第三十話、パパ大好き
服を買いに来ました、どんな服を選ぶのやら。
高級服店へ向い、お店に入ると店長が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ」
「「こんにちは」」
陰で他の店員のヒソヒソ話が微かに聞こえてくる。
「また違う子を連れてきたわ、しかも先日よりも更に幼い子よ」
他にも「下着が」どうとか「服の趣味が」どうとか聞こえてくる。
何か言い返したいが、事実だし仕方ない聞こえなかった振りをしよう。
スチイと一緒に店内を見て回ったが子供服は可愛い物しかない、迷ってスチイの下着と部屋着を買う事にした。
「この子、スチイの下着を肌触りの良い物を五枚と、まだ小さいが上半身の下着も軽くて柔らかい物を三枚、スチイと一緒に選んでくれるか」
「はい畏まりました」
スチイは俺を見上げてくる、俺はスチイに頷きで返しスチイの背中を押し店長に差し出す。
俺はこっそりと店長に「下着の内一枚は白地に青で太い横の縞模様の物を頼む」とお願いした。
スチイと店長が下着を選んでいる間に、俺はスチイの部屋着を選ぶ。
少し淡い肌色に近い黄色の生地に柔らかい桃色の星が散りばめられたデザインで肌触りの良い部屋着だ。
スチイの肌は凄く柔らかいから、肌触りの良い生地を選ぶ。
スチイの掌も足の甲も隠れてしまうくらい、大きい服だ。
もう一組と思い上は淡い桃色で下は白、同じく大きい物を選ぶ。
俺の趣味で選んでしまったが、スチイが気に入ってくれるだろうか?
遠くで「恥かしい」とか「まだ小さいから要らないです」とか「柔らかい」など色々聞こえてくる。
俺の方が先に選び終わってしまい、こっそり話し声だけを聞いていた。
スチイの下着も選び終わり、精算して店を出た時には午後一時を過ぎていた。
荷物を抱えたまま、いつもの食事処へと向い歩き出す。
スチイが俺の手を引っ張り言い難そうに、モジモジしながら話してくる。
「あの、こんなに良い服を沢山有難う御座います……その何でもします」
「そうだな、夜にでもスチイが着替えて見せてくれたら嬉しいな」
「わ、わかりました、頑張ります」
頑張らなくても、普通に部屋着を着てくれて少し笑顔を見せてくれれば、それで良いと思う、が本人が頑張ると言うなら好きにさせよう。
スチイと俺は手を繋ぎ数歩歩く毎に、顔を見合わせニコニコながら食事処まで歩いた。
店主に挨拶し宜しくと言うと、店主は頷きで返し、スチイの為に考えた料理だろう、魚介類を外した美味しい物を出してくれた。
スチイも笑顔で食べていて、その笑顔は俺にとって最高の調味料だ。
美味しく食事を頂き、少しゆっくりしてから、勘定してもらいお店を出た。
まだスチイの普段着と装備や靴と布団も買わなければならない。
服が無ければ毎日同じ服に成ってしまう、服屋へと向う。
先程の高級服店とは違い、一般庶民向けの服屋で新品も古着も置いてある。
「スチイ冒険者を目指すなら可愛さより、動きやすく怪我しないように長袖、長ズボンを選んで着る様にしないとなんだ、一緒に選ぼう」
「はい」
スチイは強く頷き良い返事を返してくれた。素直で良い子だ。
ほぼダンジョン用の服だ、無地で丈夫そうな物を上下三着づつ選ぶ。
手袋もスチイ用に小さい物を一組選んだ。
無地の風呂敷が目に入り、スチイの腰に軽く巻いて良さそうなので色違いの三枚選んだ。上にも何かと思い、薄いキャミソールをスチイに二枚選ぶように言う。
スチイはキャミソール選びながら変な事を聞いて来た。
「これは日光浴用でしょうか?」
「うん? 長袖の上から着たら動きの邪魔にならずに可愛くなると思ったんだが」
「そ、そうですか」
なんだかスチイは悲しそうに静かに答えて来た、スチイは日光浴していたと思えるほど日に焼けてはいない、むしろ白過ぎる位だ。
