再会
ここまで読んで頂き有難う御座います。
そして、これからも宜しくお願いします。
俺達が入って来た扉とは別の、もう一つの扉が気に成るが、紅茶とお菓子を頂き寛いでその時を待つ。
お菓子は米を潰して焼いたお煎餅の様な感じで甘い物ではなかった。
広い部屋でお茶を飲み寛いでいると俺達が入って来た扉とは別の扉が開き一人の男が入って来る。
男は背が高く肩幅も広いし体格も良い、大柄だが高級な服を身に纏い紳士的な見た目だ。
俺は男を観察し相手も俺達の事を観察する様に順に目で追っている様だ。
良く見てみると男の角は他の竜人よりも一回り大く、髪は赤く……目も……赤い。もしかして、この人がスチイのお父さんだろうか?
俺はスチイの顔を覗き込む様に見ると、スチイは大柄な男から目を離さず見ている。
男はテーブルの短手の上座ではなく、エルフの族長の正面の椅子に向う。
男が椅子に座ろうとした、その時、スチイの声が上がり時が止まった。
「……お父さん?」
俺はスチイの顔を見ているだけで息をする事も忘れた様に動けなくなり、その時スチイの顔意外何も見えていなかった。
多分、一瞬の事なのだろうが俺には、とても長い時間に思えた、そして俺を現実に引き戻す声が聞こえてくる。
「……ス……チイ……なのか?」
「そうだよ、お父さん」
スチイは椅子から飛び降り椅子を邪魔だと手で払おうとするので、俺は呆然としながらも椅子を退かし……、スチイは走り去る。
俺は何故椅子を退かしてしまったのだろう? 何故スチイの手を掴まなかったのだろう? 分ってる出来る筈のない事など。それでも……一緒に居たかった。
「私達は別の部屋で待ちましょうか?」
「いえ、ここでお待ちを……、スチイお父さんの部屋に行って話そう」
やけに遠くでエルフの族長と知らない男の声が聞こえる。
気が付いた時には、大柄な男もスチイも居なかった。
スチイが居ないと気付いた後も俺は壁を見つめるだけで何も出来なかった。
数時間は経ったのだろう昼食が用意され始めた、俺には数十分しか経ってない様に思え、時の流れが一定でない事を思い知る。
昼食の準備が終わる頃、大柄な男とスチイがテーブルに着いた、が俺の隣にスチイは居ない、族長の正面に大柄な男が、その隣にスチイが座っている。
スチイが俺の方を見て首を傾げるのを視界の端に捉えるが、俺はスチイの顔を正面から見る事が出来ない。
そんな俺の事を見かねたのか族長が俺の手を引き、隣の席へ移動させ小声で話し掛けて来た。
「ノーバンが祝ってあげないと、スチイちゃんは幸せになれないわよね」
その一言を聞いて俺はハッとしてスチイを見た。お父さんに会えて嬉しい筈のスチイが悲しいそうな顔をしている。……俺のせいだ。
「お父さんに会えて良かったな、スチイ」
「はい、パ……、ありがとう」
俺は苦笑い気味に無理な笑顔を作り声を掛け、スチイは笑顔を見せるも途中で口に手を当て言葉を飲み込み言い直した。もう『パパ』とは呼んで貰えない事を知ってしまった。
食事を始める前にお互いの自己紹介が行われた。大柄な男は『スチイの父親で竜人族の時期族長』だと、その言葉にエルフの族長が『時期族長だから若様ね』と付け加えた。そして竜人の現族長は体調不良で床に臥せっているらしい。
俺達の事はスチイから聞いただろうと思い、エルフの族長意外は名前だけの紹介で終わらせた。
昼食は意外と質素で、大きな屋敷に住み体格も良く時期族長と言うのに、村人やエルフと変わらない。細身のエルフなら理解出来るが大柄な男の食事とは思えなかった。
昼食も食べ終わり紅茶を飲みながら竜人の病気の事を話し合う。
個人的にはスチイの今後の事が気に成ったが、父親の元に返した事で皆は何も言わない様だ。ただ俺も今後のスチイの事を考える上で竜人の国へ来た以上スチイにも感染した可能性も有ると思うと、病気の事を話し合うのも吝かではない。
話を聞くとスチイのお父さんの親である現族長が、病気で体調不良となり家族と引き離され此の町に連れて来られた時には、すでに族長だけでなく町中で体調不良を訴える者が多く居たそうだ。
若様も此の町へ来て数年した辺りから体調に異変が出始め、今では関節痛や筋肉痛に悩まされているとの事だ。
そして元々病気をしてこなかった竜人は病気に関する知識に乏しく、死ぬ病気でない事から何もせず我慢して耐えてしまうという。
皆が聞き難い事を俺は聞いてみる、村々の人々の話から気に成っていた事だ。
「人魚の国と仲違いした頃に何か変わった事は有りませんでしたか?」
「結婚前にも此処に住んで居たが、連れ戻された時に気付いた事と言えば貿易が途絶えていた事だ、大好きな魚が食べられなくなったので覚えてる」
大好きな魚? スチイは『魚が食べられない』と言っていたが? 俺は首を傾げながらスチイを見てしまう。いやいや今考える事はそこではない。
竜人と人魚の仲違いの原因がスチイの両親に有り、皆が聞き難かった事を敢えて聞いた甲斐が有った。
そして、人魚の国に住んで居た筈の若様に、もう一つ質問してみる。
「若様も人魚族のせいだと、毒や呪いだと思いますか?」
「いや、そんな筈は無い」
若様はハッキリ無いと言い切れる程に信用、信頼していると。
大体の情報が集まった。病気の知識に乏しいと言う竜人に、どの程度理解出来るかは不明だが、俺の中で予想した事を話してみる。
「若様、病気の原因は分りませんが可能性の有るところを話します」
「宜しくお願いします」
俺は前置きをして話し始める。
一、毒の可能性で特に重金属病等。
二、必須栄養素の不足で特にビタミンDやカルシュウム等で子供等は、くる病の様に見えた。
三、ホロモンバランスによるもの。
四、小動物等による病気の蔓延で特に鳥です、ネズミは見かけなかった。
五、その他の原因不明。
毒の可能性を示唆した時に一瞬ざわめいたが、話を続けると直ぐに落ち着いた。
エルフも病気に成り難いのか、それとも人間とはかかる病気が違うのかエルフの族長も特に何も言わず俺に任せる様な雰囲気だ。
俺が話し終えて一番最初に言葉を発したのはスチイだった。
「パ……お父さんを助けてあげて」
スチイは『パパ』と言い掛けたのだろうか? 誰に対してか、お父さんの事をパパ呼びしようとしたのか、それとも……俺だろうか?
