第68話 大魔術アトミック・チーズボンバー
「うぉおおおおおおお!! げっ歯類連合の怨敵大根めぇ、覚悟しろー!」
無数のハムスター人族が攻めてきた!
町中での戦闘も考えた。
しかし、幼い頃より巨大ロボットや怪獣との戦いで、街が壊されていくのをみて、『街の復興は大丈夫なのだろうか?』と変な心配をしながら、特撮番組を見ていた俺は、この町へのリアルな被害を考え、安全だと思われる辺境まで移動した。
(俗に言う井上ワープである。)
俺は赤筋大根になり、迫りくるハムスター人族どもに、飛び蹴りを放つ。
「「「「「うわー!」」」」」
たった一度の飛び蹴りと、その衝撃波で数十のハムスターが吹っ飛んだ。
しかしハムスター人族は怯まない。
それから飛び蹴りや、根っこ触手にネッコボルグを使い、ハムスター人族に攻撃を仕掛ける。
攻撃すればするほどハムスターは沢山吹っ飛ぶ。
実際、俺は無双しているが、ハムスターは怯まず走ってくるので、実質劣勢に違いない。
「ダイコン! 目を閉じろ!」
支援に徹するクレアに声をかけられる。
目の前にはハムスターがもうすぐ近くにまで、迫ってきている。
クレアはこんな時に何を言ってるんだ?
俺はクレアに疑いの眼差しを向けるが、彼女は本気で目を閉じろと言っている。
なら、ここは彼女を信じよう。
俺は目を閉じる。
それを確認したクレアは何かを足元に置いた。
まだ、ハムスターが迫りくる足跡が、ドコドコと聞こえる。
「ああ!! 目に砂が入っちゃった!?」
「ゲホゲホ! 口にも砂が入っちゃった!? ぺっ! ぺっ!」
ハムスター達の動きが止まった。
突然、風が吹き始めた事で砂が舞い散りだしたのだ。
目をつぶっていても、体中に砂粒が当たってくるので、クレアの言う通り、目をつぶって正解だった。
俺は根っこ触手の持つ感覚の一つ、根っこ視覚を使い、辺りの状況を見る。
突如風が吹き荒れ、ハムスター達は目に砂が入ったりした事で動けない。
風が吹いた理由、それは偶然、神風が吹いた……という事ではなさそうだ。
クレアが何かを置いた途端に風が吹いた。
彼女が地面に置いたもの、それは大きな紙だ。
そこには、魔法陣が描かれている。
魔法陣の形には見覚えがあった。
この形はマウントコカトリスこと、マウントとりとりの骨格、形に似ている気がする。
「クレア、これって?」
「これはマウントコカトリスが扱う『翼上を流れる空気圧を極端に下げる』魔術を元に作られた『周囲の圧力を下げる事ができる魔法陣』なのだ」
俺の疑問に、クレアは簡潔に述べた。
つまり、この魔法陣近辺の気圧が下がった事で、高温により膨張した空気が、こちらへ吸い寄せられた事で、風が吹いたのだ。
運動会の練習で嗅いだような土の臭いが、鼻腔に突き刺さる。
「ちくしょー! 目に砂が入って進めないぞー!」
ハムスター人族達が愚痴りだす。
俺が赤筋大根になって暴れた事、大量のハムスター人族が走った事で、砂煙が舞っている。
ハムスター人族はその砂煙の餌食となったのだ。
俺達はそんな愚か者達から離れる。
何も、ハムスターを恐れて逃げるのではない。
俺達が恐れているのは、気圧を急に下げた事で、案の定現れてしまった砂嵐だ。
「うわー!とばされるー!」
砂嵐に捕まったハムスター人族達が、空高く舞い上がっていく。
彼らは不規則な方向へ飛ばされていく。
飛ばされたヤツらは、そう簡単にここまで帰って来れないだろう。
そして、ハムスター人族の四天王の側近(?)を名乗っていた美味しそうな名前をした5人も、砂嵐に飲まれていく。
「ぐぬぬぬぬ……! コンビーフ! チャーシュー! サラミ! ケバブ! 手を離すなよ!」
「「「「おう!!」」」」
あの5人は手を握り、意地でも砂嵐に飛ばされぬように踏ん張る。
おそらく砂嵐の風速は、秒速にして10mを越えるほどに強力なものだ。
間違いなく、人間でさえ飛ばされてしまう。
しかし人間より遥かに小柄な体の筈であるハムスター人族の5人は耐える。
『皆は一人のために、一人は皆のために』
その言葉を身をもってこのハムスター達は体現している。生半可な能力ではできない。
各一人が、他の仲間を信用している。
だから飛ばされない。
だから俺は、そんな彼らの勇姿を終わらせる事にする。
君達だけに尺使えないんでね。ごめんね。
続きは二次創作で頑張ってくれ。
俺は根っこ触手を振り回すと、ムチのようにハムスター人族5名を引っ叩く。
「いったーい!」「いてぇ!」「あぁん!?」「ぬぉ〜!」「アウチ!」
なんという事でしょう!
