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DIE CORN 〜転生したら大根だったがな!〜  作者: 瑞 ケッパオ
バーディア砂漠・ハムスター人族編
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第70話 ハムスターアストラ


まさかの重い展開にショックを受けてしまったのか、クレアの動きが鈍くなっている。



「くらえ!ハムスター人族の誇る神から授かりし矢(アストラ)を!いくぞみんな!」


ハムスター四天王が声をあげる。


「いくぞ! ハムスターアストラ九連星!」



四方から雷の矢のごとく、車輪にのるハムスターが迫り来る。


逃げ場はひとつしかない。


クレアは上方へ飛ぶ。

赤筋大根、根っこ触手の力をサポートに、かなり上空へ、その身を飛ばす。


「そんな事は予想している!」


ハムスター9匹も、空へ軌道を変える。


「飛べるんかい!」


俺は当たり前の様に飛んでくるハムスター達に、つい突っ込んでしまった。



「ふっはっは! 高速で車輪を回せば、突風を生める。

さらに落下する速度よりも高速で車輪を回せば、飛ぶ事など他愛もない!」


ハムスター四天王、サーロイン・ベガが自慢げに説明してくれた。

なんという、とんでも理論。君らの周りの物理、バグってない?



「いくぞみんな!」


「「「おう!!!!」」」


ハムスター達が乗る車輪が芋虫のように、一列にくっつきだす。

すると、彼らからおびただしい量の電気がほとばしる。



「これこそ、最高最強の必殺! ヴリトラ・ハムスタートレイン! ハムスターアストラの9倍の威力があるのだ! かつての天王の名を冠するこの技で死ぬがよい!」


ヴリトラなのに、雷属性なのか……。



うわー、すごくバチバチしてるよ、この……龍? ハムスター? それとも車輪……?


もうダメかもしれんね?



「よしダイコン、今こそ全力をだすぞ!」


「おう!」


ダメだと思った? な訳ないじゃん!

まだ、『大根ランス』の力を全然使ってない訳でしてー!


俺はクレアの合図とともに、彼女にありったけの野菜エネルギーを供給し、彼女を強化させる。


クレアの身体に紋章のような赤いオーラが、浮かび上がる。


「クレア? その、大丈夫なのか? 奴らに同情した?」


俺は、彼女に率直に質問した。


「ああ、自分で尋ねといて、色々考えさせられてしまったよ」


うーん、やはりクレアのテンションは低いままだ。 このままでは、とっておきの大根ランスの必殺技に支障が出てしまう。


「安心しろ大根、考えてたら、私なりに答えは出たよ。 げっ歯類連合の野望は止めるが、彼らの寿命の問題は解決できるかもしれない」


「え、マジで?」


何やらクレアは、良い案を見つけたらしい。



「奴らげっ歯類、ネズミといった獣人の寿命が短いのは、単に衛生意識と危機管理能力が低いだけなんだ」


「なんだそれ!? 生活を見直せば解決できるのか?」


「ああ、そうだ。寿命が短いとはいえ、本来、ネズミ自身は、人生を短いとは思っていない。ネズミは、一日に何度も寝食を繰り返すからな、時間の感覚が人とは違うのだ。

げっ歯類の獣人は、そんな一日に何度も寝食を繰り返す事はしない。

昔、ジェイクから聞いた事だが、ネズミ獣人の死亡原因は、衛生管理能力の欠如による伝染病か、危機管理の欠如による事故死がほとんどなんだ。 昔に聞いた事だったんで、忘れてたよ」


なるほど、つまりネズミ獣人の寿命が短い理由って自滅って事?


