高山病、四章三十話
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朝、俺はベッドの上で目覚める。初めてのベッドの寝心地は良かったのだが、昨日の夕方頃から高山病なのか若干体調が優れない。
スチイを起こさない様にベッドから抜け出し着替えて顔を洗いに行き、帰りに族長の部屋を訪ねた。族長達と一緒に居る付き人に「体調が優れないのでヤギのミルクが欲しい」とお願いしたら族長も起きていた様で聞かれてしまった。
「あらノーバンは高山病かしら?」
「いえ、昨日蚊に刺されたのでマラリヤかデング熱かもしれません」
「熱は有るのかしら?」
自分でも高山病だと思っているが強がってみただけだ、でも族長に「熱は」と聞かれてしまった、なら方向を変えようと質問に質問で返す。
「皆さんはお変わり有りませんか?」
「ノーバン以外の皆は元気なのね、うふふ」
蚊に刺される事に続き、高山病も俺だけなのか長生きのエルフは兎も角スチイにまで負けるとは、俺は一番鍛えてる筈なのに一番弱いのだろうか。
「何か可笑しかったですか?」
「高山病だなんてノーバンは本当に人間みたいなのね」
「『みたい』じゃなくて俺は人間ですよ族長」
「以前に初めてノーバンに会った時もだけど、先日もエルフの弓を引いて皆を驚かせたととか、人間離れしているのよね」
結局族長には高山病だと認識され此処に居ても、からかわれる気がしたので付き人の後を追いヤギの居る厩舎へと逃げた。
付き人の年齢は分らないがギリギリお姉さんと呼べる見た目だ、果物に例えるなら完熟前と言ったところか、青い果実が好きな人も居れば、完熟や、中には腐り掛けが好きだと言う人も居る。人それぞれだ。
付き人は乳絞りの為か肩より長い髪を一つに纏め左肩に落とし、両腕の袖を捲りヤギに挨拶してから乳絞りを始めた。
俺は顔を近付けて覗き込む振りをして、家畜臭い厩舎の中で微かに甘いミルクと付き人の香りを楽しみながら、目では付き人の袖を捲った細い腕や艶っぽい項に魅了されている。
腕の先を目で追うとヤギの乳を細く綺麗な指で何度も何度も、白い液体を搾り出す様に指を動かしている。何とも艶かしい。
白い液体が顔に跳ねたのだろうか、猫が顔を洗う様な仕草で手で顔を擦り、その手を舐めている。可愛い。
何故か俺はヤギを自分に置き換え、見ている物とは違う世界を想像しながらニヤニヤとしてしまう。
俺が楽しいんでいる間に乳搾りは終わった様なので、重いミルクは俺が持ち台所へと向かう。付き人はミルクを布で漉し火に掛ける。
料理をする女性の後姿は魅力的だ、しかも細身のエルフで耳が立ち今は髪を纏め左肩に落として艶っぽい項が見えている。見ているだけでも幸せだ。
十分に目の保養をした後、飲み易いように少し冷ましたミルクの一部を受け取り部屋に戻る。
部屋には目を覚ましたらしいスチイが部屋着のまま待って居た。
「パパ何処行ってたの?」
「少しミルクを貰いにな」
「スチイも飲むぅ」
不機嫌そうだったスチイに「ミルクを」と言うと急に笑顔になり俺に飛び付く勢いで「飲む」と言う。本当にミルクが好きな様だ。
「顔を洗って、うがいをして来てからな」
「はいパパ」
スチイは部屋着のまま飛び出して行った、確かに着替えてとは言わなかった俺が悪い、まぁ下着じゃないし良いだろう。
俺はスチイが戻って来るまでミルクを我慢して、戻って来てから一緒に飲み始めた。俺がゆっくり飲んでいる間にスチイは二度お代わりしている。
エルフの村からヤギを連れて旅に出てから、スチイはミルクが気に入った様で毎日大量に飲んでいる、ミルクを大量に持ち運ぶなんて出来ないから、正直ヤギが居てくれて助かったと思っている。
ミルクを飲み終わりスチイとじゃれながら着替えを手伝い、朝食へと向う。
広い居間と言うかリビングには大きなテーブルが置かれ周りには椅子が十脚以上配置されている。上座には既に人が座っており俺達も椅子に座る。
上座に座る人から、「この町の町長だ」と言う説明と簡単な挨拶があった。
朝食は御飯を主食に山の幸と鶏肉だ、昨日の夕食と代わり映えが無い気がする。
朝食の終わりに町長に一つのお願いをした。俺と族長と付き人と狩人の四人を町の中に案内して欲しいと言うと案内人を一人付けてくれる事に成った。
スチイも俺に付いて来ると言って服を掴んで来るので族長に視線を送ると頷かれてしまった、病人の所に行くから連れて行きたくは無い、病気が移る可能性が有るからだ、でも今ここに居る竜人も元気が無く病気の様な感じがする。
俺は悩んだがスチイも一緒に連れて行く事にした。
残る族長の旦那と、おば……お姉さんは、疲れを癒す為にゆっくりするそうだ。
俺一人では何の肩書きも無く町の人に話を聞けない可能性も有り、族長は一緒に来ると言う事で護衛の狩人と世話役の付き人も一緒する事に成った。
朝食を終え町に出ると家々の外壁は土壁の造りが多いが、木造や石の様な物で出来た家も有る。案内人を先頭に、まずは病院へと向う。
