再会者
冷たく静かな青い月が照らす夜
冷たい石で出来た床に寝転がされていたイオは吐息と共に目を覚ました
「痛ッ……ここ…は?」
知らない天井に腹部の痛み。
想像はしてたけど思った以上に焦ってしまう
イオはアイリスに刺された場所から来る鈍い痛みを抱えできるだけ当たりを見渡した
背後から射す月明かりが照らし当たりは薄暗く
恐る恐る体を動かすとジャラ音を立てる──────鎖。
両足を繋がれているため起き上がろうにもそれは叶わなかった
「どうしようか。」
その一言だ
今現状で出来る事はほとんど無いに等しい
例え鎖を魔法でなんとかしようとしても前回の失敗し足そのものが吹っ飛ぶ可能性もある
それに制御装置だってないし行く宛なんて燃えた村のみ
それに今はまだあの悲劇を思い出したくない。という気持ちが強く、イオはどうすることも出来ずただ時間だけが過ぎていった
色々と考え思いついたところに時計もないこの空間で気づいたら月が沈みピンクに変わっていく空
薄暗い部屋を照らすように差し込む朝日
そこで顕になる鉄格子で仕切られた牢屋のような部屋に朝が来た
時間だけが経つ中、それだけが変わっていく状況にある中でただ1つだけ思った事がある
僕自身ここに入れられている理由は大体わかったとして、そこを利用するとしたらどうなるのだろうか
望みは薄いし確率もほとんど無いけど唯一の方法
「試してみる価値はあるのかもしれないな。」
ふと心の声を呟き、それが始まるまで猶予がある
多くても夜まではきっと何も出来ないはずだ。
なら、と少し暖かくなったこの部屋で静かに目を閉じ一時的に休息をとる
しばらく時がすぎる。
時間にして正午日が真上に登り眩しい日差しが顔を指すと丁度枯れた鉄格子がギギッと音を立て近づいてくる足音はイオの背後で止まる
「やあ8年ぶり。待ってたよ」
どことなく聞き覚えのある声に体を座らせる
そこには白衣を着た中年の男性が紙の束をペラペラと捲っていた
「あぁ久しいな悪趣味な多種名さんもう二度と会わないかと思ってたよ。で?今回の事説明くれるよね」
イオは睨み怒りを顔に浮かべる
相手は何度かお世話になった男性だ
彼のことはよく知るものはいない。
ただ分かっているのは彼の事は夢魔との混血児
呼べる名はイオも本人も知らない戦争孤児で育ちで会う度に名前が違うことから呼ぶ名前がわからない
だからそう呼んでいる
「説明も何も昨日君の自称お友達アイリス・ヴァーミリオンが君を金と引換に持って来た。まぁわざわざ金を1番出しているユースティアに運んでくるから目当てってとこかな訳ありそうだったし
君もつくずく運がないねIR007君」
地図で見て村が西側の最果てにあるとすればここ反対の東側に位置する国だ。
元、イオが住んでいた国に付けられた秘密の名前
誰にも語れないその言葉を吐かれたという事は少なからず平穏無事に帰ることへの難しさが残る
わかっていた。
わかっていたけど今までアイリスを信じてしまってた疑うべき事を忘れていた自分に悔しさが溢れ唇を噛むと血が滴る
「君がどうなろうと興味わかないからさ死体になったら回収してあげる
まぁ?お偉い方は8年前の繰り返しをしようってわけさ軍事的にも強い子はとっても使えるからね」
一昔前、この国には子供は愛を持って育てる事を放棄された時代がある
どんな形であれ放棄された頃は誰だって道具だった
何か思い出したかのようにパンっと手を1度ならし空気が割れる音がした
「渡すべきものを忘れていたよ」
「……お前から渡されるものはろくなものが無い」
「毒を盛ってないだけでマシだと思うなァ」
医者はガサガサと白衣のポケットを探り小さな鈴を投げつける
元々素直に渡すつもりがない為かその鈴はイオに当たりその反動で床にころがり手の上に拾うと、ふと疑問に思い鈴をなんとか耳元で鳴らしてみる
「どうして鈴?しかも鳴らないんじゃ意味無いだろ」
「その鈴は僕らは医者とって、幸運の鈴と呼ばれるもの。それが鳴るとといい人に会えるって言われる代物なんだけど生憎先日もう1個貰ってね。僕は要らないから次会える人にあげようと思ってたら君だった。運が良かったね」
うんうんと自信げに解説した後満足気に納得をしている医者をみて感謝する気持ちが失せる
「わけわかんねぇよ」
「特に意味は無いよほんとにねそろそろ時間なんだ」
医者はイオに頷く合図をする
それを見たいイオもまた同じく了承するように頷くと
どこから出てきたのかわからないスプレーを1回イオに吹きかける
「ごめんね守れなくて」
その言葉を聞くと何故か安心するように胸が撫で下ろした
口では言えなかったけど心でありがとうと呟き意識を失った