依頼内容
依頼内容の調整と確認です。一人の少女の未来がかかっています。
依頼人のスチイは一人で生活出来る様にして欲しいと言う。
「報酬次第ではそこまでにして貰えるでしょうか?」
「俺も時間には限りがある、目標を見直してみないかい?」
「私は後三年弱で孤児院を出なければ成りません、それまでに先程言った稼ぎに成れないのでしょうか?」
「ダンジョンだけでは無理して死ぬ未来しか見えない、スチイが頑張り屋な事も見れば分るがそれでも一人では五年以上は掛かる、人数を増やせば五階層は二年位でも行けるかもしれないが人数分収入は減る、とても生活までは出来ないだろう」
なんとなく事情が見えてきた、孤児院に年齢制限があってそれが三年弱、それまでに就職先を決めたいが容姿のせいで何処にも雇ってもらえない、ダンジョンで三年弱以内に自立しなければ生きて行けないから焦りもするし覚悟も違うか、その上PTを組むにも容姿のせいで孤児院仲間しか当てには出来ないと来てる。
これだけの美貌だ俺が一生一緒に過ごしても良い、提案をすれば覚悟して受け入れるだろう、だが依頼として考えた場合、達成に成るのか?
「私には他に生きる方法が有りません、私に出来る事なら何でもします報酬も出来る限りなんて言いません何でもします、その代わり生きて行く力を下さい」
何でもします、なんて女性に言われたい言葉の上位だ。本当に何でもしてくれるのかと聞き直したい。
少女の覚悟じゃない、大人でもそこまで出来るか?むしろ大人なら下手したら死を選ぶ、チラリと院長に視線を向けるが報酬に関しても、もう何も言わない素振りだ恨めしくも思える態度だ、昨日か今朝の内に報酬の件は相談済みって事か?ただ言葉だけだで大人の言う報酬を理解してるとは思えないが。
スチイは金髪赤眼で俺の好みだし、体も小さく可愛く可憐だ、抱き枕にしてみたいが強く抱きしめたら壊れてしまいそうにも思える。
スチイを抱き枕にするのは報酬として一考の余地有りだ。
「本当に他に無いのか?例えばシスターや孤児院の運営側には成れないのか?」
「それらは一番初めに考えました。シスターは礼拝や冠婚葬祭に年間行事等有ります、孤児院の経営もシスターが行う事で同様です、私も冒険者以外に無いと考えます」
俺の問いに答えて来たのは院長だった。
礼拝にしても冠婚葬祭にしても、見た目だけとはいえ吸血鬼が居たら、問題が起こる可能性が有るのだろう。
院長まで諦め冒険者頼みなのか神は何をしているんだ神は。
「生活が出来れば冒険者一筋でなくても良いんだよな?」
「それは良いですが昼も夜も働けと言う事でしょうか?」
若干硬くなる様に縮こまり、少し俯きながら上目遣いに聞いてくる。
あれだけの覚悟が有っても、昼夜は働けない事は理解している様で賢い子のようだ。
「それでは生活出来てるとは言わないだろう、その辺は俺に考えがある」
「この場で説明して頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
今度は本人じゃなく院長が説明を求めて来たか。
「俺だけで決められる訳じゃなく知り合いを当たるつもりなので、詳しくは言えないが夜の仕事だ、その分ダンジョンに入る時間を短くすれば半日以上は寝ることも含てめだが、自分の時間が作れるだろう」
「あどけない少女に夜のお仕事ですか? 先日のお店でしょうか?」
院長の若干反対気味の確認か、夜の仕事という言い方が悪かったか。
「夜のお仕事がどんな物か分からないですが、私をノーバン様のお側に仕えさせて頂くという事は出来ないでしょうか? 掃除に洗濯、料理も少々出来ます出来ない事は努力します」
スチイならメイド服が良く似合うだろう、出来ない事は俺が後ろから体を寄せて、手取り足取り教えるのも良いかもしれない。
フリフリの可愛いメイド服を着て、膝枕で優しく耳掻きしてくれるなら一考の価値有りだな。
俺は幸せに成れそうだが、それでスチイが幸せかどうかだな。
「俺も先程、同じ事を考えたがそれでは依頼達成と成らない事と、スチイの幸せを考えた場合、俺には出来ない」
自分の将来に対しての真剣さか、だが夜の仕事の意味も大人の言う報酬も理解して無いだろう、覚悟の程は素直な子供なりと考えるべきか?
「俺の知り合いの店だ俺の事が信用出来るなら店も信用に足り、俺の事が信用出来なければ店も信用出来ないと考えてくれ」
「分りました依頼内容はそれでお願いします」
スチイは俺の事を信用してくれている様だ。良い返事が返ってきた。
「院長も宜しいですか?」
「はい他に手がない以上、ノーバン様を信じます、本人も納得しているようですし」
やっと一つクリアだ、精神的に疲れるがスチイは集中力と判断力が落ちないのか?