病院では医者、薬師、患者、看護師、お手伝い、料理人にまで話を聞いた。
病院で聞けた話では人魚の国と仲違いして数年後辺りから異常を訴える者が増え、更に数年すると症状が悪化し何かの病気だと気付いたそうだ。
始めは瞼がが痙攣する等の軽い物だったのが、怒り易く成ったとか足がつる等の症状が出始め、関節痛や骨折する人が増え筋肉痛や筋力低下を訴える者も居て、町の殆どの人が何かしらの異常を抱えているらしい。
死に至る病気では無いと聞いていたが、お年寄りは少しづつ早死にの傾向に有るそうだ。
聞き終わる頃には昼も過ぎて近くの食堂で昼食を頂いた。
昼食後に教会への案内をお頼んだが教会が無いとの事で、ここ一、二年の間に子供が産まれた家への案内をお願いしてみたが、皆の体調が優れないせいか数年に渡り町では出産が無いとの事だ。
仕方なく子供が遊びそうな所へ案内して貰い、色々と子供に話を聞きながら簡単な診察をしたが、足が真っ直ぐでない子が多く歯の状態も良くない。
子供を診た後は水源や畑に食料庫や市場を見て回った。
水源は井戸ではなく湧き水で、畑は寒さに強い物や生育が早く収穫までの期間の短い野菜が多い様だが良く育っている。
食料庫を数箇所見て回ったが何処も異臭も無ければネズミの糞も無く綺麗だ。
市場では野菜や山菜に木の実が豊富に揃えられ、肉屋に数種類の鶏肉が置いてあり、主食の米や小麦は少し値が高いが大量に有った。
病気の原因は掴めなかったが日も赤くなり始めたので俺達は戻る事にする。
今日は俺に気遣ってか大人しくしていたスチイを褒めながら、肩車して歩いて帰った。
戻ると夕食が用意されていたので食べながら、俺は明日の出発をお願いした。
二、三日滞在する予定だったのか驚いた様子だが族長が賛同したした事で明日の出発が決まった、が小声で族長に「夜中に理由を話しに来る様に」と言われる。
旅に出てからは中々スチイと一緒にお風呂へ入る事も出来ず楽しみは減ってしまい、お風呂から戻ったスチイに「ワッ」と襲い掛かる様に驚かせた後、「驚いたんだからね」と言いつつ叩いて来るスチイを宥める。
部屋にベッドは二人分有るが、俺はベッドに上り同じベッドにスチイを誘う……。スチイは何も言わずに俺と同じベッドに上がってくる、ベッドに上がったスチイを俺は胸の上に抱き抱えてから両手を脇腹に添えてスチイを持ち上げる。
二人で笑い合いながら何度も上下にしてから俺の胸の上に降ろすと、スチイは俺の事を抱き締めてくれた。俺も軽く抱き返して、そのまま横になりスチイをベッドに下ろし何度も撫でながら眠りに誘う。
幸せな時間を過ごしスチイの可愛い寝顔も見てから静かに族長の部屋へと向う。
ノックの後に族長の部屋に入り出発を早めた理由を話し始めた。
族長から聞いた話より酷く深刻な状況に有る事、死ぬ病気では無いのかもしれないが長生き出来なくなり、出生率が低下すれば人口は減少し死の病と変わらない事。
山の上とは思えないほど食料も豊富で、井戸水よりも綺麗そうな水も有り、地域的な物なのか病原菌を運びそうなネズミも見当たらず、病気の原因が分り難い。
なので病気がこの町だけなのか他の村や町でも同じ病気が流行っているのか?
同じ病気が流行っているとしたら共通点は何かを調べる必要がある事。
いくつか思い当たる病名を伏せて族長に話したが、族長は変な事を言い出す。
「ノーバン、旅の歩を進めるとスチイちゃんを早く親元に返す事に成るけど良いのかしらね?」
「族長が何を言いたいのか分りませんね」
いや、本当は分ってる俺がスチイと仲が良いから……、俺がスチイと別れたくないと思っているのではと言う事だろう、その通りだ。
「あら、そうぉう?」
「スチイも連れて来てしまった以上、スチイも病気にかかる可能性が有ります、早く原因を探しましょう」
「……そうね、ノーバンの言う通りね」
俺は悟られまいと顔は平静を保ち、言葉はシラをきり話をすり替える。
族長との話も終わり静かに部屋に戻るとスチイは寝ている、空いたベッドに入るかスチイの居るベットに入るかの二択だが、俺は迷わずスチイの寝ているベッドに潜り込む。静かに相手に気付かれない様にベッドに潜り込むなんて、少し心臓は高鳴り微かに手が震えるが、顔だけはニヤニヤが止まらない。
ベッドで寝ているスチイの体が近付いて来る、いや、俺がスチイににじり寄って徐々に近付いている。あと少しもう少しドキドキが止まらない、ようやくスチイの体に触れ香りを楽しみ体の力を抜いたら、安心したせいか何もせずに早々に寝てしまった。気付かれない様に頬にキスでもすれば良かったと後悔する。
推理物では無いし、読者の住む世界の常識とは若干違うので、医学知識が有る人こそ予想が外れてしまうので深く考えないで下さい。
付き人の「ギリギリお姉さん」に関して「ギリギリ」と言う表現に嫌悪感を抱いた方も居るかもしれませんが、そもそも、どちらのギリギリかは語られていないく幼過ぎてと思うならば嫌悪感も薄まるとかと存じます。他の表現も考えましたが何度も迷いこの表現にしました。




