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波のカナタ  作者: 石川 直生
4/5

小学5年生 晶 功 1

 放課後。小学校の図書室。晶、机の上に筆箱を出す。そこに、ランドセルを背負った功が、やって来る。

「ねぇ 晶。家、帰んないの?」

「学校にギリギリまでいるよ。」

「俺、遊ぶ約束あるから、公園行ってもイイ?」

「あ、約束あんの?どこに、誰と?」

「たむやんと。芝生公園で。」

「フ__ン。じゃ、行ってこいよ。俺、これ、やんなきゃだから。」晶、紙袋から分厚いテキストを出す。

「モキュ?何それ?」

「え?塾の宿題だよ。」功、机のテキストを見る。

「晶、塾なんて行ってないじゃん?」功、晶をポカンと見る。

「そうだよ。これ、バイトだもん。」

「何?バイトって?」

「あのな。うちのジジイ、小遣いもなんもくれねぇだろ?下手したら、給食費も払ってるか、わかんねえぞ?友達と遊ぶにも、ゲーム機もカードもなんも買ってもらえねえし、自転車もないし、肩身狭いじゃん。功のやつ、壊れちゃったし。で、自分でゲーム機買おうと思って、金貯めてんの。けど、小3の時は、学校の宿題で楽ちんだったんだけどさ。まあ、1人1回10円だったんだけど。この、なんか中学受験のテキスト難しくって..。1日1人しか、引き受けらんねえし。100円。けど、わけわかんねえぞ。計算と漢字は、まだいいとして。国語の長文とか、算数の文章題。意味わかんねえんだけど。ちょ、お前もさ。今日は、公園行きゃいいけど、暇なとき手伝ってよ。」功、サッカーボールをもてあそんでいる。

「え?俺、忙しい。前の学校のときも毎日遊び倒してたし。晶、俺の宿題やってくんない?」

「1回100円なー。」晶、学校の自分の宿題を出す。

「通帳持ってる。」晶、椅子から下りて功の傍へ行く。

「え?うそ?お前、スゲー。いくら入ってんの?」晶、功を尊敬の眼差しで見る。功、ランドセルをゴソゴソする。

「今、持ってるよ。出す。」

「え___?」

「ホラ」功、晶にキャラクターの絵柄の通帳を渡す。晶、受け取る。

「うわ。凄い!お前、尊敬する。」晶、通帳を開く。

「え___?千円しか入ってナイじゃん。」晶、功のランドセルのポケットに通帳を仕舞う。

「だって、隣のおばちゃんが、お別れにってくれたんだもん。」

「え__。何。そのおばちゃん!なんで繋がり切っちゃうんだよ?おばちゃんに連絡とって、小遣い貰えばいいのに。」

「そんな厚かましいことできるわけねえじゃん。電話番号の紙くれたけど。ズボンのポッケに入れてたら、洗濯で、ぐしゃぐしゃになっちゃったし。」

「も___!何やってんの___?俺だったら、有効活用すんのに___」晶、大袈裟に嘆いて、席に戻る。

「ランドセル邪魔だな__。晶、持って帰ってくんない?」

「いいよ。学校6時には出ないと、だから、公園に直に行くわ。お前、公園で待っといてよ。一緒に家に帰ろう。」功、自分のランドセルを晶の荷物の近くに置く。

「オッケ。晶もそんなバイトなんてやめて、一緒にサッカーしようよ?」

「サッカーなんかしたって金貰えねえじゃん。俺、金貰えねえんだったら労力使いたくもねえ。」

「モキュ!何それ?晶、ホントに小学生?ジジくさい。」

「ジジイ言うなよ。俺、お前より若いし。お前いくつよ?」晶、鉛筆クルクル回す。

「11歳」

「ホラ、俺10歳だよ。なん月生まれ?」

「6月」

「ホラ。俺、12月だもん。」功、笑って晶を見る。

「ホント、かわいくない小学生だよね?」

「わるかったな!かわいさなんて、なんの役にもたたねえ。」晶、ふざけてノートをパタッと叩く。

「いや、ルックスは、黙ってればカワイイけど?」

「そういやさ。ラブレター貰った。」

「え?うそ?」功、晶のそばに来る。

「ほんとだって。これ、イタズラかな?本物??ホラ、これ。」晶、手提げから、手紙を出す。功、手紙を開いて読み、裏返す。

「う__ん。本物っぽいけど。名前ないね。」

「ったく。こんなもん1円にも、なんねーわ。名前でも書いといてくれりゃ、1回100円で、デートでもしてやんのにな。」

「晶。出だしから問題発言しかしてないよ?」

「え?デートっつったって、2人で歩いて何かご馳走してもらうだけだよ。」

「迫られたらどうする?」功、笑って晶を見る。おもしろがってんな。コイツ。

「え___?ヤだわ。好きでもねえのに。金にもなんねえし?」

「ホントに世知辛い。ってか、そんなにカワイイのに。中身がそれって詐欺レベルじゃね?」

「え?お前、難しい言葉知ってんな?」

「じゃ、行くわ。」功サッカーボールと手提げを持って行こうとする。

「なァ、ちょっと待って。」功、立ち止まる。

「何?」

「今度、試しにデートしてよ?」

「モキュー?ヤだよ___」

「なんで、ヤなんだよ?練習だよ。どうゆう感じだったら、金とってもいいか考えんだよ。良心的だろ? あ。お前からは金とんないから。」

「じゃ、いいよ。」

「いいんかい」晶、笑ってズッコける。

「あ、もう行くわ。」

「おうよ。いってらっしー」

「いってきま!!」功、走り出す。晶、見送って、宿題を始める。


©️ 石川 直生 2019.


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