佐々木功 晶と出会う
佐々木 功。小学4年生。男子。身長141cm。BMI標準。あっさりした顔。4月に、クラス替えしたとき、はじめましてのクラスの子に、友達のなんとかくんに似ていると、よく言われる。サッカークラブ。
両親を、事故で亡くした。今日から、遠い親戚の家で暮らす。1回も会ったことは ない。訳の分からないまま。頷くだけだった。本当は、あれもイヤ。これもイヤ。お母さんだったら、全部イヤだって言えたのに。いつも、ワガママ一杯言って、俺に振り回されてたっけ。ずっと、ずっと泣いていた。
隣の家のおばちゃんの息子さんに、遠い親戚の家まで車で送ってもらう。
古くて小さな奥に細長い家。狭い庭とも言えない通路には、草やわけの分からないツタが、びっしりと生えている。ビニール袋に入ったゴミのようなものが、あちこちに散乱していた。
佐々木功の胸に不安が過ぎる。元隣の家のお兄さんが「忘れ物ない?」と、功に聞いた。
「はい」こんなところイヤだ。家に帰りたい。前の学校に戻りたい。1人にしないで。イヤだ。イヤだ。
「あ、これ、母さんから。親戚の人に渡せってさ。」お兄さんは、功に菓子折を渡した。
「ありがとうございます」
「元気でな」お兄さんは、功の頭に手を置いた。帰らないで。こんなところ、イヤなんだってば。
お兄さんは、自動車に乗ると行ってしまった。功は、ただただずっと、その後ろ姿を見送っていた。
イヤだな。そう思ったが、自分に選択の余地はない。ピンポンと古いドアホンを押した。ドアが、ガチャと開くと、カワイイ少年が出て来た。
え? 自分の想像では、なんか、もっと怖そうなオジさんかと? びっくりして、ポカンとする功。
「待ってたよ。えっとー、俺、河本 晶。小学4年生。んっとー、君は..。」
「..佐々木功。小4」
「あー、一緒かー。仲良くしてな。荷物これで全部?」
「うん」あー、よかった。小学生が居たんだ。一気にホッとする。それに、イイ子みたいだし。親切だ。
晶「あ、これ、俺持つわ。」
功「アリガトー」サッカーボールを見て、晶が言う。
「へえー。サッカーすんの?」
「うん。大好き。」
「へえー。カッコイイな。」
「あ。なんて呼べば?」
「なんでもイイよ。お好きにどうぞ。そっちは?」
「さっさんとか。お母さんは、功くんとか功。」
「フーン。功って呼んでもいい?呼びやすいから。」
「うん。じゃあ、晶って呼ぼっかな?」
「いいよ。それで。ああ、家に入る前に、ちょっとこっち来て。」晶、功を角の空き地まで、引っ張って行く。
「中のジジイに聞かれるとマズイから。」晶、功の腕を放し、功を見る。
「こんなとこ連れてこられて、びびったろ?」
「..うん。なんか庭凄くナイ?」
「ジジイがさ。あ、ここの家の主なんだけど。あ、あいつの前では、おじさんて言えよ?」
「うん」
「ジジイが、なんもしねえで酒ばっか飲んでっから。掃除、洗濯、皿洗い、買い物全部、俺。俺は、1年前に、ここに連れてこられたの。ここのジジイの妹が、俺のお母さんな。俺のお母さん、シングルマザーで死んじゃったからさ。あ、なんでジジイが、俺らのこと引き取ったかっつーと児童手当目的だわ。」
「児童手当って何?」
「なんか国?かな。子供に金出るんだよ。聞いたことない?」
「知らない」
「直で、手渡しで子供にくれりゃいいのによ。ジジイに行くから、俺なんかホントみじめな暮らし。ほら、服ボロいし。見てみ。」晶、靴脱いで靴下の裏を見せる。穴が開いている。
「うわ」
「だろ?」
「靴だって、もうキツいのに、買ってくれるわけもねえし。友達に、お下がりくれって俺が頼んでんだよ?」
「え__?何それ?」
「あ、言っとくけど、お前も今日から俺と同レべだかんな?夕食毎日カップラーメンだから。朝はナシ。学校で給食食っとかねーと、倒れるかもな。」
「え__マジ??俺、不安しかナイ。帰りたい。」功、ほっぺたを両手で挟んで、蛸の口になる。
©️ 石川 直生 2019.




