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馬の名前

三度笠(さんどがさ)を持ち俺達四人は犬も連れて村長の家に向かう。


お婆さんの家も広かったが、村長の家は更に広い、と言うより母家(おもや)は村の集会所で(はな)れが村長宅と言った感じだ。

玄関は広く居間へと繋がる、犬を玄関の中で待たせ俺達は居間へと上がる。

居間には長く広い座卓に料理が並べられ、二十人位が座っている。

席を勧められ座るが、上座側で良いのだろうか?村長の夫婦が最上位で次に俺とスチイが良い席に座る。


席に着くと村長の挨拶が始まる。

「本日はお集まり頂き有難うございます、今日は熊を倒した英雄殿をお招きしての宴を用意した、詳しくは食べながら話すとして、まずは頂こう」

村長は話し終わりと同時に杯を掲げる、(なら)って皆も杯を掲げる。

「「「乾杯」」」「「「パチパチパチパチ」」」


皆が乾杯し杯に口をつけてから拍手する。

拍手が鳴り止むと、俺の前に肉が差し出され説明される。

「熊のハツです、一番の功労者から食べて下さい」

「ありがたく頂きます」


ハツと言って来たが心臓だろう、隣にスチイが居るから俺も「心臓?」とは聞かないが良く分らん。

座卓には箸と果物ナイフが置かれている、ナイフでハツを少し切り分け少し食べる、恐る恐る苦い顔で食べたが笑顔になる。

「旨い、これはいい肉だ」

「「「「ワーワー」」パチパチ」」

歓声と拍手が起こる。


切り分け食べかけになった小さな肉をスチイに食べさせる。

「美味しい」


俺とスチイで少し食べたが、皿に残ったハツを村長に渡した。

「どうぞ、とても美味しいです」

「ありがとう」


村長夫婦もハツを小さく切り取り一口づつ食べた。

「これは旨い!皆も料理を食べよう」

「「「頂きます」」」

本格的に宴の始まりらしい、皆が料理に手を付け始める。

俺とスチイも料理に手を付ける、主食は御飯、味噌汁や漬物も付いて、煮込んだり焼いたりした様な肉が大きな皿に乗っている。

料理を食べながら聞くと、今日は熊の内臓が中心らしい。

ハツは少しづつ小さくなりながら、各席を廻って行く。


村長が大皿の中から骨を取り出してくれる、煮込みに使ったのだろう。犬に与えてほしいとの事、スチイと一緒に骨を犬に与える。

犬は喜んで受け取り、抱え込む様にしゃぶり付いている。

骨を抱え込んだ犬に手を出したり撫でたりしない様にスチイに言う。


料理を食べながら俺とスチイが皆に紹介され、逆に俺とスチイには熊の事が説明された。


熊は元々山奥に居て川には降りて来なかったと言う、降りて来たのは最近の数週間の事らしい、他の個体より大きく森の木の実だけでは食料が足りなくなって降りて来たらしいと、村で話し合いが有り狩の計画中だったと言う。

本来はもう少し小さくて大人しく、森の奥から出ないらしい。


大人しくとも、子供が襲われてからでは遅いのと、川に近付けないのは困ると話し合い狩が決定されたが、熊が相手で尻込みしていたとの事だ。

どうりで対応が早かった訳だ、まとまりの有る村だと思ったが理由が分った。


俺は村長と会話し俺が熊に背中を見せて逃げたら追って来た事を話した。

俺と村長が話している間に、スチイは村人に囲まれている。

ハツを乗せた皿は一周して空になった。ありがとう熊。


今日集まった人は、熊の解体に携わ(たずさ)った人だけで、村人は他にも大勢居て後日熊肉を皆に分けるらしい。


「熊の討伐報酬に毛皮や兜か爪や歯等かもしくは金銭か如何(いかが)しますかな?」

兜ととは頭の事だったか、なら頭の骨か?他の部位も大きな熊討伐の証拠に成る物だ、だが処理には数日かかるだろう。


「あまり長居は出来ませんし旅の荷物に成ってしまいますから、一食分の肉を頂ければ十分です」


「では現金で御支払い致しましょう」

「いえ持ち合わせも有りますし、今夜は村に泊めて貰いますから……もしかしたら俺を(たず)ねて来る者がいるかもしれません、その迷惑料だと思って下さい」

何かお礼をしたいのだろう、たまたま野生の熊を見てダンジョンの熊との違いを知りたかっただけで、村の為に倒したわけじゃない、だが村長も引っ込みが付かないだろう、迷惑をかける事を伝える。


「何か訳有りなら手伝いますが?」

「いえ馬の足跡を追って来るでしょうから、馬で何処かへ行ったと伝えて貰えれば良いですよ」

領主の兵に対して、下手に口を閉ざしたり嘘でも言えば、村人が只では済まなくなってしまう下手なお願いはしない事にした。

ギルド長は金を撒いて噂を作れと言っていたが、中々に難しそうだ。


楽しい宴で食事をして解散となった、皆は後片付けが有るが、俺達四人は先に帰らせてもらう、とても高待遇だ英雄とも言っていたし熊を倒すとはそう言う事なのだろう。


お爺さんの家に四人と一匹で戻り四人は居間で犬は玄関内で寝ることに。

スチイは俺と一緒に寝ると言うので、布団を一式だけ借りた。

スチイは浴衣で少し動くとスグに肌蹴(はだけ)てしまう、何度も直すが俺の事を誘惑しているのだろうか?

