決戦 1
場所:地球
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「翔くん、できたよ!」
少女は満面の笑みで俺の方を見た。自分の動作がうまく言ったことに歓喜していた。
「さすがは燈だな!」
上手にできた燈を褒め称えるために頭を撫でてあげた。
「ははは。やっぱり翔くんのなでなでは心安らぐな。毎日してほしい気分」
「燈がまた、上手になったらしてやるよ」
「ほんと! じゃあ私もっと頑張る!」
「俺も負けてられないぜ」
俺は自分の持っている木刀を腰に携え、構える。
上に掲げる形で抜刀。一歩前進するとともに両手持ちに切り替え、振り下ろす。
「やっぱり、翔くんの動き綺麗だな」
動作を終え、燈に向かって「そうだろ!」とキリッとした表情をすると目をキラキラさせながら見とれていた。
「私も翔くんみたいに、キレのある動きができるかな!?」
「練習あるのみだな! 一緒に頑張ろうぜ!」
「うん! 翔くんがいれば、安心だな」
「任せとけ任せとけ。俺が燈の師匠になってやる!」
「よろしくお願いします、師匠!」
そんな仲睦まじいやりとりをして、また二時間ほど俺たちは互いに動作の確認をしながら練習をしていった。
帰宅時間になっても、俺は自主練と称してさらに一時間ほどまた稽古に励む。燈は俺の様子を見て、自分も自主練をしていた。
だから帰る時間はいつも一緒。ある程度、日も暮れてしまっているため燈を家まで送る。
「いやー、今日もいっぱい練習したな」
「でも、明日もまたやるんだよね?」
「もちろん!」
「ふふふっ。私も頑張るもん!」
俺の言葉に「私も負けていられない」と手を前に出し、拳を握る。
「燈がいてくれて、本当に良かったなー」
「どうしたの急に?」
「こうやって、切磋琢磨し合える親友がいるともっと上手になれる気がする」
「親友……」
唐突に言葉を詰まらせる燈に、思わず彼女の方に顔を向けた。
ほおを朱色に染め、親友という単語を何度も繰り返している。
「どうかしたのか、燈?」
「え! いや、その……翔くんから親友って呼ばれたのが嬉しくて」
「親友だぜ、燈は! 俺の中ではかけがえのない大事な人だよ」
「そ、そうなんだ。私も、翔くんのことその……大好きだから」
燈は自分の言葉を呟いた後に、体を身震いさせ、口を押さえる。
「えっと……今のは違くて」
「何言ってるんだよ。俺も燈のこと大好きだぜ」
俺の言葉は本心からだった。一緒に切磋琢磨できる燈のことを好きじゃないわけじゃない。
「ほ、本当に?」
「本当、本当」
凛と光る太陽のような笑みを見せる。あまりの眩しさに思わず、目を瞑ってしまいそうだった。
「まあ、今は親友というよりは弟子だけどな」
話をそらすため一度ボケてみる。
「そうだった。頼りにしてます、師匠」
俺のボケは華麗にスルーされ、燈は両手を前に出し、拳を握って俺をみる。その動作に思わず、どきっとした。
「あかりー」
楽しい会話で盛り上がっていたからか気がつけば、燈の家の近くまで来ており、燈のお母さんがこちらに向けて手を振っている。
「お母さん、ただいま」
「おかえり、燈。翔くん、いつもありがとうね」
「いえ、これは男の仕事ですから」
「ふふふっ。翔くんならいつでも燈を任せられるわね」
「どんとこいです!」
「頼もしいわね」
「翔くん、いえ、師匠。今日はありがとうございました。また、明日もよろしくおねがいします」
燈はぎこちない敬語で俺へと言った。俺は「任せなさい、弟子よ!」と決めポーズをしながら言う。
そして、二人に見送られながら自分の家の帰路を歩いていった。
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自我を取り戻すと、物同士の衝突音が耳へと入って来た。衝突だけなく、引きずっている音も同時に聞こえてくる。
少し時間が経ったところでそれがチョークで書くときの音であることがわかった。
ようやく状況が飲み込めた。
俺はまた夢を見ていたようだ。
決意してから一週間弱、疲れからか毎日昼頃に気がつけば寝てしまっている現象をよく起こしていた。
その時に見る夢は燈とのかけがえのない思い出だった。
あの事件の日を境に失ってしまった自分という存在。自分の声の調子も話し方もすっかりとできなくなってしまっていた。
正直、夢で見た自分は今の俺の憧れでもあった。憧れではあるが、もう二度とあんな風には振る舞えないだろう。
でも、燈のことは違う。変えられるはずだ。また、戻せるはずだ。あんな風にまた二人で笑いあって、話せる日々を。
きっと今日がこの関係性の境目になるのだろう。良くも悪くも変わることは否めない。
スパイダーと名乗る組織との約束の日。
俺が燈にしてやれることを全てしてやろう。この一週間で仕込みは十分だ。
俺は再び、ノートと黒板を照らし合わせ、授業を受け始めた。




