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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
狙われた王族・敵になると強くなる仲間編
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第77話 お前の兄貴になってやるから、俺の姉になってくれ!


「ふふふ……、せっかく私を愛してくれた人、シオン母様を見つけたのに、なんでこうなるだいや……」


「ははは……、異世界に大根として生まれ変わってから、前世とは違ってかわいい女の子に囲まれてたのによぉ……、まさかウサギに持ってかれるなんてなぁ……」


「「はぁ〜」」


刻甲と鳩尺様のお陰で、ウサタンと洗脳されたクレアやレイラ達から無事逃げる事が出来たが、俺とダリアちゃまの気分は、だだ下がりである。


今は安全そうな物小屋に潜んでいる。


敵にしてみてわかってが、レイラはこういう時恐ろしい。暗殺者という称号は伊達じゃない。

フーリー戦、リスマグロ戦、ビビンバ戦といったようなレイラの戦績は良くないが、盗賊団の件にしても、工作や秘密裏での行動においては秀でた才能を発揮する。

シギアゲートでは、初めて歩く広大な町の道を瞬時に理解し、覚える事ができる。


故に、今俺達が隠れている場所など、すぐに見つけてしまうだろう。


定期的に潜伏場所を変えなければならないのは辛い事だ。




「これで、また私は、一人になった……。 誰も私を愛さない、私を救わない……、あのウサギが妬ましい! なんで小動物は無条件で好かれるだいや!? メシ喰って、糞して、寝とるだけだがな! どこに愛される要素があるだ!」


ダリアちゃまは、身体を丸め、体育座りをしながらブツブツと呟いている。


完全に目がイっちまってる。

ヤバい。関わりたくない。

しかし、関わらなくては事が進まない。

こんな時に刻甲と鳩尺様は、どこかに行っちまっている。


そういえば、俺はダリアちゃまから話しかけられた事が無いな。

話しかけられたように見える言葉は、基本的に独り言であり、俺に向けて放った言葉ではない。



「俺もあのウサギ嫌いだな。 なんつーか、出会った時からずっと、見ててイライラしてくるだ。 理由はわかんねーけどな」


俺は独り言をつぶやいた。

ダリアちゃまの独り言に対しての独り言だ。

別に彼女からの返答を期待しているわけではない。

訳ではないのだが……。

今は虚しい。

俺も愛が!

優しさが欲しくなってきた。

ダリアちゃまに関わりたくないと言っていたが、状況が状況。

欲張りは出来ない。


まぁ、俺が今欲しいのはダリアちゃまみたいな母性的なものというより、姉属性的な優しさが欲しい。


「あのウサギさえいなければ、俺は幸せでいられたのにぃ! おのれ、モフモフラビット! ゆるせん!」



「ふーん、お前もそう思うだかー?」


「え?」


ダリアちゃまと目が合った。


彼女は俺に向かって質問してきている。

ダリアは「ウサタンの事が憎い!」「ゆるせん!」という俺の言葉に反応したようだ。


話しかけられる事が予想外だったので、鳩が豆鉄砲をくらったように、呆けてしまった。



「お、おう、当たり前だろ! 絶対あのウサギは怪しい! げっ歯類連合幹部って理由じゃなくて、根本的にあのウサギはヤバいぜ!」


「ふふっ……、そうだでなぁ! やっぱそうだがな! ダイコンよ、お前は見る目があるなぁ!」


俺と意見が一致したのが嬉しいのかダリアちゃまの口数が増えてきた。


「さっきも言ったけどなー? なんで動物ってのは何もせずに可愛がられるだ? 可笑しいだろ〜? 私なんて、王族の長子として、あれこれ無理矢理に習わされ、やらされとるのに、一度も褒められた事ないだで! 可笑しいっちゃこんなん!」


「そうなんだー」


ダリアちゃまの中で、何かスイッチがオンになり、彼女はひたすら愚痴を吐いてくる。


俺は適当に相槌をうつ。


「レイラにしてもなー、双子の妹ってだけで私と全然扱いが違うだで? 私なんか、父上に泣かされるまで怒られたのに、レイラは少し叱られる程度で終わるだで? 周りの侍女も『お姉さんだからしっかりしなさい』って言うだけ! 双子に上下なんか無いが! こんなん不条理だがな! この差なんなん? 私の事みんな嫌いなん?」


「ふむふむ、そかそかー」


ダリアちゃまは、更に語る。

ここは聞くことに徹するのが良さそうだ。

下手に諭したりすれば、逆に俺がダリアちゃまに吠えられてしまう。


右耳から来た愚痴は、左耳で排出しよう。


「じゃあ、ダイコンも私を愛してくれるか?」


「いいよ、いいよ、大丈夫だ問題ない」


ん?

今ノリで相槌及び肯定してしまったが、ダリアちゃまは変なことを言ったぞ?


さては、ハメたな!?

ゲームで、会話をボタン連打で飛ばし続けてたら、ボス戦突入したみたいな感じなんすけど!?



「あ、そうだ! なぁダイコン? 一つ頼まれてくれんか?」


「え?」


ダリアちゃまの言葉を適当に聞き流していた事が災いし、彼女に頼みごとをされる。


気のせいだろうか?

愚痴を聞き始めた時よりダリアちゃまとの距離感が半端なく近いんだけど!

おまけに馴れ馴れしく、ウキウキとした表情をしている。


愚痴を聞き流し、適当に相槌を打っているだけだったが、逆にそれが彼女に『愚痴を聞いてくれた良い奴』と認識されてしまい、何をしなくても好感度を上げてしまったのだ。


現状は大丈夫じゃない、大問題だ!


