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シンセティック・ワイルドの断層(グリッチ)LUNA‗BOOK TWO  作者: 光闇居士


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終章:夜明けの逃亡者

 森に静寂が戻った。

 燃え上がるドローンの残骸と、朝霧が混ざり合い、皮肉にもそれは美しい光景を作り出していた。

 ルナは湖畔に大の字になって横たわっていた。

 全身が軋むように痛い。任務は失敗。企業への借金は倍増どころか、これからは産業スパイ兼テロリストとして、一生追われる身になるだろう。

「……最悪」

 彼女は泥だらけの顔を拭い、血の味がする口の中に残っていたタバコをペッと吐き出した。

「でも、せいせいした」

 ふと横を見ると、彼女が破壊したはずのチックタックの残骸が転がっていた。

 ルナは痛む体を引きずり、彼のもとへ這っていった。

胸の奥で、小さな歯車が一つだけ、カチッ、カチッとかろう じて動いているのが見えた。

 まだ、間に合うかもしれない。

 ルナは腰の工具ポーチを開いた。中には、かつて彼から教わった「3番のプラスドライバー」も入っている。

「……とりあえず、応急処置だけよ。次は保証しないから」

 彼女は震える手でドライバーを握った。

 その横顔は、険しく、傷だらけで、ススに汚れていたが、かつての少女のような凛とした強さが宿っていた。

 森の入り口の方角から、企業の武装部隊が接近してくるサイレンの音が聞こえ始めていた。

 だが、ルナは焦らなかった。

 彼女の左目からは忌々しいバイザーが外れ、右目には自分自身の視界が戻っている。

 そして彼女の手には、再び「見えないランタン」が握られていた。

 この腐りきった世界で、自分だけの道を照らし、生き抜くための確かな光が。

 ルナは修理中のチックタックの耳元で、小さく、しかし力強く囁いた。

「起きなさい、ポンコツ。さあ、ずらかるわよ。新しい冒険の始まりだ」


(了)


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