「日光浴したいのか?」
「はい、その、痣も無くなりましたし、お日様が好きです」
成る程、まだ痣は残っているが、数日で治るだろう、今までは苛めと傷痕や痣のせいで日光浴が出来なかったと。思わずスチイを抱き締めてしまった。
スチイは驚いた様に動かなくなり、顔を上に向けている。
「日光浴用の服は俺が選んでやるから安心しなさい」
「はい」
スチイが好きだと言う日光浴用は自分で選びたいかもしれないが、スチイはキャミソールが選び終わっていない、俺が日光浴用の服を選ぶ事にした。
家の裏庭なら塀に囲まれてるから誰にも見られる事は無いし薄着で良いだろう。
日光浴用に薄着を探して大人用の真っ白なTシャツを二枚と、太い腰帯を淡い黄色と桃色の二色を選んだ。
スチイも選び終わったようでキャミソールを持って来た。二枚の内一枚は向こう側が透ける位薄く素肌に着たら大変な事に成りそうだ。少しだけ想像してしまう。
最後に靴下を六足スチイに選ばせてから全て精算した。
お店から出たら服類だけで両手がいっぱいだ、一度家に戻る事にした。
家に着く頃には日が赤くなり始めていて、幼くとも女性の買い物は時間が掛かるものだと実感した。半分は俺のせいだが。
家に帰り空いている部屋にスチイを案内して、買ってきた物を入れる。
部屋にはタンスと椅子と机が有るだけだ、横になれる広さは有るがベッドは置いてない。
「スチイこの部屋は好きに使いなさい、服もタンスに仕舞うと良い」
スチイは部屋を見回し、買って来た服の入った袋を見てから、俺の腰に強く抱き付いて上目遣いに、少し恥ずかしそうにお礼を言ってきた。
「……有難う御座います……あの……その……パパ大好き!」
「パ、パパ?」
「ごめんなさい、あの……」
「いいんだよスチイ、少し驚いただけだ、嬉しいよスチイ、これからもパパと呼んでくれ」
「はい!」
俺の名前を覚えてないだけかも知れないが、俺は「おじさんと」呼ばせるか「お兄さん」と呼ばせるか迷っていたが、「パパ」呼びで「大好き」のオマケ付だ、とても嬉しい。思わずお小遣いをあげたくなってしまうくらいに。
左手でスチイを抱き締め、右手でスチイの頭を撫でた。
一応タンスと机の引き出しを開けて、何も入ってない事を確認して部屋から出た。
スチイが部屋から出てくるまでに、風呂の掃除を終わらせる。
スチイが部屋から出て来たので、スチイの手を引き早足で食事処へ向かう。
家で料理をすべきかとも思うが、卵焼き位しか作れない。
食事処の店主と軽く挨拶をして料理をスチイと二人で美味しく食べた。
食事処を出た時には、日も落ち暗くなっていた、他の買い物は明日にするしかない。
明日以降の予定も考えなければフリーの冒険者である俺は、週に四日はダンジョンに入らなければ冒険者の規定で罰則も有りえる。
今週はすでに日曜、月曜の二日間ダンジョンに入れてない、明日もギルド長との話や装備や布団等の買い物も有る。
家に帰りスチイと一緒に歯磨きをしてから、風呂を沸かした、が人肌かそれより若干温かい程度の、ぬるい湯に。昨日スチイの出た後の風呂と同じ位だ。
スチイは本当に、ぬるい湯に浸って居るのだろうか? 今まで苛めのせいで風呂には入れなかったのだろうか? 色々考えてみるがスチイに聞くか一緒に入るかしないと答えは出そうに無い。
俺は駄目元でスチイに聞いてみる事にした。
「スチイ、イヤならイヤと言って欲しいんだが、俺と一緒にお風呂に入ってくれるか?」
「……はい……その、スチイと一緒で良いんですか?」
「ああスチイと一緒に入りたいんだ」
「パパ、だぁぁい好き! 一緒に入ろぅ」
恥ずかしがって断られると思っていたが、まだ子供と言う事だろうか?