スチイを抱き枕にして肌蹴ない様にしてしまう。が俺の大事な部分を蹴ってきた。

正面から抱き付いたのが悪かったのか、後ろから羽交い絞めにするべきだった。

本気で痛かった、実は起きているのだろうか?おでこにキスしてみるが起きてる様子は無い。

蹴られるのは御免だ、一度だけ抱き締めてからスチイを解放して夜中に何度もスチイの浴衣を直した。


朝起きると雨が降っている、挨拶をして顔を洗い朝食を頂きながら話してみる。


「雨が止むまでしばらく置いて貰えませんか?」

「かまわんじゃよ」

「有難う御座います、ついでに馬も洗いたいのですが」

「玄関を使うと良い馬位なら入れるはずじゃよ」

お爺さんの許可を貰い玄関で馬を洗うことにした。

お爺さんと一緒に馬を迎えに行くと、糞が一箇所に山に成っている。


「すみません汚してしまって最後に掃除します」

「いや良い肥料になるし其のままで良いんじゃ、綺麗に一箇所にされてるし頭の良い馬じゃの」

良かった肥料に成ると言うなら少しは安心だ。


玄関でスチイと一緒に馬を洗い始める、桶で水をかけてブラシで洗う。

「お馬さん気持ち良い?」「ヒンッ」

スチイが問いかけると馬は頷きはしないが一鳴きした。


「パパお馬さんに名前は無いの?」

「ギルド長には聞いてないな……馬で良いんじゃないか?」「カパッ」

俺が「馬」でと言うと馬は俺の頭に噛み付いた、いや軽く咥えただけで痛く無い。


「パパ大丈夫?」

「平気だが名前が気に入らなかったらしい」

面倒な馬だ何か名前を考えなくては、また噛み付かれかねない。


「そうだ馬だが鹿の様に軽やかに成る様に『馬鹿』で良いんじゃないか」

「パパ~」「カパッ、ブルルッ」

また噛み付かれた、しかも器用に噛み付きながら鼻まで鳴らしてきた。

今度は本気で考えなければ次は蹴られそうな気がしてきた。


「熊を倒した俺に噛み付く位だ強い名前で『魔王』でどうだ」

「ヒンッ」「……お馬さんも気に入ったみたいねパパ」

大層な名前に成ったが、気に入ったなら良いか。

スチイは「まおう、まおう」と呼びながら楽しそうに馬を洗ってる。


馬を洗い終わる頃にお婆さんがアヒルを四羽連れて来た。

「この子達も一緒に洗ってもらえるかい」

「「はい」喜んで」


アヒルに付いた泥を水を掛けながら、手で撫でて洗い流してゆく。

汚れを洗い流してやると、体を振って水を飛ばしてくる。冷たい。

「アヒルさん気持ち良い?」「グワッ」

スチイの問いかけにアヒルは一鳴きする、良く分らんが気持ち良いのだろう、スチイも楽しそうだし良いか。

アヒルを洗い終わるとお婆さんが玄関を開ける、アヒルは短い足でヒョコヒョコ歩き、大きいアヒルの後を小さなアヒルがついて玄関を出て行く。

どうせスグ汚れるのだろうと思いながら見送る。

タオルを借りて馬に残った水を拭き上げてゆく、馬は気持ち良さそうにしている。


この馬が言葉を理解してるのか試してみたくなって一言呼んでみる。

「馬!」「カパッ、ブルルッ」

「パパ違うよぅ『まおう』だよ」「ヒンッ」


ううぅん理解している気もするが名前だけじゃ分らん。

「魔王か一緒に旅をする仲だ宜しくな」「ヒンッ」


昼少し前に雨が止み始めた、午後からの出発で次の村まで行けるか地図を確認してみる、村までは厳しいが山小屋が有る様だ。

昼食をご馳走に成りながら、午後の出発の事を伝えた。

「近くに来たら、また寄って下さいね」

「「はい」そうさせて頂きます」


本当に良い人達だ、他の村人も良い人達で良い村だと思う。

昼食後に鶏に触れさせて貰う、固いパンが余ってしまったから、スチイと小さく千切って鶏に与えた。スチイは手の上にパン屑を乗せて直接食べさせている。

突つかれて痛くないのだろうかと心配に成るが、笑ってるから平気なのだろう。


荷物を(まと)めていると村長が熊の肉を包んで持って来た。

「雨が止んだから、もしかしてと思い急ぎ持って来て正解だ」

「わざわざ有難う御座います」

村長とも分れの挨拶をして出発する、また此の村に来ようと思う。


スチイも馬に慣れて来たし仲良くなり始めてる、スチイだけを馬に乗せて俺は馬の歩調に合わせて小走りに歩く。

山小屋に着いたのは日が落ちてからだ、取り合えず休もう。


俺とスチイの二人と馬、魔王の一頭はゆっくりとエルフの森林を目指して旅を続ける、道中には色々な事があった。

俺達は予想より、大分日数が掛かったがエルフの森林近くまで辿り着いた。


宴の席で可愛い子も居ました、話の流れ的にバランスが悪く、ふれませんでした。

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