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9.さようなら、お母さん
さやかは、淑子の耳元で、優しく言った。
「お母さん、もういいよ。ぼく、後悔してないから。それに、さやかが小さい時から、ずっと、この家に呼んでくれて、いっぱい愛情を注いでもらったんだから」
「さとし、全部思い出したんだね…」
「うん…」
淑子は、今は、女の子のさやかになってしまった、自分の息子を見つめて、また泣き出した。体だけは、元に戻らない。
「美羽さんに頼んで、お金はいくらでも払うから、施設から出て、また一緒に暮らそう」
「わかった。相談してみる」
さやかは淑子の手をそっと握り締めた。
「もうどこにも、いかないでね」
そして、淑子は安心して、部屋を出て行った。
朝ごはんができたので、淑子は2階にいるはずの、さやかに呼びかけた。しかし、返事はない。
「さとし、朝ごはんよ」
淑子が2階のドアを開けると、そこには、さやかの姿はなかった。