一緒に入ると言われ、むしろ俺の方が恥ずかしくなってきた。
スチイには十分後に入ってくるように言ってから、俺は先に風呂に入った。
俺が体を洗っていたら、十分も経たずにスチイは入って来た。
お互い何も身に着けてない、有るのはタオルだけだ。
体を洗ってる途中だったが、自分の体に慌ててお湯を掛け流す。
断られる前提で一応スチイに聞いてみる。
「スチイ体を洗ってあげようか?」
「パパお願い」
そう言いながらスチイは俺の隣に、しゃがみ込んできた。
可愛いのは良いが、ことごとく予想外で俺の方が緊張するし恥ずかしい。
スチイの体を洗う為に、後ろに座り、お湯を少しずつ掛けた。
「スチイお湯はぬるく無いかい?」
「はい、気持ち良いです」
熱いでも、ぬるいでも丁度良いでも無く『気持ち良い』か? 丁度良い湯加減なのだろうか?
俺はタオルに石鹸を付けてスチイの体を洗い始めた、スチイの体はとても柔らかい、洗いながらスチイを立たせて顔と頭以外は全身を洗い終わって、少し気になり、手でスチイの体を撫でる様に直接触れながら洗った、背中やお腹に二の腕や太腿も優しく手で洗った。少し摘んだり、揉んだりもしてみた。
スチイは逃げたりはしなかったが、擽ったそうにモジモジと動きながら少し笑いを堪える様な『ククク』と声が聞こえた。
「ごめんごめん、擽ったかったか?」
「うううん大丈夫、パパの手が気持ち良かっただけ」
スチイは本当に良い子だ。俺の事を「変態だ」と思ったりしないようだ。
良く触ってみて分ったがスチイの体は柔らか過ぎる、もう少し張りや弾力が有って良い筈だと思う、筋力不足だろうか? 運動を急に止めたり体重の減少でも有ったのだろうか? 今後も定期的に毎日でもスチイの体に触れなければ、下心は少ししかない。
スチイの体にお湯を掛け石鹸を流した。
「スチイ頭も洗うから目を閉じてくれるか」
「はい閉じました」
スチイの髪も洗い上げた。荒いながら頭皮も確認したが、異常は無く安心した。
今なら目を閉じている、まだ目視確認していない所を見るチャンスだが、気配で気付かれるだろう、洗い終わった髪と頭にお湯を掛け流した。
「スチイ終わったよ、顔だけは自分で洗うんだよ」
「はい、パパありがとう」
俺の方こそ「有難う」と言いたいスチイを十分堪能した。
スチイを先に湯船に入れ、俺は途中だった自分の体を洗って流してから一緒に湯船に入った。が凄くぬるい。
「スチイお風呂はぬるくないかい?」
「はい気持ち良いです」
よく分らんが多分スチイにとっては丁度良いのだろう。
「スチイはゆっくりお風呂に入るのが好きなのかい?」
「はい……孤児院ではゆっくり出来なかったけど……パパと一緒なら……」
「大丈夫だ、一緒にゆっくりしよう」
「パパ大好きぃ」
スチイは「大好き」と言いながら俺に重なるように足の上に乗ってきた。
俺の胸にスチイの背中が重なる。
スチイを守るように優しく包み込む。
またしても中途半端になり申し訳なく思っております。
年齢制限に掛かる可能性が有るので、お風呂は一緒に入る予定ではなかったのです。
スチイが少し一般の感覚から外れている気がします。
幼いから?主人公が好き?親が居ないから?孤児院育ちだから?色々原因は有りそうです。
筆者にも想定外の展開です。




