小学5年生 晶 功 1
放課後。小学校の図書室。晶、机の上に筆箱を出す。そこに、ランドセルを背負った功が、やって来る。
「ねぇ 晶。家、帰んないの?」
「学校にギリギリまでいるよ。」
「俺、遊ぶ約束あるから、公園行ってもイイ?」
「あ、約束あんの?どこに、誰と?」
「たむやんと。芝生公園で。」
「フ__ン。じゃ、行ってこいよ。俺、これ、やんなきゃだから。」晶、紙袋から分厚いテキストを出す。
「モキュ?何それ?」
「え?塾の宿題だよ。」功、机のテキストを見る。
「晶、塾なんて行ってないじゃん?」功、晶をポカンと見る。
「そうだよ。これ、バイトだもん。」
「何?バイトって?」
「あのな。うちのジジイ、小遣いもなんもくれねぇだろ?下手したら、給食費も払ってるか、わかんねえぞ?友達と遊ぶにも、ゲーム機もカードもなんも買ってもらえねえし、自転車もないし、肩身狭いじゃん。功のやつ、壊れちゃったし。で、自分でゲーム機買おうと思って、金貯めてんの。けど、小3の時は、学校の宿題で楽ちんだったんだけどさ。まあ、1人1回10円だったんだけど。この、なんか中学受験のテキスト難しくって..。1日1人しか、引き受けらんねえし。100円。けど、わけわかんねえぞ。計算と漢字は、まだいいとして。国語の長文とか、算数の文章題。意味わかんねえんだけど。ちょ、お前もさ。今日は、公園行きゃいいけど、暇なとき手伝ってよ。」功、サッカーボールをもてあそんでいる。
「え?俺、忙しい。前の学校のときも毎日遊び倒してたし。晶、俺の宿題やってくんない?」
「1回100円なー。」晶、学校の自分の宿題を出す。
「通帳持ってる。」晶、椅子から下りて功の傍へ行く。
「え?うそ?お前、スゲー。いくら入ってんの?」晶、功を尊敬の眼差しで見る。功、ランドセルをゴソゴソする。
「今、持ってるよ。出す。」
「え___?」
「ホラ」功、晶にキャラクターの絵柄の通帳を渡す。晶、受け取る。
「うわ。凄い!お前、尊敬する。」晶、通帳を開く。
「え___?千円しか入ってナイじゃん。」晶、功のランドセルのポケットに通帳を仕舞う。
「だって、隣のおばちゃんが、お別れにってくれたんだもん。」
「え__。何。そのおばちゃん!なんで繋がり切っちゃうんだよ?おばちゃんに連絡とって、小遣い貰えばいいのに。」
「そんな厚かましいことできるわけねえじゃん。電話番号の紙くれたけど。ズボンのポッケに入れてたら、洗濯で、ぐしゃぐしゃになっちゃったし。」
「も___!何やってんの___?俺だったら、有効活用すんのに___」晶、大袈裟に嘆いて、席に戻る。
「ランドセル邪魔だな__。晶、持って帰ってくんない?」
「いいよ。学校6時には出ないと、だから、公園に直に行くわ。お前、公園で待っといてよ。一緒に家に帰ろう。」功、自分のランドセルを晶の荷物の近くに置く。
「オッケ。晶もそんなバイトなんてやめて、一緒にサッカーしようよ?」
「サッカーなんかしたって金貰えねえじゃん。俺、金貰えねえんだったら労力使いたくもねえ。」
「モキュ!何それ?晶、ホントに小学生?ジジくさい。」
「ジジイ言うなよ。俺、お前より若いし。お前いくつよ?」晶、鉛筆クルクル回す。
「11歳」
「ホラ、俺10歳だよ。なん月生まれ?」
「6月」
「ホラ。俺、12月だもん。」功、笑って晶を見る。
「ホント、かわいくない小学生だよね?」
「わるかったな!かわいさなんて、なんの役にもたたねえ。」晶、ふざけてノートをパタッと叩く。
「いや、ルックスは、黙ってればカワイイけど?」
「そういやさ。ラブレター貰った。」
「え?うそ?」功、晶のそばに来る。
「ほんとだって。これ、イタズラかな?本物??ホラ、これ。」晶、手提げから、手紙を出す。功、手紙を開いて読み、裏返す。
「う__ん。本物っぽいけど。名前ないね。」
「ったく。こんなもん1円にも、なんねーわ。名前でも書いといてくれりゃ、1回100円で、デートでもしてやんのにな。」
「晶。出だしから問題発言しかしてないよ?」
「え?デートっつったって、2人で歩いて何かご馳走してもらうだけだよ。」
「迫られたらどうする?」功、笑って晶を見る。おもしろがってんな。コイツ。
「え___?ヤだわ。好きでもねえのに。金にもなんねえし?」
「ホントに世知辛い。ってか、そんなにカワイイのに。中身がそれって詐欺レベルじゃね?」
「え?お前、難しい言葉知ってんな?」
「じゃ、行くわ。」功サッカーボールと手提げを持って行こうとする。
「なァ、ちょっと待って。」功、立ち止まる。
「何?」
「今度、試しにデートしてよ?」
「モキュー?ヤだよ___」
「なんで、ヤなんだよ?練習だよ。どうゆう感じだったら、金とってもいいか考えんだよ。良心的だろ? あ。お前からは金とんないから。」
「じゃ、いいよ。」
「いいんかい」晶、笑ってズッコける。
「あ、もう行くわ。」
「おうよ。いってらっしー」
「いってきま!!」功、走り出す。晶、見送って、宿題を始める。
©️ 石川 直生 2019.




