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第六十話、人魚の国

 山を下り着いた町では男が(もり)を持って立っている。

 前を行く狩人やエルフの族長達が平然と町に入るので、俺達も後に付いて入って行く。

 一応スチイも若様も帽子やフードで頭は隠しているけど少し心配したが、どうやら先触れが有った様で何事も無く町に入る事が出来た。

 俺達は町長の家に案内され荷物を降ろし、馬を預けた時には暗くなっていた。

 町長の家は大きくは無いが風呂だけは大きいらしく、男女別れて皆が風呂に向かう。

 服を脱ぎ風呂場へ入り桶で湯を(すく)ったはいいが、ぬるい。でも俺には覚えが有る、スチイがぬるい湯が好きだった、きっと種族的なものなのだろう。

 若様も知っていたのか驚いてはいない様子だ。


「これは塩水じゃないか」

 エルフの狩人は温度よりお湯に塩が入っている事が駄目な様で早々に出て行ってしまう。

 俺はエルフの言葉が気に成り、お湯を舐めてみようとも思ったが止めた、病気にでも成ったら旅が続けられなくなるからだ。


 若様と二人きりに成った俺は何か気まずい、スチイの事でも話した方が良いのか迷っていたら若様から話し掛けて来た。


「スチイの事を助けて頂き本当に有難う」

「いえ助けただんて、親御さんの所に帰したかっただけですから」

「それに竜人の病気の事も」

「それに関しては報酬を頂きますから気にしないで下さい」

 次期族長と言う事よりも、スチイのお父さんって事が話し難い、俺はそれっぽい言い訳で返してしまった。


「ミルクを飲むように成ってから、まだ数日ですが体も少し良くなってきた気がします」

「それは何よりです」

 若様の言葉で俺は少し安心する。スチイの為にも早く健康に成って欲しいと思ってる。

 その後も若様と話をしたが、どうやら若様はお礼が言いたくて俺と二人きりに成るのを待っていたらしい。俺は常に報酬を要求するからお礼を言われなくとも気にしない、が言われれば嬉しい気持ちもある。

 若様とゆっくりお風呂に浸かり汗を流した後、着替えて夕食を頂く頃になる。

 人魚の国だと思い若い女性が大勢集まりお酌をしたり、目を楽しませてくれると思っていたら、部屋には町長夫妻しか見当たらない、人間の国に寄ったのだろうか?


「エルフ長様、本日は人魚の国へようこそ、おいで下さいました」

「夕方遅くにすまないわね」

 町長とエルフの族長の挨拶を聞いた限り、ここは人魚の国で間違えないらしいが、想像と違う事に少しガッカリしながら夕食を頂く。


 俺の想像と違った点がもう一つある、料理の中に魚が並んでいる事だ。あれ? 何故俺は人魚の国で魚が出ないと想像したのか? そうだスチイが食べられないと言っていたからだ。

 俺と若様の間に座るスチイの目の前から慌てて魚の皿を下げて、俺の前に有る他の料理をスチイの前に置いた。慌てて下げた魚は若様に渡した。


「「ありがとう」」

「どう致しまして」

 若様とスチイにお礼を言われ、特にスチイの笑顔を嬉しく思い美味しく食事を頂いた。


 翌朝、少し雨が降っていたので町長は気を使って、人魚姫のお城の町まで船を出してくれると言って来たのだが、エルフの族長達が相談して今日は休む事にした。

 若様も不安の残る体だし、皆も歩き続けは大変なので丁度良い休みになる。

 但し、俺は案内人を一人頼み三度笠を被り町の中へ行ってみる。

 町を歩き思った事は人魚の国なのに男が居る。いや普通に考えれば分かる事だが、俺の欲望が女性ばかりの町を想像させてしまう、魚の中には九割九分がメスと言う種も居る位だ、人魚の国が女性ばかりでも可笑しくは無い筈だ。が半分位は男だ。


 少しガッカリしながらも町中を歩いていると、ある所に目が行く、ごく自然にだ、男なら誰でもだろうと思う位に引き付けられてしまう。

 それは道行く人の女性の胸だ、皆大きく立派な……涎が(よだれ)出てしまう。メロンやスイカが沢山、皆が皆、大きな果物を抱え桃や夏みかんを探すのも苦労する位にメロンやスイカが多い。雨に濡れて服が張り付く事で余計に強調されている。

 俺は甘いメロンも果汁たっぷりのスイカも大好きで、スイカはお腹が痛くなる事が分っていても、有れば有るだけ食べてしまう程に大好きだ。


 人魚の女性は皆、髪が輝き顔も美しく服や手首には貝殻で作った装飾品を身に着け首から胸元には真珠のネックレスをかけている。大粒の真珠が濡れた谷間で輝き何とも魅力的だ。

 俺は生まれて初めて真珠に成りたいと思った。

 大き目の果物に輝く髪と美しい顔立ち、俺は何処かで見た事が有る。誰か知っている者に似た雰囲気の人が居た筈だが思い出せない。がそれよりも今を楽しもう。


 スチイには見せられない様なニヤケ顔で、涎を垂らしながら着いた先は病院だ。

 病気を知るには、まず病院からと思い訪ねたが、患者は意外と少なく逆に驚く。

 病院で医師や患者等に色々と病気の事を聞いてみたが、治療法は兎も角(ともかく)病名すら分ってないと言う状況だ。

 人魚の国でも竜人と仲違いしてから病気が発生し始めたので、『竜人の毒だ』とか『呪い』とか竜人の村々と同じ様な事を言っている。

 但し症状や病気にかかる人が一割も居ないと言う事から、まったく別な病気だと分る。


 何でも此の奇病にかかと、ある日から体の何処か患者によって場所は様々だが急に痛み出すという、その痛みは間欠の様で、ある程度の時間毎に痛みが来ると言い、その痛みは徐々に激しくなり人によっては数箇所になったり、血管の近くだと内出血を伴ったり内臓近くや太い血管の側等、最悪の場合は死に至ると言う。