スチイの悲鳴とも聞こえる様な言葉に、俺は心無い一言を言ってしまう。
「死ぬような病気じゃないから大丈夫だよ」
「パパ! お父さんを助けてあげて!」
あれ? 何だろう目頭が熱くなり何かが零れ落ちる。涙?なぜ?
俺は何故、涙を零しているのか自分でも分らなかったが、ただただ泣きながら助けを求めるスチイを見る事しか出来なかった。
俺は誰に意地悪をしていたんだろう? 俺の元を離れたスチイにだろうか? 俺からスチイを取り上げようとしているスチイの父親にだろうか?
元々俺が此処に来た理由はスチイのお父さんを診察する為じゃなかっただろうか?
自分の心の狭さでスチイを泣かせてしまった事に後悔する。
心無い一言を言ってしまった俺だが、気持ちを切り替え診察を前提に何故診察が必要かの説明の為に話を進める。
「先ほど述べた原因の可能性は病状から近いものを挙げましたが、それぞれに合致しない部分も有ります」
「どう言う事でしょうか?」
少し前置きをしてから話し始めた。
毒や重金属病では別々な水源に人為的に混ぜる事は難しい事、人為的でなく自然にだとしたら大きな地震等の地殻変動が無ければ急な変化は無い筈です、しかもダンジョンが出来て以来、大災害急の地震は考え難い。
ビタミンDやカルシュウムの不足では、子供の『くる病』は有りえても国中の人々に発症する事が考え難く、貿易に関係が有ったとしても発病までが早過ぎる。
ビタミンDは日照にも関係するが高所とは言え、作物が育つ以上は足りている筈だと考えられる。
カルシュウムは多く含まれる食品として牛乳や魚が上げられるが、逆に多くはないが普通又は少量のカルシュウムが含まれる食品は多く存在する。
後はリン系の多く含まれる食品や、カルシュウムを溶かし体外へ排出する飲み物等も考えたが、気にするほどの物は見当たらなかった。
ホロモンバランスや小動物からの病気は、元々症状から可能性は低いと見ているし国中の人々がとなると村々も点在し更に可能性は低いと見ている。
病気の知識に乏しいと言うので少し丁寧に説明した後に本題に入る。
「治療出来るか分りませんが、今日は診察をしようと思い此処に来ました」
「お願いします」
若様にお願いされるが俺はスチイの事を考える、聞かせて良いものかどうか?
「そうですか、ではスチイには外で待ってもらっても良いですか?」
「なぜ? スチイも、ここに居る」
珍しくスチイが我侭を言い出て行こうとしない。
俺は言い聞かせる様に更に言葉を重ねる。
「これから厳しい話をするし嫌な事も言うから、スチイが俺の事嫌いになるかもしれないし、お父さんの返事次第ではお父さんの事も嫌いになってしまうから」
「絶対に嫌いにならない」
正直、俺と向かい合う様にスチイと若様が座って居ると、二人が俺に敵対している様で話し難い、スチイには俺の隣に居て欲しいのだが、今のそ我侭を言ってしまえば無条件に診察と治療をしなければ成らなくなりかねないから、今は言えない。
「そこまで言うなら居ても良いけど嫌いに成っても知らないよ」
「はい……」
俺は今一度スチイに念を押してから話し始める。
「まず診察にあたり頑張りと覚悟は見せて頂きます」
「頑張りと覚悟ですか?」
診察の結果次第では病気を治せないかもしれないから、報酬は治せると判断してから要求しようと思ってる。
「病気が治せるか分らない診察ですが、痛みを伴うでしょう激痛と言える程の痛みに耐える事で覚悟とします」
「はい、どんな痛みでも耐えて見せます」
表面的な治療ではなく診察には体の中まで魔力を通す必要が有る為に、想像も出来ない痛みが走るだろうが我慢してもらうしかない。
そして痛みに耐える為とは言え泣き叫ばれたのでは俺も集中出来ない、もう一つ条件を出す事で対処出来ればと思う。
「頑張りを見極める為の時間が無く、その時間も惜しいから激痛に耐え声を出さない事で頑張りとしましょう」
「はい、それでお願いします」
「……あいつの気持ちの……百分の一でも理解できるかもしれない」
俺からの条件を飲んだ後に、若様が小声で何かを言ったが聞き取れなかった。
俺と若様の話をスチイは大人しく聞いている、俺がスチイに対しても「頑張りと覚悟と報酬」の要求した事を覚えているのだろう。それでも笑顔では居られずにスチイは厳しい顔つきをしている。
やっとスチイちゃんを親元へ帰す事が出来ました。
でも、まだ話は終わっていません。
続き気になる……と思った方は下の評価ボタンクリックで応援してくれるとすごく嬉しいです。
よろしくお願いします。




