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ブロッコリーエンド


 海に面した北の領地。年中雪の降るこの土地に、スノッカーと呼ばれる町がある。

 町の中の住宅街、その一つに家にキャロルはいた。

 暖炉をガンガンにきかせた温かい部屋の中で、ベッドに寝る人物と対面している。

「栄養満点のシチューです。まだ病み上がりなんですから、たっぷり食べて回復に努めてくださいね」

 キャロルが自分で料理したシチューをトレイの上に乗せて渡す。相手はキャロッテ、キャロルの姉だった。ベッドの上に寝ているキャロッテは口をすぼめて言う。

「えー、もう大丈夫だから。ほら、キャロルが帰ってくるまでに、もうバリバリに運動できるぐらいにはなってたからさ。別に安静にしなくても……」

「ダメです。お姉ちゃんはすぐに無茶をするので、安静にしてないとダメなんです。新作のお菓子を作ると言って、三日徹夜した挙句に倒れたのを覚えてないんですか?」

「それ三年前の話でしょー? 大丈夫、大丈夫だって! もうフルパワーって感じだし、寝込んでた時に溜まった欲望パワーを解放しないと、逆に不健康って感じでー」

「ダメです。ダメったらダメです。欲望パワーは暴走する確率が高いのでダメです。少なくともあと一か月は封印しといてください」

「もー、キャロルは心配性なんだから。大丈夫だってー」

 キャロルとキャロッテ、姉妹の戯れ。気安い仲を感じさせるよきひと時。

 ガナッシュを退治した後、キャロルたちはそれぞれの目的を果たした。

 ちっぱい教団はプルンティングを手に入れ、セラリーはブロッコリーの研究レポートをまとめ上げ、キャロルは姉の呪いを解いた。

 旅は終わったのだ。別れは悲しかったが、先に進むため、それぞれが別の道を進んだ。

 ちっぱい教団は次なるちっぱいを求めて、セラリーはブロッコリーの研究成果を学会に発表、キャロルは呪いの解けた姉の安否確認。

 あれから二週間。乗り物に乗ってキャロルが帰って来たのが昨日だ。

 それから家に戻ると、キャロッテが熱心にシャドーボクシング時に場面に出くわし、驚いて呆れた。寝たきりだったから早く力を取り戻して、お菓子作りに励みたいらしい。

 キャロッテはお菓子職人のスイートキチなのでしょうがなくもあり、しょうがないで済ませられたなかったのでキャロルはベッドにぶち込んだ。

 呪いが完治しているか専門家も呼んで、姉の完全復活が確定したのが昨日のことである。

「せっかくだから、可愛い妹にあーんで食べさせてほしいなぁー、なんて。ほら、お姉ちゃん病み上がりだからー」

「はいはい、しょうがないですね。ほら、あーんですよ」

「あれぇ!? いつもなら、いい年こいて何言ってるんですか!? とか言うじゃない。今日は何でなのー!?」

「病み上がりなのは事実ですから。はい、あーん」

「うっ、いつもはやってくれないのに、こんなときだけ……はー、お姉ちゃん、萌えてきたわー」

 スプーンでシチューをすくって、姉の口に放り込むキャロル。パクッて感じではなく、バケツにスコップで水をばしゃっと入れる感じだ。微妙にあーんからかけ離れている。

 それでもキャロッテは満足だ。妹の自家製料理を堪能している。

「ところでお姉ちゃん、一ついいですか」

「うん? なにかなー? お礼のチューでも欲しいのかなー。遠慮はいらないよ、ほら、近くに来て、お姉ちゃんがほっぺにチューしてあげる!」

「いらないです。自分の右手にでもしててください。それでですね、お姉ちゃんに紹介したい人がいるんです。昨日は無駄なショックを与えたくなかったので、別の場所に行って貰ってたんですけど」

「ま、まさか……」

 キャロッテが戦慄して顔を青ざめる。ショック? 紹介されただけでショックを受ける、そんな存在に彼女は心当たりがあった。

「か、彼氏が出来たのー!? だめよキャロル、お姉ちゃん認めませんからね。まだキャロルは十二歳なんだから、色恋沙汰は早すぎます! というか、お姉ちゃんより早く出来るってどういう事!? おかしくない!?」

「何勘違いしてるんですか。違いますよ。そんなんじゃないです。ともかくいいですよね? お姉ちゃんの呪いを解く手伝いをしてくれた命の恩人でもあるので、いきなり殴りかかったりしたらダメですよ」

「しないけど!? なんでお姉ちゃんってば蛮族みたいな扱いなのかな!? それなら、キャロルの方がよっぽど蛮族だよね」

「ええっ!? 何でですか!? 私は蛮族じゃありません!?」

「でも、そうじゃない? あなたここら辺で海氷の女王とか呼ばれてるのよ? ここら一帯の海賊に氷ぶつけて船をいくつも沈めてきたから、そう呼ばれてるのよ? 海賊船見つけたら、すぐに沈めに行く蛮族じゃない? 普通の人は海賊船見かけたら、関わらないようにするんだからね?」

「それは仕方ないですね。善良な市民から略奪する海賊は潰します。海の藻屑にします」

「こわっ! もっと、もっとファンシーになって! お菓子作りとかに興味を持って、恋とかしてキラキラした呼び名で呼ばれて!」 

 思えばキャロルは昔から破天荒な性格だった。それは姉のために霊峰に登ったり、ナーハレスの武具を求めたり、一切変わってない。

 キャロッテは呆れた様な、それでいてその性格に助けらえたことを思いながら、一息つく。

「それじゃあ、呼びますね。扉の向こうに待機して貰ってるので」

「えっ!? もう? 早くない? お姉ちゃん、心の準備が……」

「では入ってきてください。お願いします」

 服装とかパジャマなんだけど!? とキャロッテが言う暇もなく、部屋のドアが開いて中に人が入って来る。

 その人物をみて、キャロッテは思わず呼吸を忘れた。

 ブロッコリーだ。人間の鍛えらえた手足が生えたブロッコリーだ。しかも部屋の扉が狭いせいでがにまたが引っ掛かっている。

 突っかかるので、蟹歩きでブロッコリーが中に入って来た。

「え? ええー? あ、あのあなたは?」

「吾輩は、ロリコンである!」

「えええええええ!! ロリコンなんですかー!? なんですかー!?」

「ちょ、ちょっと、ブロッコリーさん!? なにいきなりトチ狂ってるんですか!? 初対面ですよ!?」

「間違えたのである。吾輩はキャロルのダーリンなのである!」

「は、はぁ!? やっぱり彼氏何ですか!? お姉ちゃん、野菜の彼氏何て認めませんからね!?」

「真に受けないでください! ブロッコリーさんもショックを上乗せする様な冗談はやめてくださいね!?」

「いや、吾輩は本気である! 妹さんを吾輩に下さい! あと、妹さんのパンツを見せてほしいのである!」

「あああああ!? このブロッコリー!? 変態だー! 変態だー! キャロルはやらんぞ! 妹は私が守る!!」

「ほら、お姉ちゃんが錯乱してます! いい加減にしないと、ひっぱたきますよ! いいですか、ラストチャンスです!」

「吾輩は、ブロ……ロリコンである!」

「なんで訂正したぁああああ!? ブロッコリーでいいでしょうが!?」

 

 完!!


ここまで読んでくださってありがとうございました。

少しでも笑ってくれたら幸いです。

面白いと思ったくれたなら、下の評価ボタンを押してもいいですぜ?

多かった続きを書こうと思います。ちっぱい最高!!

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