確かに、今まで多くのげっ歯類に出会って来たが、基本的にどいつもこいつも、命知らずだもんな……。




たまたま俺達が出会ってきたげっ歯類が、高スペックな個体だったから良いものの、ヌーターンにしても、いつ死んでもおかしくなかったからなー。




気づけばクレアは、さっきとはうって変わり、疲労を感じさせない涼しい顔つきとなっていた。

鼓動も呼吸も正常だ。


今の彼女は、無心に近い状態だ。

あらゆる雑念を受け付けない。



「うぉおおおおおッ!!」


クレアは雄叫びを上げると、下から迫るハムスタートレインに向かって槍を突き下ろす。


そして両者がぶつかる。



激しい閃光と衝撃で、当の本人である俺は何が起こったか理解が追いつかなかった。



両者が激しくぶつかり続ける。

当然だが、どちらも譲らない。


ハムスターとぶつかる根っこが熱い。

赤筋大根の身でも、これほどに熱を感じるというのは、ハムスターの必殺技が、それほど強力だという事だ。


「まだまだ! いくぞみんな!」


「おう!」


ハムスター達は諦めない。


9人全員が、心と力をひとつにしているのだ。


だが、それはこっちも同じだ。

クレアに持たれると、振り回されて、遊園地のコーヒーカップに乗った後のように気分が悪くなるが、そのリスクを犯してまで、この大根ランスをやる価値はある。


「やっちゃえクレア!!」


俺はクレアに一声かける。


「……!!?」


クレアは無言だが、更に力を使っていることがわかった。



「な、何! 力が吸い取られていく!?」


ハムスター達は自身らに起きた変化に気づいた。



長い事、技をぶつけていれば、両者疲労する。

力を先に使いきった方が負けだ。


俺達もハムスター同様に、力を使っている。


しかし俺達は、ハムスターと違って、今この状態において、エネルギーが尽きる事は決してないのだ。


俺とクレアは、赤筋大根の力をものすごい勢いで消費する。


同時にハムスター達にぶつかっている根っこの先端が、ハムスター達のエネルギーを吸収してもいるのだ。



残念だが、ハムスター達には負けてもらおう!



勝ったァッ! イエイ!



「そ、そんなー! 我々ハムスターが負けるはずがー! うわぁあああああああ!」



大根ランスによって、稲妻の龍と車輪は、クレアに貫かれて消滅した。



車輪を失ったハムスター9匹が、地上のチーズにベチョリと落下した




・・・




「危機管理、衛生管理に気を付けろだと? ……つまり、その2つを見直せば、我々ハムスターの寿命は伸びるのだな!?」


「そーだよ、砂漠で砂嵐が起きる事とか予想してなかったでしょー?」


「むむ、……言われてみれば確かに! うちの爺さんは、興味本位で筒に体を突っ込んだら、抜けなくなって餓死したって聞いたぞ!」


サーロイン・ベガが思い出したように呟いた。



「そのサーロイン・ベガの爺さんが筒にハマった姿がツボに入った俺の爺さんは、笑いすぎて死んだぞ!」


サーロインの言葉を補うように、ハラミ・スピカが喋る。


「そういえば、俺の親父は、漢らしさを示そうとして、液体窒素を飲んで死んだぞ!」


などなど、次々にハムスター達は、自分達の普段の行いを省みている。


危機管理の無さが、本人達も理解できてるようで何よりだ。


これで、少しは平均寿命を上げる事が出来ただろう。めでたしめでたし。



「いいだろう!……わ、我々の負けだ! しかしげっ歯類連合には、俺達よりもずっと強い幹部がいる! 首を洗って待ってるが良いぞー!」



そういうと、ハムスター人族9名は、逃げるようにどこかへ走って消えた。


とりあえず勝った。

色々とネタとチーズにまみれ、重い展開も加わるというクソみたいな戦いだったが、バーディアでの初戦は勝てたのでいいだろう。


「なかなかに良いものだ。使いやすいし、強力だ。たしか『大根ランス』だっけか?」


「あたぼーよ! エネルギーを吸収もできるんだし、実質最強の組み合わせでしょ!」


俺はクレアと、大根ランスの使い勝手について話しながら、ミーナ達と合流するために町へと戻る。



「その、なんだが、あんなに強力な技なら、もう少し良い名前を考えてみれば良いんじゃないか? 『大根ランス』はどうかと思うぞ?」


クレアにそんな事提案をされた。


彼女の言う通り、考えてみれば俺って自分の使う技の名がどれもシンプルだな。


安直で覚えやすいから、俺はこのままがいいんだがね?


そもそも、『ねっこ触手』も『ネッコボルグ』も、今や仮名が真名みたいなもんだし。

変に名前をつけても、今更覚えられねーじゃん!



