『美味しい食べ方』とはどんな調理法ですか?」
『生魚の刺身や生の剥き海老、小さな魚や海老はそのままでも食べられると言っていました。そして自分で食べて初めて知りましたが、小さな生の海老はとても美味しく禁を犯してでも食べたくなるほどです』
「有難うございます、大変参考になりました」
生の海老がそこまで美味しい物なのだろうか? 新鮮だから?それとも種族的な味覚の違いだろうか?
何の病気か分った訳では無いが、まだ諦めてはいない、診察に賭けてみる。
診察の為に痛みの出る場所を聞いてみると、姫様は妖艶な姿で腰を捻り左手を下から後ろ手に回し、右の背中を指差すも微かに届かないのか背を弓なりに逸らし患部を指差す、が俺は患部よりも腰を捻り逸らした事で強調され、天に突き出す様なメロンに目が釘付けだ、それは見事に丸く膨らみ美味しそうの一言に尽きる。
皆は姫様の指差す患部に、俺はメロンに注目したが一人だけ俺の視線に気付いた者が居た、いや、数人は気付いたが気付かない振りをしてくれているのかも知れない。俺はスチイに足を抓られて我に返り、スチイに目線を向けると頬を膨らませていた。流石にこれは嫌われただろうか?少し心配に成るが、気を取り直し病気の事を考えようと向き直った。
他にも痛い所が無いか聞いたら、姫様はテーブルの下を指差すので、俺はテーブルの下から姫様の足を覗こうとしたが、ソファーに合わせた低いテーブルで上手く覗けなかった。とても残念だ。そして若様が左足の脹脛だと教えてくれた。
他にも有るのかと心配したが二箇所だけらしい? 何かが、おかしい、声が出せないのは奇病のせいではないのか? 不思議に思い聞いてみると、姫様は生れ付き声が出せないとの事で奇病とは関係が無かった。
一通り聞きたい事は聞き、とうとうその時が来た。待ちに待った診察の時間だ。
俺は浮かれた心を隠し、落ち着いた声で皆に話しかける。
「問診も終わりましたし診察をしたいので姫様以外は外でお待ち下さい」
「「……」」
「スチイも一緒に居る」
俺の言葉に若様と姫様は目で会話でもしている様で「頑張れよ」みたいな雰囲気だが、スチイは我侭を言い出す。
俺はスチイを一度見てから、困ったと言わんばかりに肩を落としてエルフの族長の顔を見る。族長がスチイを連れ出してはくれないだろうか? だが族長は何かを考えている様で、何もフォローはしてくれない。
仕方なく自分でスチイの説得を試みる。
「スチイ、お母さんの病気を早く治したいだろう?」
「……はい」
「じゃぁ大人しく外で待てるよね?」
「…………」
困った事にスチイは俺から目を逸らし、心配そうに無言で姫様を見つめる。こうなったら若様にお願いするか?
「若様、『ノーバン』はい?」
俺が若様に声を掛けると同時に、エルフの族長が俺に声を掛けて来た。
何だろう? 先程の何かを考えていた仕草に、今のタイミング、嫌な予感しかしない。
「ノーバン、診察するのよねぇ?」
「勿論そうですよ」
俺は族長の威圧に少し身を引きながら当然の様に答えるも、声は若干引きつってしまう。
「それで、何処を診察するのかしら?」
「そ、それは…………患部ですよ、そうですよ決まってるじゃないですか」
一瞬答えに詰まった俺だが、良い答えを思い付き、答えた上で更に畳み掛ける様に言葉を重ねる、も族長は俺の事を疑う様に目を細めてジッと見てくる、思わす俺は視線を逸らし姫様の方を見る。
「そうね患部ねぇ勿論、脹脛よね?」
「…………」
そう言われた俺はスグには答えが出せずに、周りを見てみると皆の視線が俺に注がれている。いやいや俺は何も疚しい事など少ししか考えてない。
皆を追い出し、姫様と二人きりの部屋で『診察するから』と『患部の背中を診たいから』と言い服を脱がせて、うつ伏せにさせようとは……思ったが、あくまで医療行為の一環だ、下心なんて少ししかない。
自分に言い訳するも、皆の視線からは逃れられずに妥協する。
「そ、そうですね脹脛から診ましょう」
「当然よね、ノーバン」
これは嫉妬か?俺が族長に見惚れた事があまり無いのに、姫様の胸に抱える果物に見惚れていたから、姫様に対する族長の嫉妬だろう。そう思う事にする。
そもそも、何を当然に思うかは人により違いが有る、俺は脹脛より背中の病状の方が気になる、確かに脹脛にも多くの血管が走るが大切な臓器には遠く、何か有っても止血さえ出来れば助かると思う、患部からの転移や毒の放出も考えられなくは無いが、町で聞いた病状からは可能性は低いだろう。
それに対して背中の患部の方は正確な位置は分らないが、肺の近くなら一刻を争う事態に成りかねない。
脹脛の診察をしていた為に、病気が内臓に達して手遅れに成らない事を祈るばかりだ。
「では診察を始めますが、ベッドかこのソファーを繋げて診察台の代わりにしたいのですが如何しますか?」
「……」
俺の質問に姫様は無言でソファーを指差す。ソファーは柔らか過ぎて診察し難いのだが姫様の要望に従う。
皆が立ち上がりテーブルを移動させ、向かい合う二つの大きなソファーを合わせて診察台にする。
立ち上がった姫様の姿を改めて見てみると、桃色と水色に光り輝くドレスを身に纏い、胸には二つのメロンを抱えドレスの袖は二の腕までで、肘から先は露出され腕から手や指まで細く白く、口付けしたくなるほど綺麗な手をしている。
視線を手から体に移すと、腰の細さがお尻の膨らみを強調し、お尻は綺麗な丸みを帯びていて、そこには美味しそうなキャベツが二つ有る。ドレスの輝く照りがキャベツの丸みを強調し更に美味しそうに見せる。俺はキャベツが大好きで特に生が好きだ、頬擦りし撫でる様に優しく一皮二皮剥いて、強く両手で掴みかじり付きたい。
涎を抑えながら視線を下げて行くと、ドレスのラインは膝上で細く絞られた後、足元に向かうにしたがって金魚の尾鰭の様な広がりを見せ、まるで人魚の様な、いや本物の人魚族だが御伽話に出て来る人魚その者だ。
部屋の雰囲気と姫様の美しい姿に魅了され、竜宮城に来た様な錯覚に陥る。
次話、診察です。
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