第85話 ホトトギスがッ 鳴くまで 殴るのをやめないッ!
前回に引き続き、三人称です。
『ピョンギヌスの槍』
ウサタンは、ドン・グリードの亜空間格納庫から、この漆黒の二又の槍を見つけた。
もともとこの槍が、どういう経緯で手に入ったかは、知るよしじゃないが、ウサタン曰く、ヒパビパの能力が関係してるとみているらしい。
「な、なんじゃその槍はぁ!わしの泡じゃ洗いきれん、一体何年怠けちょったら、そがに穢れた力が手に入るんじゃ?」
アードバーグはピョンギヌスの槍を携えるウサタンに何度も泡を吹きかける。
しかし、いくらウサタンを洗ったところで、禍々しいオーラや穢れはすぐに、湧き出てくる。
「まず最初に、君には消えてもらうよ? ここはミーナちゃんにやってもらおうかな?」
ウサタンは獣人とは思えないほど冷酷、非道、残酷な性格に変貌した。
もっとも、それがピョンギヌスの槍を手にした事による高揚感によるものか、あるいはウサタンの本性なのか?
彼の心境はわからないが、どちらにしてもウサタンがロクでもない事は確かである。
実際、ウサタンは洗脳しているミーナに手をかけた。
ウサタンの魔眼の力がミーナに伝染し、彼女の瞳が紅に染まる。
すると、ミーナに変化が起こった。
彼女は黒い霧に包まれ、見た目が変化する。
いつもの、白や桃といった涼しげな色をした衣装
から黒を基調としたものに変わった。
彼女の頭には黒いウサギ耳。
背中や肩や胸元は大胆に露出し、ボディラインがはっきりするほどぴっちりした衣装に変わった。
下半身には黒のレースを纏っているので、ドレス姿にも見えるが彼女の脚は鼠径部あたりから露出しているハイレグだ。
それらは、レースなので透けてしまいよく見える。
ミーナは、いわゆるバニーガールになってしまったのだ。
ミーナの表情は変わらない。
「なんじゃと……」
アードバーグは彼女の変わり様に驚いた。
ミーナはアードバーグに一歩、また一歩と歩み寄る。
大天使は魔王によって堕とされた。
ただならぬ雰囲気を放つミーナに、アードバーグはショックのあまり動けなくなった。
「おい小僧? お前、覚悟出来とるんかのぉ? ミーナ嬢にこがな事したら、ダイコンが黙っとらんで?」
虚ろな表情で、声を震わせながら、アードバーグは喋る。
「ふーん? まぁ、僕の洗脳を解いたらしいし、強いのは強いんだろうね? でも僕にはミーナちゃんっていう眷属とピョンギヌスの槍があるからねー? 野菜獣大根の一匹程度なんて屁でもないや」
ウサタンは自身満々だ。
アードバーグの忠告を半笑いで否定した。
「きーーー!さーーー!!まーーー!!!」
「「……!?」」
アードバーグとウサタンは何やらこちらに近づいてくる声に反応し、そちらに視線を向けた。
「ダイコン!」
アードバーグはその声の主の名を叫んだ。
重巡ダイコンデロガが、ウサタンめがけて、鬼の形相で突っ走ってくる。
彼の触手にはクレアから奪った聖剣が握られているので、赤筋大根となっている。
その赤筋と相まってか、大根の表情が今までにないほど怒りに満ち溢れたものになっていた。
「あはは! 来たね!来たね大根! どうかな新生ミーナちゃんの姿は? 僕の趣味で仕立てたんだけど君の意見を是非……うわあああああああ!!!」
突如ウサタンが吹っ飛んだ。
どうやらダイコンデロガの持つ聖剣の電撃によるものらしい。
「なんでだ! なんでだ!?何晒しとんじゃウサ公! ファック! そしてファック! WTF!
おんどれ、ウチのミーナちゃんになんて格好させとんじゃ、このモフモフペリカン野郎!
ミーナちゃんはなぁ……、ミーナちゃんはなぁ! 紛う事なき大天使なんだよ!
ミーナちゃんに性的魅力なんて要らない!そんな物は想像の域や、『薄い本』でのみやるべき行為だ! 穢れる事は許されない偶像的存在だ!
その大天使にそんな小悪魔的セクシーな衣装をさせる事は、ラノベ作品の実写映画化よりも禁断の業なんだよ!
それをてめぇ、よくもやってくれたな!
これがクレアなら、テメェと和解も出来たかもしれねーが、ミーナちゃんはダメなんだよ!
どうしてその判断ができねーんだよ!
お前一応魔王なんだろ!? 魔王ならそこら辺分かれよ! わからないなら魔王を辞めちまえ! 町内会長になってゲートボールしながら楽しく余生をおくってろ!
しかもなんだよ、あの下半身は! 黒レースじゃ透けちまうじゃねーか!
あーもう!鼠径部がめっちゃエロい! この野郎許すまじ!!!
テメェのケツアナに爆竹突っ込んで、お月様までサメと一緒にうちあげてやるぅうう!
この世界に大黒様がいない事を、悔やむがいいさ!!!」
ダイコンデロガはミーナちゃんの姿に激怒した。
その怒りの矛先は、ウサタンに向いた。
ウサタンが犯人だとわかる辺り、ダイコンデロガはどこかに潜み、アードバーグとウサタンの様子を伺っていたのだろう。
ダイコンデロガが飛び出したのは予想外だったらしく、ドン・グリードや刻甲といった面々も姿を現した。
ダイコンデロガは怒りの余り、ウサタンの胸ぐらを掴み、後半自分でも何が言いたいのかよくわからない苦情を述べている。
それにはウサタンも困惑している。
「えぇ、ちょっと大人しくしてって……落ち着いて! ね? ね!?」
とても迷惑そうな顔をしながら、ウサタンはダイコンデロガをなだめる。
「知った事かぁ! ミーナちゃんを元に戻せ! 知ってるか? 俺の生まれた国にはなぁ『鳴かぬなら、鳴くまで殴ろう、ホトトギス』って言葉があるだよ!」
*ありません。
「ええ!?」
嘘を吹き込まれ、ウサタンは更に困惑する。
まさか大根がここまで野蛮だとは思わなかったからだ。
ダイコンデロガはウサタンを根っこ触手で縛り、ウサタンを殴る事にした。
『ホトトギスがッ 鳴くまで 殴るのをやめないッ!』
「ぐふぇー!」
邪悪にして非道。
そう呼ぶのが相応しいのが、ウサタンなのかダイコンデロガなのかは、もう誰にもわからないのである。