 過去には首に痛みが走り、我慢出来ずに首に爪を立てて仕舞には首から血を流して死んだ人も居たと言う。その時に吸血鬼騒ぎが有った事も教えてくれた。

 病院では治療が不可能と判断して、痛み止めを他の国から大量に輸入しているとも言っていた。


 病院を後にして市場や港も見て、竜人と仲違いしてから変わった事を聞いて回った。

 変わった事と聞かれた皆の答えは一緒で『食事』だと言う、竜人と仲違いする前は貿易が盛んで、獲った魚を天日干し等の加工して竜人の国に送り、代わりに山の幸や鳥等を輸入して食べていたと言う。

 竜人と仲違いしてから主食のご飯や麺にパン等は一緒だが、貿易が無くなり輸出していた魚を食べるように成ったらしい。

 他に変わった事が無いか色々な所を見て回り聞いてみたが有力な情報は得られなかった。


 町長の家に戻り一人考えてみたが、人魚の奇病に近しい病気が思いつかない。

 だが気に成るのは仲違いしてから変わったと言う食事だ、人魚の血を引くであろうスチイは魚が食べられないと言っていた、そこに何か有る様な気がする。

 俺は若様とスチイの居る部屋を訪ね、スチイに話を聞いてみる事にした。


「スチイは魚が食べられないと言っていたが、お父さんお母さんと一緒に住んでいた時も魚は食べてなかったのかい?」

「お母さんが食べちゃダメだって言って……えっとぅ」

「スチイの母は人魚族で、言い伝えで魚と海老は食べてはいけなそうなのです」

 何かきっかけが有って魚嫌いに成ったのか?初めから食べられないのか?の確認をしてみるが思わぬ答えが返って来て俺は思わず若様を見てしまう。それに気付いたのか若様がスチイの続きを話してくれた。


「それでスチイは何を食べていたんだい?」

「お母さんもスチイも泳ぎが得意で、海に潜って海藻類を採ってきてたよ」

 なるほど自分達で採って来てたと言う事かと感心して、若様が居る事も忘れてスチイの頭を撫でた。硬い表情だったスチイは笑顔になり、若様も何も言わないので平気だろう。


 その後も少し話をしてみたが、どんな言い伝えで何故魚と海老を食べてはいけないのか?食べたらどうなるのか等は、スチイのお母さんじゃないと分らないと言われた。

 食べてはいけない物を食べて病気になる?何かの呪いだろうか?


 話を聞いた後も考えながらお風呂に向かうと今日は狩人も一緒に湯船に浸かった。

 風呂を出た後は夕食を頂くも、また魚が出ている。隣のスチイを見ると(すで)に若様とお皿を交換した後だ。今日の魚は生の刺身が出ていて俺は箸で刺身を挟むと、目の前で何度も返しながらジッと見つめて考えてしまう。

 人間でも生の魚は家庭では食べない、稀に激痛とも言える腹痛を起こすからだ。

 もっとも調理の専門家が出す料理なら腹痛は起きないので、食事処ではメニューにも有る。

 横目で町長夫妻を見ると刺身を美味しそうに食べている。

 若様から聞かされた言い伝えは何だったのかと思って首を傾げてしまう。


 生の魚、人魚、言い伝え、奇病、痛み、何かが繋がりそうで繋がらない、そんなモヤモヤした気持ちの中、夕食も終わる。

 食後はエルフの族長の部屋を訪ね、今日の報告をするも病名すら不明のままだ。


 翌朝は晴れたので朝食を頂いてから直ぐに出発した、どうやら人魚姫の居るお城?はまだ先らしい。

 町から少し歩くと海岸に出られると聞いたが、砂地を歩くのは大変なので海岸線沿いに少し内陸を歩いて行く事になる。

 数日掛けて幾つかの村々に寄り話を聞くも病気の原因はおろか病名すら分らない。

 そして病名すら分らないままにスチイのお母さんの居る町まで来てしまった。


 町に着いたは良いが夕暮れ時で時間が遅くお城? には入れないと言い警備の者が宿屋へ案内してくれた。

 宿屋は小さくは無いが一人部屋と二人部屋しか選べなく、俺はスチイと一緒になりたかったが、スチイは若様と、俺は狩人と一緒にされてしまう。

 付き人とお姉さんで一部屋、そして族長と旦那で一部屋だ。族長の旦那は先触れとして竜人の町に居た仲間にはエルフの国へ走らせ牛やヤギの手配をした後、馬で人魚の国に先に来て、先触れとして人魚の国に居た仲間には、人間の国へ魚の加工品やヤギやチーズ等も頼んで走らせたらしい。

 そして人魚の国で滞在し交渉するも、竜人を助ける為と言ったら、お城を追い出されて宿屋で族長が来るのを待って居たと言う。


 病名も分らずにスチイのお母さんに会うのは心苦しいが、せめてスチイのお母さんだけでも病気でない事を祈ってしまう。

推理物では無いし、読者の住む世界の常識とは若干違うので、医学知識が有る人こそ予想が外れてしまうので深く考えないで下さい。

人魚の国は美しい女性が多いようですが、あくまで主人公の主観によるものです。

隣にスチイちゃんが居ない事でタガが外れかかっているとも言え怖い限りです。

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