おそらく今まで、誰にも自分の気持ちを、満足に話せた事が無かったのだろう。

なんて可愛そうな子!



「そんでなー、お願いって言うのはなー?」


ダリアちゃまの言葉に、俺は生唾を飲み込んだ。


何を要求されるんだ?

今のダリアちゃまの眼には、ミーナちゃんに似ているようで似ていない狂気が放たれている。

しかし狂気には違いない。何を要求する気だ?


「なぁ、大根! シオン母様を仔ウサギから取り返すまで、私の()()()になってくれんか?」


……???


……はぁ?

コイツ、今なんつった?


「あの、俺、大根だぞ? それに中身は男だ。 父親の代わりならともかく、母親なんて無理っしょ?」


「……???」


俺はダリアちゃまの珍言に引きながらも、なんとか対応していく。

しかし、俺が言う事を理解出来ないのか、ダリアちゃまは首を傾げている。


「何いっとるか、分からんぞなー」


なんでやねん!

分からんのは、お前じゃい!


「私の好きな書物では、男も母親や妻になっとるし、ダイコンでもなれると思うで? かっこいい男の母とか欲しいが!? 朝に優しく起こして欲しいぞなー?」


「いや、知らんし……」


【速報】ダリアちゃまは、夢女子だったようです。

俺が人間だった前世なら、このお姫様はコミケ2日目を大いに楽しんでいる事だろう。


もう俺、ダリアちゃまから距離置きたいよ。


けど、責任という物が重くのしかかってるし、見捨てるわけにもいかない。


ここは、ダリアちゃまからの、抱擁するという要求を叶えつつ、彼女の性癖……ではなく、性格を矯正させなければならない。


という事で俺は、彼女に提案を出した。


「じゃあ、こうしよう。 俺はダリアちゃまの兄貴になってやる! なんかあれば俺を頼れ!」


父親はおろか、母親になんて慣れるわけないので、ダリアちゃまの兄貴分という立場になろう。

それが一番健全だ。


「むむ、兄? 兄者か! なるほど、それでもいいで!」


お? 案外兄属性でもいける口のようで、なによりだ。


「ただし、条件がある!」


「条件……!?」


俺は間を置き、話を続ける。

ダリアちゃまは、固唾を飲み込み、俺の台詞を待つ。


「お前の兄になってやるから、代わりに俺の姉さんになってくれ!」


「え? ……えぇ!?」


ダリアちゃまは俺が出した条件に、二重に驚いたようだ。


「それって、どういう事? ダイコンが私の兄で」


「そして、ダリアちゃまが俺の姉だ」


「???」


おお、いい加減に困惑してやがるな。


ダリアちゃまの拗らせた性格を治すには、この方法が良いだろう。


俺自身、この提案を思い浮かべた時は、頭の中が、クラインの壺、メビウスの輪のようになったからな。



俺は、ダリアちゃまの兄であると同時に弟だ。

ダリアちゃまは、俺の姉であると同時に妹だ。


ごめん、自分でも何言ってるかわからなくなってくる。


哲学というものは難しい。


まとめると、共に支え合おうという意味なのである。


「私、姉はいやだで!」


「でも、同時に俺の妹でもあるんだよ?」


「……!? ……!?」


責任ある立場にはなりたくないダリアちゃまが、駄々をこねるが、意味はない。


「よくわからんけど、私の兄になってくれて、私を愛してくれるなら、なんでもいいで」


ダリアちゃま、ついに妥協した。


交渉成立!

俺とダリアちゃまは握手を交わした。


よし、これでダリアちゃまと、不思議な絆を結べたし、刻甲が帰ってくるなり、打倒ウサタンなら向けて作戦会議ができそうだ。




事は急に動きだす。

それは、ダリアちゃまと兄妹姉弟(きょうだい)の盃を交わした瞬時にも起こるものだ。


突如、俺達が潜んでいる物小屋の扉が乱暴にひらかれた。


最初は刻甲が敵に追われて、急いで戻ってきたのかと思っていた。


しかし、ここにやってきた人物は刻甲でも鳩尺様でも無かった。


招かれざる客の事は俺は知っていた。


大きな尻尾が特徴で、茶色い毛に、2本の前歯、つぶらな隻眼の眼帯をつけたリス人族だった。


「ドン・グリード!?」


「……貴様は!?」


俺と奴は目が合い、違いを認識した。


ドン・グリードはげっ歯類連合の幹部だ。

つまりウサタンと仲間だ。


俺は根っこ触手を生やし、戦闘状態へと気分を切り替える。


ダリアちゃまを背後に隠して、俺とドン・グリードの間に緊迫した空気が流れる。


「……貴様になら、やられても文句は無い。 やれよ」


「え?」


ドン・グリードの口から信じられない言葉が放たれた。


よく彼を見ると、まるで財産すべてを失った浮浪者みたいな表情をしている。


「なんとか、ウサタンの奴から逃げてきたってのに、今度はお前らか……、俺もついてねーな」


ウサタンから逃げてきた?

どういう事だ? 仲間じゃないのか?


「一体、お前は何を言っている? 何があった?」


俺はドン・グリードに同情したわけではないが、以前の彼との変わりようには、理由を聞かざるを得なかった。


「へへ、……いいだろう、教えてやるぜ。 俺はウサタンっていうウサギのクソガキに、能力を奪われちまったって訳よ! バカだよなぁ〜あの野郎を信じるなんてよ〜」


ウサタンに能力を奪われた?

どういう事だ?

ドン・グリードの表情に声色から察するに、奴は嘘をついていない。


ここはドン・グリードから詳しく話を聞いてみよう。





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