「依頼内容の一部として期限が有る、絶対では無いがある程度は決める」
「私には判断できないので内容が達成出来た時が期限でいいと思います」
「なるほど良い意見だ、最短では一週間だが一応二週間は見てくれ」
「二週間で私が生活出来るように成るのでしょうか?」
なるほどそうなるか痛い所だ、依頼内容が曖昧だったか。
「俺の説明不足だ依頼内容は三年弱以内の自立で目標は二年、教育期間は二週間以内が目標で若干の前後だ」
「えっと自立が二年で教育は二週間ですか?」
「そうだ働けば知ることに成るが、同じ店で働いていれば若干では有るが賃金は上がる、ダンジョンも一月で二階層、一年で三階層は行けるだろう、人間は毎日成長する安心しろ、但し続ける事が大切だ」
「はい、宜しくお願いします」
よしよし素直で良い子だ、理解も早い。
「疲れているだろうが報酬の話も今するか?」
「はい大丈夫です」
本当に強い子だ、俺の方が疲労している感じだ。
「教育も報酬も明日からにして貰いたい」
「え! 大人になってからでは? 今はまだ十分な働きは出来ないかと思います」
シスターに、そんな話をした覚えはある、スチイはそれを聞かされていたのか。
どんな働き方を言っているのか齟齬が有る気しかしない。
「いや大丈夫だ、教育期間終了後に勝手に無理してダンジョンで死なれたら俺が只働きになる、報酬は教育期間中はそのつど毎日にしてもらいたい、日払いとも言う」
「報酬に関してはよくよく考えて下さいと、申し上げておいた筈ですが?」
この条件は何が何でも通したい最終的には本人次第だが、その本人の覚悟も今一度確認しなければ、俺も店を紹介する立場として安心して紹介出来る確証は欲しい。確認は早いほうが良い。
「よくよく考えた結論です、俺も冒険者ゆえダンジョンの中で何人もの死体を見てきました、勿論その中にはスチイと同じ年頃の子も居ました、私でさえ無理や油断、判断ミスをすれば死に至ります、ダンジョンとは厳しい世界で人の命は神の手の中なのです」
「神様の手の中ですか?」
神の話はシスターが反応すると思ったらスチイが聞いてきた。
「そうシスターにも言ったが、俺は信仰心では負けるが神の存在は誰よりも信じてる、もしスチイが本気で強くなりたいと思い強くなれば神の書が読める、教会と同じで神の書も全ての人に開かれている、入るか入らないか、読むか読まないかも、教会と同じで本人次第だがな」
「私し冒険者になります強くなって神の書を読みたいです、ノーバン様に全て任せます」
「良い覚悟だ、少しだけ体を見せてくれないか? 冒険者として育てられるかの確認をしたい」
スチイが神の書に興味引かれたのがいい方向に出た、良い感じに話を持っていけた。
「……はい」
「院長はここに居ますか? 一度退室成されるか客室か応接室なの空いて居る一室をお借り出来れば幸いです」
「何をされるのか私は確認の責任と義務があると思います」
「ただの確認です、スチイの為に俺は言っているのですがそれでもですか?」
「はい私も一緒に確認させて頂きます」
話が噛み合っていないスチイの為だと言っているのに、院長は自分の為に見守りたいだけじゃないか、もしかしたら院長の為でも有るかも知れないのに。
「スチイどうする俺は構わないがスチイの為には二人きりの方が良いと思うぞ」
「院長様、出来ればノーバン様に全て任せたいのですが駄目ですか?」
「……明日以降はまた考えますが今日は絶対に見届けます」
流石に仕方なしか。
「もしかしたら院長の為でも有り得るのですがそこまで言うのなら止めません、ではせめてドアの鍵は掛けて窓とカーテンも閉めて下さい」
「分りました」
窓もドアもカーテンも全て閉め薄暗い状態になった。
「蝋燭が必要ですか?」
「いえ蝋燭では暗すぎますから光の魔石を使います」
これは二人とも相当緊張してるだろうな、でもスチイの覚悟も確認したい。
常備している光の魔石を袋から取り出し針で三箇所刺す、まだ少し暗いのでもう一箇所刺す部屋が明るくなり魔石をテーブルに置く、魔石自体は珍しい物では無いが光属性の魔石は初めてだろう。
「スチイ驚いたか?」
「はい始めて見ました」
スチイは赤い瞳で光の魔石と、そこから放たれる光を不思議そうに見ている。
「光の魔石だダンジョンで取れる、神の書を読める様になれば違う使い方も出来る」
「はい分かり易い目標が増えました、とっても綺麗です」
そうか光の魔石に穴の明けた位置と大きさが、たまたま運良く部分的に虹色の光が出ているからか、均等にせず何も考えないで針を刺したのが良い方向に出た。
院長室での話はもう少し続きます。
次話はスチイの身体検査です。健康が確認出来なければ危険なダンジョンには連れて行けません。
必要な事で何の下心もないと思います。