根っこ触手で叩かれたハムスター5名は、力が抜け、砂嵐に飛ばされてしまったのです!!
「ああ!? そんなバカなー!」
「うわー! 目が回るー!」
「お前達、慌てるな! 手を離さなければ大丈夫だ!」
ハムスター人族は、手放された風船のようにどんどん空へ飛んでいく。
これは、もう俺達の勝利だな。
しかしハムスター人族は飛ばされてもなお、諦めなかった。彼らはまだ秘密兵器を隠し持っていたのである。
「こうなれば、最後の手段!大魔術『アトミック・チーズボンバー』をつかうぞ!」
「「「「おお、その手があったか!?」」」」
ベーコン・プラネットが声をあげ、他のハムスター人族も彼の意見に賛同する。
アトミック・チーズボンバー。
直訳すれば、原子チーズ爆弾。
まさに最終兵器にぴったりなものである。
……いや、他人事ではないぞ。
もし、その名の通りならば、本物の原子爆弾、核兵器に及ばなくとも、普通の爆弾とは段違いに強力であろう事は言うまでもない。
下手しなくても町にも、そこの人々にも多大な迷惑と被害がでる。
「出でよ! アトミックチーズボンバー!」
ベーコンプラネットが叫ぶと、大きな円盤の物体が現れる。
その円盤の正体はチーズだ。
チーズは砂嵐に飛ばされる事なく、ゆっくりと落ちてくる。
俺はチーズに向かって飛ぶ。
赤筋大根の跳躍力なら届く距離だ。
それに、根っこ触手もあるため、あの爆弾を掴む事に問題はない。
もっとも、あの爆弾が時限式なのか、落下時の衝撃で爆破するのかわからない。
ハムスター人族達が近場にいる事、爆弾がゆっくりと落ちてくるところを考えると、時限式なのかもしれない。
どっちにしろ、飛んだ俺はチーズを爆破させる事を防がなければならない。
もちろん、爆弾処理など出来ない。
こうなったら、ごり押しという名の、大根式筋肉解決法でいこう!
俺はミェルニルで、落下してくるチーズを叩いた。
叩かれたチーズはグチョリと潰れ、歪な形へと変わり果ててしまった。
あれ? ……おかしいな。
ミェルニルで叩かれたら、外殻であるチーズは蒸発して、中にあると思われるが爆発物が、剥き出しになるはずだ。
しかし、ミェルニルの効果は発動しない。このハンマーが壊れている訳でもない。
「ワッハッハ! バカめ! いくら攻撃しようが、そのチーズボンバーを消す事は出来ないんだぞ!」
ハムスター5名は、砂嵐から抜け出したようだ。
落下しながら彼らは、チーズを破壊できない俺を見て嘲笑っていた。
……このままだと、君達も被害に遭うわけだが?
「ベーコン!? ヤバいぞ!」
「おっ!? どうしたケバブ!」
「このままでは、俺達もアトミックチーズボンバーの爆破に巻き込まれてしまう!」
「「「「なっなんだってー!?」」」」
どうやら、現状がどんなに大変なものか、ハムスターも理解できたらしい。
俺は地上に降り、クレアと共に逃げる事にした。
「あれをどうにかする事は出来ないのか?」
「ええ、無理無理の無理でしてよ!? 斬っても潰してもダメらしいですわ!」
俺は軽度のパニック状態となったせいか、お嬢様口調でクレアに、チーズを処理する事が無理だと伝えると、彼女と共に走りだす。
「ああ! もう少しで爆発してしまうぞ!」
「いそげー、いそげー!」
「爆破まであと、1分もないぞ!?」
ハムスター人族も必死に逃げている。
というか、あと60秒もせずに爆破するのかよ!?
そして、時が来た。
俺とクレアは偶然にも大きな一枚岩を見つけ、その裏側に穴を掘り、そこに隠れる事にした。
そして、あたりが眩く光った。