「ちゃんとした名前があった方がいいの?」


「ああ」


クレアは腕を組みながら深く頷いた。


「じゃあ、ミーナちゃんに相談するけどいい?」


「それはダメだ! 絶対にだ! お前も彼女の被害者だろう!?」


クレアは、自殺を止める感じに諭してくる。


「じゃあ、『ハムスタースレイヤー』にするわー」


俺は名づけるのが面倒なので適当に候補を挙げてみた。



「……ミーナに名付けられた事で、心を病んでいるとはな。 ……気づけなくてすまない。 今回の話はなかった事にしよう」


クレアはタブーに触れたように、同情しながら、俺に憐れみの視線を向けてきた。


なんか勘違いされてしまう私、ダイコンデロガなのであった。


でも、名前を決めなくて良くなったし、結果オーライである。




・・・




ここは、バーディア王都の王宮。

現在、王宮の玉座にはバーディ国王ファルボドが佇んでいる。


その周りには、ファルボドを護衛する近衛兵達がいる。


彼らは、とある人物を睨みつけている。


「どーも、どーも、ファルボド・アスファ王さん!それに、兵士のみなさん! ご機嫌如何ですかな?」


ファルボド王が睨む相手、その正体はマジシャンのような格好をしたカピバラ人族、ヒパビパだ。


「な、何をしにきた? これ以上国を苦しめて何が目的だ!?」


王は目の前にいる人物が、カピバラだとは思えなかった。 カピバラの皮を被った悪魔と言った方が納得がいってしまう。


「今回は、この国に囚われているという、伝説のテロリストを解放してもらいたいのですよ」


ヒパビパは、営業スマイルを浮かべながら、一国の王相手にフレンドリーに話す。


「テロリスト……だと?」


それまで平然を装っていたファルボドの表情が、誰が見てもわかるくらい揺らぐ。


周囲の兵士達からも、どよめきの声が聞こえる。


「ええ、伝説の革命家であるハダカデバネズミ人族のカクサヌ・ゼン・ラディンの解放を願いたい」


「カクサヌ・ゼン・ラディンをか!? 貴様正気か! あのまるだし野郎(ネズミ)が、どんなにこの国の民草を怖がらせていたのか知らんの……」


「知ってます。知ってるこそ、解放してほしいのです。 英雄は多いほど面白くなる……、トトンヌ殿ならこう言いますしね」


ヒパビパは、ファルボドの問いを遮るように応えた。


「断ったらどうする?」


ファルボドは恐る恐る、不発弾を処理するが如く質問する。


「あー、そうなれば、貴方がシギア峡谷へ我々にバレずに逃がせたと思っている一人娘が、どうなるかわかりませんね? つかまれば胴上げされてしまうかもしれませんよ?」


「なんだと!?」


ファルボドは、このカピバラの情報収集能力を侮っていた。

確かに、彼には危険から遠ざけるために、一人娘である姫をシギア方面に逃がしている。


娘の安全には変えられない。

しかし、ゼン・ラディンを解放してしまえば、この国に住む民、数万人の安全が脅かされる。


「だ、ダメだ」


ファルボドは要求を断った。

娘には、優れた護衛も付けている。

げっ歯類連合が優れた人材を持っている事は、知っている。

しかしそれは、バーディア国も同じ事だ。


「あら、これは意外ですね。 自分の娘よりも国民を優先するとは、貴方は良い王様なんですね〜。

いいでしょう! 特別ですよ」


「諦めてくれるのか?」


ファルボドは安堵した。

ゼン・ラディンを解放する事が、どんなに危険な事か彼らカピバラも知らない事はない、ファルボドはそう思っていた。


「じゃあ、お姫様も捕まえて、ゼン・ラディンも解放しちゃいましょう!」


「き、貴様、最初からそれが目的で!?」


ヒパビパの狂ったような言葉に、ファルボドの表情が引きつった。


「はい」


ヒパビパは、『はいじゃないが!』と突っ込みを入れたくなるほど素直に返事をした。



ヒパビパは何やら合図を後方に出すと、そこから数人の獣が現れる。


トトンヌとウサタン、ヤンマーマに、先日シギア峡谷でマグロとともに大根に敗北したドン・グリードの4人だ。




「これより、この王宮は我々の物とさせてもらいます」


ヒパビパの言葉を最後に、4人は王宮の兵士やファルボドに襲いかかった。



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